ビズショカ(ビジネスの書架)

ビジネス書、新書などの感想を書いていきます

『へろへろ 雑誌『よれよれ』と「宅老所よりあい」の人びと』鹿子裕文 楽しもう。もがきながらも

唯一無二の特別養護老人ホームが出来るまで 2015年刊行。単行本版はナナロク社から出ている。 筆者の鹿子裕文(かのこひろふみ)は1965年生まれの編集者、作家。その他の著作に2020年の『ブードゥーラウンジ』、2021年の『はみだしルンルン』がある。 表紙イ…

『秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』 昭和30年代をカラー写真で楽しめる

昭和30年代の光景をカラーで見ることが出来る 今回紹介するのは、昭和30年代の日本の光景を切り取った貴重なカラー写真集。この時代の写真といえば、ほぼモノクロ写真であっただけに、カラー写真の表現力、再現力の凄さを感じさせてくれる一冊だ。 このシリ…

『天井のない監獄 ガザの声を聴け』清田明宏 UNRWA保健局長による2010年代のガザの実情

UNRWAの保健局長が書いたガザの実情 集英社のWebメディア「集英社新書プラス」に2017年7月~2018年9月にかけて連載された「ガザの声を聴け!」をベースに書籍化したもの。 2019年刊行。筆者の清田明宏(せいたあきひろ)は1961年生まれの医師。世界保健機関…

『芝園団地に住んでいます』大島隆 団地住民の半数が外国人になったらどうなるのか?

朝日新聞記者による現地レポート 2019年刊行。筆者の大島隆(おおしまたかし)は1972年生まれ。現役の朝日新聞記者。テレビ東京ニューヨーク支局記者、朝日新聞ワシントン特派員等を経て、現在は英語メディアThe Asahi Shimbun AJWのデスク。アメリカでの滞…

『殴り合う貴族たち』繁田信一 藤原実資「小右記」から読む平安貴公子のご乱行

素行の悪い平安の貴公子たち 筆者の繁田信一(しげたしんいち)は1068年生まれの歴史学者。神奈川大学の日本常民文化研究所で特別研究員をされている方。 単行本版は2005年刊行。この時は副題として「平安朝裏源氏物語」が付されていた。 殴り合う貴族たち: …

『しょぼい起業で生きていく』えらいてんちょう リスクを取らない起業スタイル

えらいてんちょうの一作目 2018年刊行。筆者の「えらいてんちょう」こと矢内東紀(やうちはるき)は1990年生まれ。慶大卒の高学歴者だが、朝起きるのが苦手なばかりに就職活動を諦め、計画も経験もないままなし崩し的に起業。初の実店舗であるリサイクルショ…

『謎の平安前期―桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年』榎村寛之 多様な可能性が存在した平安時代の前半分

平安時代の前期には何があったのか? 2023年刊行。筆者の榎村寛之(えむらひろゆき)は1959年生まれの研究者。三重県立斎宮歴史博物館で学芸員を務めている方。 勤め先からも想像がつくとおり、伊勢斎宮研究の専門家で、関連著作がいくつもある。当ブログで…

『進化する勉強法』竹内龍人 心理学が裏付ける科学的な勉強法

漢字学習から算数、英語、プログラミングまで 2019年刊行。筆者の竹内龍人(たけうちたつと)は1964年生まれの心理学研究家。日本女子大学人間心理学部心理学科の教授。実験心理学を主要な研究分野としている人物である。 サブタイトルには「漢字学習から算…

『「おりる」思想 無駄にしんどい世の中だから』飯田朔 生きていくのが少し楽になる考え方

飯田朔、初の著作集 2024年刊行。Webメディア「集英社新書プラス」に連載されていた記事をまとめたもの。筆者の飯田朔(いいださく)は1989年生まれ。本書が初めての著作となる。 早稲田大学在学中に引きこもりとなり、卒業後は学習塾で七年働き、その後一年…

