ビズショカ(ビジネスの書架)

ビジネス書、新書などの感想を書いていきます

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』ハンス・ロスリング 世界を正しく認識するために

本ページはプロモーションが含まれています

もはや説明不要の話題の一冊

本書は刊行前から随分と話題になっていて、発売されるやいきなり爆売れ状態に。Amazonでは3週連続でビジネス書ランキングの1位を獲得。2019年を代表する一冊となってしまった。この年、ビジネス書の類で、こんなにあちこちでレビューされた本は無いのではないだろうか。

2021年の時点でついに100万部を突破!現在でも書店では平積みされていることが多く、長く売れるベストセラー書籍となっている。

目次

本書の構成は以下の通り

  • イントロダクション
  • 第1章 分断本能 「世界は分断されている」という思い込み
  • 第2章 ネガティブ本能 「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み
  • 第3章 直線本能 「世界の人口はひたすら増える」という思い込み
  • 第4章 恐怖本能 「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み
  • 第5章 過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み
  • 第6章 パターン化本能 「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み
  • 第7章 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
  • 第8章 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
  • 第9章 犯人捜し本能 「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み
  • 第10章  焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
  • 第11章  ファクトフルネスを実践しよう
  • おわりに

『FACTFULNESS』ってどういう意味?

2019年刊行。翻訳はIT技術者の上杉周作と、翻訳家の関美和が担当している。

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』は著者が提唱している造語で、データや事実に基づいて正しく世界を読み解いていこうという考え方のことを指す。

FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

米国版は2018年刊行。原題は同じく『FACTFULNESS』。

主著者のハンス・ロスリング(Hans Rosling)はスウェーデン人の医師であり研究者。TEDの世界では超有名人。残念ながら2017年に亡くなっており、本書は遺作とも言うべき一冊。彼の息子とその妻が最終的に本書をまとめ上げている。

www.ted.com

 先進国と発展途上国という分け方をやめてみる

「先進国」と「発展途上国」という分け方は、正しい世界の見方を反映していないとして、著者はレベル1~4までの4つの区分で世界を捉えなおしてみることを提唱している。このレベルは一日当たりの所得レベルによる分類である。

レベル1:~2ドル(世界に約10億人)
レベル2:~8ドル(世界に約30億人)
レベル3:~32ドル(世界に約20億人)
レベル4:32ドル以上(世界に約10億人)

『FACTFULNESS』p45より

想定していたよりもレベル1の割合が少ないのではと思わないだろうか?

数百年前までは世界中がレベル1だった。現在の日本はレベル4に該当するが、高度成長期時代の前あたりまではレベル3だった。染みついた固定観念で、世界の過半は未だ貧困に喘いでいるかのような印象があるが、世の中はどんどん日増しによくなっているのだ。本書では豊富な事例を挙げながら、誤った世界認識をいかに修正していくべきかを教えてくれる。

筆者のこうした考え方は世界の知識層に多くの影響を与えていて、ビル・ゲイツなんかも「世界は4つの所得グループで考えるべき」と提唱するようになっている。

www.businessinsider.jp

ちなみに、レベル1~4の生活がどのようなものなのかは、本書の表3(背表紙裏)部分に参考写真が掲載されているが、この画像の出典となったサイトがあるようなのでこちらのリンクを貼っておこう。家、家族、持ち物、街並み、様々な視点でレベル1~4までの国々を比較することができるので、とてもわかりやすい。

www.gapminder.org

チンパンジークイズ、みんな何点だった?

イントロダクションで登場するチンパンジークイズだが、わたしの場合、13問の設問の正答率は15%(2問正解、11問不正解)。チンパンジーの半分以下の正答率である。恥ずかしい。。。

この設問はとてもよくできていて、レベル4の国に住む人間が、レベル1~3と呼ばれる地域の人々を、どのように誤って認識しているかをあぶり出す、リトマス試験紙のような役割を果たしている。

それぞれの設問は次の章で挙げられる、「世界認識を誤らせる10の本能」に関連した内容となっていて、どこをどうして間違えたのか、本書を読みすすめるうちに理解していくことができるのだ。

世界認識を誤らせる10の本能

筆者は人間に備わっている10種類の思い込みが原因であるとしている。

以下、目次より引用してみる。

1.分断本能 「世界は分断されている」という思いこみ
2.ネガティブ本能 「世界はどんどん悪くなっている」という思いこみ
3.直線本能 「世界の人口はひたすら増え続ける」という思いこみ
4.恐怖本能 「危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み
5.過大視本能  「目の前の数字がいちばん重要だ」という思いこみ
6.パターン化本能 「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思いこみ
7.宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思いこみ
8.単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思いこみ
9.犯人探し本能 「誰かを責めれば物事は解決する」という思いこみ
10.焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思いこみ

『FACTFULNESS』目次より

どうしてチンパンジーでも1/3は正答できる設問に(三択なのでランダムに選べは1/3は当たるのである)、レベル4の国家に住む人間は正答することができないのか。その理由を本書では上記の10の視点から読み解いていく。

文章は読みやすく、図表や、具体例も潤沢に提示されているので、思っていたよりも可読性は高い。400頁近い大ボリュームだが、一週間もかからずに読めてしまった。確かにこれは話題になるのも納得の一作である。一過性の話題の本というよりは、末永く読まれていきそうな作品と言える。

話題のビジネス書ならこちらも!