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『ユダヤ人とローマ帝国』『ユダヤ人とドイツ』大澤武男 ユダヤ民族の歴史を知るための二冊

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大澤武男のユダヤ人関連の著作を二作紹介

筆者の大澤武男(おおさわたけお)は1942年生まれ、ドイツ在住の歴史家。ユダヤ人やドイツに関する著作を数多く上梓している。本日はこの大澤武男の著作の中から、ユダヤ人に関して書かれた新書を二冊ご紹介したい。

まず一冊目『ユダヤ人とローマ帝国』は1995年刊行。

ユダヤ人とローマ帝国 (講談社現代新書)

『ユダヤ人とローマ帝国』の内容はこんな感じ

第二次大戦中、ナチス・ドイツの大弾圧により悲劇的な運命をたどったユダヤ民族。この大虐殺の淵源は遙か紀元前に遡ることが出来た。ユダヤ民族のなりたちから独立国家の建国、そしてその崩壊、更にローマ帝国による被支配の歴史を通観。帝国内でのキリスト教の台頭により、次第に追いつめられていくユダヤ人の姿を描く。

目次

本書の構成は以下の通り。

  • 第1章 前史―ユダヤ民族と古代社会
  • 第2章 ローマ帝国への追従と抵抗
  • 第3章 初代教会の発展とユダヤ人
  • 第4章 古代末期ローマ帝国の対ユダヤ人政策
  • 第5章 古代における反ユダヤ思想の形成

キリスト教会がユダヤ民族に対してしたこと

ユダヤ民族への弾圧は今世紀に入ってからのことではなく、中世から近代に至るまで延々と続いてきたことは史実として知ってはいた。しかしキリスト教がユダヤ教を母胎として発生した宗教でありながら、どうしてこれほどまでに両者が対立するようになったのかは、今ひとつピンときていなかった。それだけに本書の存在は有り難かった。初期キリスト教会がユダヤ民族に対して行った、「生かさず」されど「殺さず」の施策の数々は非常に衝撃的。

こじれるのも仕方ない

ユダヤ民族がその王国を滅ぼされたのはなんと紀元前の話だ。国を失い、奴隷にされ各地に逃散しながらも民族的な同一性を保ちつつ、二千年以上も後に遂に自らの王国を取り戻しイスラエルを建国する。こんな数奇な歴史を持つ民族は史上他には存在しないだろう。現代でのイスラエルの存在は紛争の火種として、世界を焦臭くさせているのだが、この民族の歴史を考えると問題の解決はどう考えても容易ではないだろう。本書を読んで痛切にそれを感じた。

二冊目は『ユダヤ人とドイツ』。こちらは1991年刊行。こちらはドイツに焦点を絞ってのユダヤ人史である。

ユダヤ人とドイツ (講談社現代新書)

『ユダヤ人とドイツ』の内容はこんな感じ

アドルフ・ヒトラーとナチス。極めて特異な集団が政権を担っていたとはいえ、600万人ものユダヤ人を殺害したホロコーストはどうして起きたのか。紀元前6世紀のバビロン捕囚に始まる世界各地への離散。中世期からプロイセンによる統一ドイツの成立、ワイマール時代を経て第三帝国時代での破局に至るまでの、ユダヤ人差別と迫害の歴史を概説する。

目次

本書の構成は以下の通り。

  • 第1章 前史―ユダヤ人とは
  • 第2章 ユダヤ人の財と賤性
  • 第3章 後進ドイツとユダヤ人
  • 第4章 ワイマール共和国時代のユダヤ人
  • 第5章 第三帝国時代のユダヤ人

何故ドイツ人はユダヤ人迫害を止められなかったのか

ホロコーストに関する小説や映画、歴史映像を見ていて常々疑問に感じていたのが、どうして事ここに至るまで、一般のドイツ人がこれほどの大虐殺を許したのかという点だった。ユダヤ人であるが故に、職業、居住地を制限され、唯一許された金融業で富をあげれば妬まれ、隔離されているが故に得体が知れず一般民衆からは怖れられるという負の連鎖。ユダヤ人への差別、迫害はナチスドイツに始まった話ではなく、遙か千年以上も昔から連綿と続く根の深いものであることが本書を読むとよく判る。 

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