『壱人両名 江戸日本の知られざる二重身分』尾脇秀和 身分制度の常識を覆す

江戸時代の秩序観を知る一冊 2019年刊行。筆者の尾脇秀和(おわきひでかず)は1983年生まれ。神戸大学経済経営研究所の研究員。佛教大学の非常勤講師。専門は日本近世史。 その他の著作に、2014年の『近世京都近郊の村と百姓 』、2018年の『刀の明治維新: 「…

『江戸の町は骨だらけ』鈴木理生 「骨」から読み解く江戸の歴史

江戸の歴史は「骨」からわかる 2002年刊行。筆者の鈴木理生(すずき まさお)は1926年生まれの歴史研究家。2015年に亡くなられている。『江戸の川・東京の川』『図説 江戸・東京の川と水辺の事典』『江戸はこうして造られた』など、「江戸」について数多くの…

『ガザに地下鉄が走る日』岡真理 「絶望の山」から「希望の石」を切り出す鑿として

パレスチナの歴史を知るために 2018年刊行。筆者の岡真理(おかまり)は1960年生まれの学者。専門は現代アラブ文学、パレスチナ問題、第三世界フェミニズム思想。京都大学名誉教授、早稲田大学文学学術院文化構想学部教授。 東京外大のアラビア語科を卒業後…

『書評の仕事』印南敦史 読者のニーズに応え、的確な要約を書く技術とは?

書評ブログで何を書いていいかわからないあなたへ ブログで主として書評を書かれている皆さま(わたしのことである)。思ったような文章が書けているだろうか。そして狙ったような反応は得られているだろうか。何を書いていいのか分からない。書いても全く読…

『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』八木仁平 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド

自己理解の専門家が教える「やりたいこと」の見つけ方 2020年刊行。筆者の八木仁平(やぎじんぺい)は1993年生まれ。学生時代には人気ブロガーとして知られる。当時のインタビュー記事があったのでリンクしておこう。 ブロガーとしては成功者の部類に入ると…

『平安貴族の仕事と昇進』井上幸治 熾烈な任官争いとブラックな環境

貴族の仕事について知りたい方に 2023年刊行。筆者の井上幸治(いのうえこうじ)は1971年生まれ。佛教大学歴史学部の非常勤講師。京都市歴史資料館館員。その他の著作として2016年の『古代中世の文書管理と官人』がある。 ちなみに歴史文化ライブラリーは、…

『不安のしずめ方40のヒント』加藤諦三 人生や仕事の不安を解消する考えかた

『テレフォン人生相談』のパーソナリティが書いた不安のしずめ方 私事で恐縮だが、コロナ対応によるテレワーク生活がかれこれ一年半になろうとしている。当初は出社しなくてよい気軽さを喜んでいたものだが、これがいざ仕事をしてみるとさまざまな問題が出て…

『機会不平等』斎藤貴男 格差を意図的に広げていこうとする層が存在する

「機会」の不平等を描く 2000年刊行。筆者の斎藤貴男(さいとうたかお)は1958年生まれのジャーナリスト。 機会不平等 作者:斎藤 貴男 文藝春秋 Amazon 文春文庫版は2004年に登場。わたしが読んだのはこちら。文庫化にあたり加筆が施されている。 機会不平等…

『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しか出てこない』三宅香帆 好きなことを自分のコトバで発信しよう!

自分のコトバでつくるオタク文章術 2023年刊行。筆者の三宅香帆(みやけかほ)は1994年生まれの書評家、作家。京都大学文学部、同大大学院修士課程、博士前期課程修了。現在は京都市立芸術大学の非常勤講師も務めている人物。 古典や文章術についての著作を…

『椿井文書(つばいもんじょ)』馬部隆弘 日本最大級の偽文書の正体

偽史が発生するメカニズムを知る 2020年刊行。筆者の馬部隆弘(ばべたかひろ)は1976年生まれの歴史学者。大阪大谷大学の准教授で、戦国期権力論、城郭史、偽文書研究で知られる人物。本書で一気に知名度があがった。やはり中公新書で出てくると影響力が大き…

『中流危機』NHKスペシャル取材班 中流層没落の原因と再生のための処方箋は?

