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『アフターデジタル2 UXと自由』藤井保文 人がその時々で自分らしいUXを選べる時代へ

『アフターデジタル』の続編が早くも登場

2020年刊行。昨年刊行され好評を博した『アフターデジタル』の続編である。前作は小原和啓との共著であったが、今回は藤井保文の単著となっている。

前著『アフターデジタル』は相当話題になっただけあって、Amazonを見ていても今回は推薦者の顔ぶれが凄い。経営共創基盤の冨山和彦、丸井グループの青井浩、サントリーの新浪剛史と早々たる顔ぶれである。今回も売れそうだ。

『アフターデジタル』の感想は以前に書いているのでこちらからどうぞ。

内容はこんな感じ

DX(デジタルトランスフォーメーション)と、言葉ばかりが先行している日本社会。しかしそれは本当にこの国の実情にあったものなのだろうか?アフターデジタルの最前線、中国の事情を紐解きながら、誤解されがちなその本質に迫る。キーワードはUX(ユーザーエクスペリエンス)。 コロナ時代の新しい市場のルールと、取るべき戦略を解き明かした一冊。

今回のキーワードはUX

前著『アフターデジタル』ではIT先進国中国の具体例を豊富に挙げながら、日本企業はどのような視点転換が必要なのかを説く内容だった。今回は前著の内容からアップデートされた部分を紹介しつつ、「アフターデジタル」の本質の部分に迫っていく内容となっている。

本書で特に強調されているのがUX(ユーザーエクスペリエンス/user experience)の大切さである。UXは日本語で言うなら、「ユーザー経験」「ユーザー体験」といったところだろうか。

以下、簡単に各章についてコメントしていきたい。

前著のおさらいと最新事例の紹介

第一章は「アフターデジタルを凝縮し、最新状況にアップデートする」ための章である。前著『アフターデジタル』は2019年刊行と、僅か一年前の著作だが、秒進分歩ともいわれるITの世界では、それでもずいぶんと新しいことが起こっている。一年間での変化と、最新事例を紹介しつつ、「アフターデジタル」とは何なのか。本書から読み始める読者にもわかるように説明がなされている。

オンラインがオフラインに浸透し、もともとオフライン行動だった生活が次々とオンラインデータ化し、かつ個人のIDにひも付けられ、膨大かつ高頻度に生まれる行動データが利活用可能になるということ。

『アフターデジタル2』p18より

これまでのユーザデータの活用は、性別や年齢、居住地な年収など属性レベルでの活用が多かった。しかし「アフターデジタル」の世界ではより細密な行動データを活用することで、ユーザにより最適なコンテンツを最適なタイミングで提供できるのでは?と筆者は説く。単なる商品販売から、体験提供型ビジネスへの転換を改めて主張している。

アフターデジタルの世界でいかに生き残るか

第二章は「新しい産業構造での生き残り方、勝ち方を事例から学ぶ」章である。いまや、日本を遥かに上回るIT大国となってしまった中国の事例が多数紹介される。アリババ、テンセントの二大巨人。中国版テスラとも呼ばれるNIO(ニーオ)。電動バイクのNiu(小牛)等が紹介されている。

モノを売ってそれでおしまいの商売は終焉を迎える。これからは「売らないメーカー」に価値が出てくる。モノを売った後にアフターサービスを継続して提供することで、ユーザーとの接点を増やし、ライフタイムバリューを最大化していくことが肝要であるとしている。

日本のアフターデジタルはどうあるべきか

第三章は「自らの視点を補正する」章である。凄まじい勢いで発展した中国のIT化だが、単純にそれを模倣しようとしても日本ではうまくいかない。その理由として著者は以下を挙げている。

  • 中国は共産党主導で一気に変われる専制国家
  • 中国はブラックリスト方式(やってはいけないことだけ決めてあとは問題がおきるまで自由)。一方で日本はホワイトリスト方式(やっていいことだけを決めるので制約が多い)
  • 中国は人口の規模が違う(14億人!)
  • 中国は低収入で安価に働いてくれる労働力がある
  • 中国は大都市部だけでも小国家並みの経済力がある
  • 中国では外食文化が発達している

