2022年刊行。筆者の長谷川高(はせがわたかし)は1963年生まれ。リクルートコスモス出身の不動産コンサルタント。住宅購入や、不動産投資についての著作多数。
代表作である『家を買いたくなったら』は2006年刊行。その後、2011年の新版、2019年の令和版と何度も改訂版が出るほどのロングセラー書籍となっている。
一方、聴き手の藤原千尋(ふじわらちひろ)は1967年生まれのライター、編集者。『ちょこボラ!―今すぐはじめられる、お手軽ボランティア』『フェアトレード@Life』『犬を飼いたくなったら』などの著作がある。
内容はこんな感じ
50代だからこそ改めて考えておきたい「家のこと」。そろそろ「老後の住まい」が気になる。50代でもローンは組めるのか?組めるとしたらどのようにすればいいのか?おひとりさま、フリーランスでも家は買えるのか?逆に家を売りたい場合はどうすればいいのか?離れて住んでいる親の家はどうすれば?などなど、家についてのさまざまな疑問に、不動産と経済のプロがQ&A方式でわかりやすく回答していく。
目次
本書の構成は以下の通り
- はじめに
- 第1章 50代、「買う」「売る」前に、考えてみてほしいこと
- 第2章 手堅く家を買うためのお金の話
- 第3章 50代で初めて家を買う人のための家選びのポイント
- 第4章 失敗しない「住み替え」「リフォーム」のためのアドバイス
- 第5章 「実家」という家をどうしたらいい?
- 第6章 「おひとりさま」「自営業」の人はここにご注意
- 第7章 郊外・地方に住むという選択
- 取材を終えて
- あとがき・謝辞
50代の「家」の悩みに寄り添う
『50代、家のことで困ってます』では、長谷川高が先生役、そして藤原千尋が生徒役として、Q&A形式にて「50代のための失敗しない家の売り買いの基本」を解説していく構成となっている。聴き手の藤原千尋自身が50代ということで、この年代特有の生々しい、「家」にまつわる悩みの数々が紹介されていく。
テーマとして登場するのはこのあたり。
- 50代になっても家は買えるのか?
- どうすれば家は売れるのか?
- 老後を見据えた終の棲家はどうあるべきか?
- 住み替え、リフォームのポイントは?
- おひとりさま、フリーランスが気を付けること
- 「実家」はどうすれば?
いずれも50代ならではの「家」の悩みばかりで、当事者としてはなんとも気になるところである。
ブラックスワンに備えよ
本書で最初に提示されるのが「ブラックスワンに備えよ」という教訓だ。ブラックスワンとは読んで字のごとく、黒い白鳥のこと。白鳥といえば白いに決まっているが、ごくまれに黒い白鳥が生まれてくることがある。転じて、起こりえないものが起こる。想定していなかった災害や不幸が、突然襲ってくる可能性を常に考えておこうという意味。
東日本大震災や、昨今のコロナ禍、リーマンショックのような経済危機と、近年は10年に一度の頻度で歴史的な災害や危機が訪れるようになっている。これほどの大きなケースではなくても、急な金利の上昇や、離職・転職の可能性、急な病、不動産価値の暴落などは、十分に起こりうる事態だ。
「家」は多くの人間にとって、人生最大の買い物であろう。それだけに楽観的に「家」の売買に手を出すことは大きなリスクとなる場合がある。
筆者はとにかく返済計画では無理をしないこと。損得と感情を分離して考える。この選択はほんとうに「幸福」をもたらすのか。まず最初によくよく考えてみるべきだと説く。
50代からの家探しはとにかく手堅く
人生100年時代。定年延長の流れもある。まだまだ元気で働けるのでは?と、自分の健康については過信しがちだが、油断は禁物だ。50代を超えてからの健康状態は個人差が非常に大きい。いつ何が起こっても大丈夫なように、住宅ローンを組む場合はとにかく慎重にすべきというのが筆者の考えだ。
どんなに長くても返済期間は20年(それでも個人的には長いと思うなあ)。夫婦ローン、親子ローンは避ける。親の遺産も退職金もあてにしないで返済計画を立てる。ボーナス払いはしない。頭金とは別に、2~3年は生活していけるだけの預貯金を必ずキープしておく。地方移住を考えるなら、いきなり買わずにまずは賃貸で一年住んでから。と、現実的なアドバイスの数々がありがたい。
ただ、50代の「家」の悩みを本書では幅広く取り上げているだけに、売る、買う、実家問題、リフォームと個別の案件を考えていくと、やや物足りなさが残るのは事実。本書はあくまでも「家」の悩みを知るための入り口と捉えて、気になるテーマがあったら、個別に掘り下げて調べていくのが良さそう。筆者の書いているロングセラー本『家を買いたくなったら』を今度は読んでみるつもり。
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