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『ブックオフと出版業界』小田光雄 20年前に書かれたブックオフ批判本

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1990年代のブックオフ躍進を分析

2000年刊行。筆者の小田光雄(おだみつお)は1951年生まれ。評論、翻訳で著作が多数ある。特に出版流通、古書のジャンルについては豊富な知見を有している人物のようである。

ブックオフと出版業界―ブックオフ・ビジネスの実像

2019年には『古本屋散策』にて、Bunkamura主催する文学賞「ドゥマゴ文学賞」を受賞している。

古本屋散策

古本屋散策

  • 作者:小田光雄
  • 発売日: 2019/05/30
  • メディア: 単行本
 

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

1990年代ブックオフがどうして成功したのか知りたい方、ブックオフのビジネススキームについて知りたい方、ブックオフが書店業界にもたらした影響について知りたい方、書店の世界について知見を得たい方におススメ!

内容はこんな感じ

近代の出版流通システムの隙間の中で驚くべき急成長を遂げたブックオフ。僅か10年で総店舗数は500に迫る勢いに。街の書店は続々とつぶれ、出版社が赤字に苦しみ、取り次ぎは返品に悲鳴をあげる。不況下の90年代。ブックオフな何故ここまで成長することが出来たのか。その行き着く先は何処にあるのか。

出版流通の仕組みと崩壊の過程

前々から読みたいと思っていた本だったので、地元の書店で見かけた時に速攻購入した次第(当時)。

第一章では近代の出版流通システムがいかにして崩壊に至ったかを概説。各出版社の売り上げ推移、大規模郊外店の新店ラッシュとそれに伴う街の中小書店の廃業ペースの加速化、返品率の変化、等々を実際に統計を提示して説明。その深刻なまでの崩壊振りをまざまざと思い知らされる。

ブックオフ隆盛の要因は?

続いて二章以降ではいよいよブックオフの実体にメスが入る。売上高伸び率、経常利益、店舗数、売り場面積、全てにおいて新刊書店をブックオフが圧倒している。そして大手出版社や取り次ぎのほとんどが収益でブックオフに劣り、古本専門店に至ってはそもそも比較にもなっていない。文字通りの一人勝ち状態が現出している事実にはとにかく驚かされる。本書では、ブックオフが右肩上がりの成長を続けてきた要因を読み解きつつ、今後の展望について述べていく。

ブックオフへの執拗な悪意を感じる

ブックオフが近代出版業界の制度疲労の中から生まれてきた鬼子であることはよくわかった。この内容をより客観的な視点で余計な事を書かないまま終わってくれればきっとこの本はかなりわたしに取って好印象を残したはずだ。が、全編を通じて溢れ出る、ブックオフに対する筆者の常軌を逸した敵愾心には、読んでいてかなり辟易させられた。経営者に対する言いがかりに近い個人批判にまで筆が進むに及んで、この筆者ひょっとしてトンデモ系なのか?という不安が脳裏をよぎる。これは余計なお世話だろう。

刊行から二十年を過ぎて

本書の刊行当時は批判の対象であったブックオフも、黒船Amazonの来襲、出版不況での新刊書店の減少、メルカリなどの個人間売買の台頭、電子書籍の普及と、その後は苦境に陥った。

ただこちらの記事を見ている限り、古本主体の店舗展開を諦め、中古品全般を扱うことで営業収支的には復活基調にあるようだ。

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