とかくデータさえ集めれば金になると日本企業は思いがちだが、データは意外に金にならない。データを持つことがリスクになる場合すらある。

そこで、UX(ユーザ体験)の大切さを改めて筆者は問う。アフターデジタルの本質は、顧客提供価値で勝負することである。良い体験を提供し続けることで、何度も使ってもらえるサービスを目指す。時間軸を持ったバリュージャーニー型ビジネスこそが、アフターデジタルの時代に目指すべきところなのである。

精神とケイパビリティ

第四章は「アフターデジタル社会の在り方を考える」章である。本書の肝とも言えるパートなので、ここはしっかりと読み込んでおきたいところだ。

まず最初に問われるのが「精神」の部分である。

個人の行動データを企業が貯め込んでいくことは、一つ間違えればプライバシーの侵害にもなりかねない。それだけに、これからの企業には高い倫理性が求められる。ユーザに不義理をしないこと。社会貢献で還元すること。企業と、その構成員の善性が、今まで以上に問われてくるわけである。

 

その上で、日本企業が目指すべきであるとしているのが「多用な自由が調和するUXとテクノロジーによるアップデート社会」と著者は云う。

企業が体験を提供するのはもちろん大切だが、あくまでも重んじられるべきはユーザの自由意志である。ユーザがそれぞれの状況に応じて、最適な体験を選択出来ることに意義がある。

故に、ユーザから取得した行動データは、単に利益に直結させるのではなく、まずはユーザ体験(UX)の向上に務め、信頼関係を構築し何度も使ってもらえるようにする。それが最終的なビジネスの成果にもつながっていくのである。

そしてももう一つのキーワードは「ケイパビリティ」である。

ケイパビリティ(capability)は直訳すれば、才能、能力である。

本書では、ケイパビリティとはバリュージャーニーを作り、運用する力(UX企画力)としている。ユーザの困っている点、不快に感じている点、不便だなと思っている点を解消し幸せな状態にする。それが「コア体験」となり、良いユーザ体験(UX)に繋がっていく。

本項では、いかにして「コア体験」を創出すべきか、ユーザの意向をどう汲み取っていくのかについて、筆者なりの勝ち筋が示されており、ここは大いに参考にすべき部分かと思われる。

日本での具体例

最終章である第五章は「日本企業の取り組みから学ぶ」章である。ここでは日本で既に導入されている先行事例が示される。

流通系の事例としては、Amazonの置き配や、ヤマト運輸のフルフィルメントサービス。そして規模はかなり小さくなるが、東京都内で店舗を拡大している「クリスプ・サラダワークス」の事例が紹介されている。これ美味そう!(でも近くに無い……。)

そして接点系の事例としては、メルカリによるドコモとの協業形態である「メルカリ教室」。丸井グループが進めている「保管し合うエコシステム」が紹介されている。

そして最後の項では、まだまだ浸透していない日本企業のアフターデジタル化をいかに進めていけばよいのか。その具体的なステップ例が提示されている。ここは、まあ、書いてみるのはカンタンだけど、実際の運用は難しそう。

デジタル時代の教養として読んでおきたい!

以上、非常に雑ではあるが、『アフターデジタル2 UXと自由』の内容をご紹介してきた。

どんな企業に所属しているのか。どんな部署に所属しているのかによって、本書の内容を具体的に生かせるかどうかは変わってくるだろう。ただ、コロナ禍の中で、人と人との接点はよりデジタルに寄っていく。アフターデジタル化が更に加速していくことは間違いないだろう。全てがオンライン化していくアフターデジタルの時代を知る上で、本書は読んでおいて損のない一冊である。

前著『アフターデジタル』の感想はこちらからどうぞ

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