九龍城の在りし日の姿が!
1997年刊行。収録されている写真と文章は九龍城探検隊によるもの。
九龍城探検隊は建築設計、都市開発等に携わる人々を中心に構成された日本人グループ。監修を、同グループの一員でもある、慶應大学の文学部教授(当時、現在は名誉教授)、可児弘明(かにひろあき)が務めている。
本書のウリともいえる「生活復元パノラマ」のイラストパートは、寺澤一美が担当している。
この書籍から得られること
- 香港にかつて存在した巨大スラムの実情がわかる
- 今は亡き九龍城の姿をビジュアルで楽しめる
内容はこんな感じ
19世紀半ば、アヘン戦争の後に築かれた香港の九龍城塞。イギリスによる香港支配。日本軍による占領期間を経て、その城壁は破壊されてしまったが、戦後その一画は様々な人々が住み着き無法地帯と化していく。2.6ヘクタールの敷地内に、300棟以上のビルが林立し、最盛期には5万人が暮らしていたとされる、混沌の地「九龍城」の最後の姿を捉えた写真集。
目次
本書の構成は以下の通り
- 九龍城へ
- 生活復元パノラマ
- 九龍城探検隊物語
- 九龍城大きさ物語
- 九龍城色物語
- 九龍城生活物語
- 九龍城鳥籠物語
- 九龍城すきま物語
- 九龍城取り壊し物語
- 九龍城グッズ物語
- 九龍城歴史物語
- 九龍城史年表
解体されてしまった九龍城
九龍城(砦)は、かつて香港の九龍城地区に残されていた巨大なスラム街だ。詳しくはWikipedia先生を参照のこと。
九龍城一帯は香港の中国返還に伴い、1993年より解体が始まり住民も強制立ち退きの処分を受けてしまう。本格的な解体の前に無人の九龍城に入り、撮影されたのが本書に掲載されている写真の数々だ。
現在の地図はこんな感じ。跡地は九龍寨城公園として、公園化されている。
混沌を具現化した圧巻の写真集
法的規制なんてものを全く無視して、手当たり次第にビルを建てまくり、それを無理矢理連結し、壊しては造り、上下左右あらゆる方向に無秩序に貪欲に浸食し続けて完成したまさに魔窟と呼ぶに相応しいその姿が圧巻。
一般住居はもとより、工場、ストリップ小屋、もぐりの病院、幼稚園、教会まで、およそ考えつくたいていの施設はこの中に全て揃っていると言っても過言では無い。九龍城の断面図をイラスト化したマップがこれまたよく出来ていて面白い。惜しむらくは、写真がもうちょっと欲しかった。全体で40頁しか無いんだよこの本。