行動データ解析の第一人者が教えてくれる「気持ち悪さ」の正体
2016年刊行。筆者の小川卓(おがわたく)はマイクロソフト、ウェブマネー、リクルート、サイバーエージェント、アマゾンと有名ネット企業各社を渡り歩いたウェブアナリスト。SEOやウェブ分析関連の著作も多数。
アクセス解析ツール「Googleアナリティクス」のハウトゥ本も多数出していて、この世界ではちょっとした有名人だろう。わたしがいつもお世話になっているのはこちらの一冊である。
本書では、筆者の豊富な実体験を元に、ネット上での個人行動を分析することでどのようなことが実現されているかをわかりやすく説明してくれている。
おススメ度、この本でこんなことがわかります
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
- 一度見た広告が何度も表示されるのは何故なのか
- 自分の住んでいる地域の不動産広告が表示されるのは何故なのか
- ネットで買い物をすると、すぐに類似品の広告が表示されるのは何故なのか
内容はこんな感じ
一度見ただけなのに、サイトを横断してどこまでついてくるGoogle広告、あまりに的確に利用者の嗜好のツボを突いてくるAmazonのおススメ商品リスト、見る人の属性に絶妙なまでにピッタリな広告を出してくるFacebook。これらの、ネットで感じる「ちょっと気持ち悪い」はどのような技術で実現されているのか?。最新の行動データ分析の実情を一般人向けにわかりやすく言葉で解説していく。
目次
本書の構成は以下の通り。
- 序 章 行動データ解析の進化は我々に何をもたらすのか?
- 第1章 大企業をも動かす「行動データ」ってなに?
- 第2章 行動データはどんな形で活かされているのか?
- 第3章 ネット広告がどこまでもついてくる理由
- 第4章 アプリやソーシャルゲームほどデータを取られているものはない
- 第5章 行動データを扱う人たちの仕事
- 第6章 行動データが変える“未来の生活”
便利さと引き替えのリスク
自分にぴったりの情報が提示されることは、 「ちょっと気持ち悪い」反面、もちろん便利な側面も多い。ただこうした行動データは悪用されるリスクが常に付きまとう。特に最近は、GoogleやFacebookでの情報漏洩が話題になったばかりだ。
個人のネット利用履歴が巨大企業に蓄積されていく結果として、商用利用だけならまだしも(それでも十分嫌だけど)、解析データの政治利用みたいなことも起きてくるわけで、情報をどこまで開示しているのか、どこまで利用されるのかは、今以上に明確に開示されて、コントロールが容易に出来るようにするべきだろう。
現状は、各企業ごとにデータの取得ポリシーが違い、その告知方法も、管理方法、ユーザがどこまで関与できるかもバラバラなのはなんとからならないものかと思う。
インターネットも人間が作り出した道具である以上、利便性の裏に、危険が潜むのはある程度しかたのないところだろう。それだけに、しっかりとその二律背反性をわきまえて使いたいところ。
ちなみに、行動データが政治利用される危険性については、先日紹介した福田直子『デジタル・ポピュリズム』が判りやすく書いてくれているので、併せて読んでみると良いかなと。