NHKスペシャルを書籍化 2023年刊行。2022年9月に放映された「NHKスペシャル”中流危機”を超えて」をベースに、書籍としてまとめたもの。最近はこの手の、テレビで放映した内容を本にしました!的なものが多くなってきた気がする。 映像はNHKオンデマンドで現…

『カルト資本主義』斎藤貴男 オカルトにハマった日本の大企業

オカルトが支配する日本の企業社会 筆者の斎藤貴男(さいとうたかお)は1958年生まれの、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。 本書はまず、1997年に文藝春秋から単行本として上梓された。その後、2000年に文春文庫化版が刊行されている。 カルト資本主義…

『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング【実践編】』後藤宗明 今すぐはじめられるリスキリングの実践術

「リスキリング」本の第二弾が登場 2023年刊行。一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表理事を務める後藤宗明(ごとうむねあき)二冊目の著作となる。 2002年に上梓され「読者が選ぶビジネス書グランプリ」2023年版の総合部門で第4位、更に部…

『勘定奉行の江戸時代』藤田覚 勘定奉行で学ぶ江戸幕府の財政史

勘定奉行から江戸時代を読み解く 2018年刊行。筆者の藤田覚は1946年生まれ。東京大学の史料編纂所の教授を2010年に定年で退官し、現在は同大の名誉教授。専門は日本近世史。江戸時代に関する著作が20冊ほど刊行されている。 内容はこんな感じ 江戸時代に活躍…

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり 平安の格差社会を生き抜いた紫式部が『源氏物語』に込めた想い

大塚ひかりの「源氏本」が出た! 2023年刊行。筆者の大塚ひかりは1961年生まれの古典エッセイスト。 わたしが初めて大塚作品を読んだのは草思社の『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』から。新潮新書の『女系図でみる驚きの日本史』はこのブログ…

『イスラムと仲よくなれる本』森田ルクレール優子 学校で、職場で、もし隣の席にイスラム教徒がいたら?

小学生でも読めるイスラムの入門書 2023年刊行。筆者の森田ルクレール優子(もりた Leclerl ゆうこ)は1980年生まれ。20年程前にイスラム教に改宗。2年前(本書刊行時点)にSNSで知り合ったフランス人男性と交際ゼロ日で結婚。渡仏。夫と先妻との間に出来た…

『大津絵』クリストフ・マルケ 江戸時代の人々に愛された庶民画の世界

フランス人研究者による「大津絵」ガイドブック 2016年刊行。筆者のクリストフ・マルケ(Christophe Marquet)は1965年生まれ。フランス人で、日本近世・近代美術史と、出版文化史の研究者である。 オリジナルのフランス版は2015年に刊行されている。フラン…

2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

既に2024年の1月も後半に入っている状況で、遅きに失した感が無きにしもあらずだが、恒例の〇〇年に読んで面白かった本企画をお届けしたい。 なお、あくまでも2023年に読んだ本が対象であって、2023年に刊行された本ではないのでその点はご容赦を。 では、今…

『心の傷を癒すということ』安克昌 阪神淡路大震災ではどのような心のケアが行われたのか

阪神大震災で自らも罹災した精神科医 1996年刊行。筆者の安克昌(あんかつまさ)は1960年生まれの精神科医。残念ながら2000年に、肝細胞癌のため、39歳の若さで他界されている。神戸大学医学部精神神経科で助手として勤務していた1995年に阪神淡路大震災に罹…

『50代からの人生戦略』佐藤優 いまある武器をどう生かすか

50代をどうすごすかで人生は決まる! 2020年刊行。筆者の佐藤優(さとうまさる)は1960年生まれ。元外務省勤務で主任分析官。ロシア事情に精通し、鈴木宗男に関する一連の事件で逮捕、起訴。有罪判決を受け退職。その後作家業に転身し、多くのヒット作を生み…

『ただしい暮らし、なんてなかった』大平一枝 時間の経過で考え方も生き方も変わっていい

暮らしを見つめ直す一冊 2021年刊行。筆者の大平一枝(おおだいらかずえ)は長野県出身の作家、ライター。「市井の生活者を独自の目線で描く」エッセイを多数書かれている方。 代表作は朝日新聞デジタルに連載されている「東京の台所」シリーズだろうか。 序…