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『進化する勉強法』竹内龍人 心理学が裏付ける科学的な勉強法

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漢字学習から算数、英語、プログラミングまで

2019年刊行。筆者の竹内龍人(たけうちたつと)は1964年生まれの心理学研究家。日本女子大学人間心理学部心理学科の教授。実験心理学を主要な研究分野としている人物である。

進化する勉強法: 漢字学習から算数、英語、プログラミングまで

サブタイトルには「漢字学習から算数、英語、プログラミングまで」とあるが、内容的には大人でも全く問題なく当てはまる内容となっているので、勉強法に悩まれているビジネスパーソンの方にもおススメである。

なお本書は2014年に刊行された『実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!』をベースとして、構成を含め大幅にリライトしたものとなっている。

内容はこんな感じ

復習はすぐにはしなし。不安は書き出すと楽になる。イメージすることで理解力が上がる。心理学者である著者が、実験による裏付けを提示しながら、これからの時代を生き抜く勉強法の数々を紹介していく。才能や、経済力に囚われない、普遍性のある「だれでも」実践できる勉強法。科学的な根拠にもとづくベストな勉強法を示す。

では、以下、簡単に本書の内容をご紹介していきたい。

勉強法の基本 脳の特性を生かすアイディア

第一章は「勉強法の基本」である。筆者のベースとなる勉強についての考え方が示されている。

IQや性格は成長と共に変化する。「一万時間の法則(ひとつの技術を身に付けるには一万時間の学習が必要とされる説)」も人によって違う。一流になるために必要な勉強時間は人それぞれである。マルチタスクは集中力が落ちるので避けた方が賢明。報酬による動機付けはいずれ効果が出なくなる。自分自身の好奇心や向上心をもととした、内発的動機付けが重要である。

筆者は、本書の冒頭で、我々が持っている勉強についての固定観念を壊していく。

実践的な勉強法 テクニック編

第二章からはおまちかねの具体論である。ポイントは二つ。まず大切なのがこちら。

  • 学びの切り札(その1)”分散効果”

勉強はやみくもにしすぎてもダメで、すぐに復習するのも実はよくない。「集中学習」は長期記憶に繋がらず、いずれは忘れてしまうのだという。

分散し、繰り返すことで強固に記憶される。均等な間隔で復習を継続した方が効率的。ただし、理解できていない項目については、その段階でしっかり学習して理解できるところまで集中学習すべきと筆者は説く。

  • 学びの切り札(その2)"テスト効果"

教科書や参考書を読むだけでは記憶に残らない。覚えることと、思い出すことは脳にとって別のことなのである。テストを利用して、思い出す努力をする復習法を取り入れることで、しっかり知識が定着していく。

テストと考えると身構えてしまいそうになるが、テスト効果は「心の中で思い出す」だけでも大丈夫なのだそうだ。設問を見て、頭の中で答えを出すだけでもオッケー。要は「思い出す」訓練が重要となってくる。

実践的な勉強法 メンタル編

第三章では、学習者のさまざまな心理的な問題についてアドバイスがなされている。いくつか気になったポイントを挙げておこう。

  • プレッシャーに弱いのはなぜ?

プレッシャーに弱いのはなぜなのか。その回答として、筆者は「プレッシャーでワーキングメモリが低下する」からだとしている。

しかし、不安やプレッシャーは、書き留めておくことで客観視ができる。自身の中にある課題を事前に書き出して、アウトプットしておくことで不安や緊張が弱まり、試験当日のワーキングメモリを有効に活用できるのだ。

不安の具象化は、書き留めるだけではなく、自分の気持ちや考えを他人話すだけでも効果大としている。なお、この際、話相手となった側は決してネガティブな反応を返さないことが重要である。

学習効率と実証性

本書の特徴として、筆者は以下の二点を挙げている。

  • 学習における効率のよさを追求
  • 実験的に実証されたことがらのみを記載している

締め切りの無い生涯学習のようなものであればともかく、受験勉強や、社会人になってからの勉強は常に時間との戦いである。少しでも時間は節約したいし、効率よく学びたい筈である。その点で、本書の内容は大いに活用できるのではないかと考える。

また、本書の最大のポイントは、心理実験によって実証された勉強法のみが掲載されている点である。

とかく、学習法本は個人の体験に根差した内容が多く。書いている本人はそれで成功したのかもしれないが、必ずしも万人向けの内容とは言えない場合も多く含まれている。その点、本書は心理実験を経たうえで、実際に効果があった勉強法が紹介されている。つまり誰にでも使える可能性が高い、普遍性のある手法が厳選されて登場するのである。

一見すると「本当に?」とツッコミを入れたくなってしまう方法も、時として登場するのだが、実験結果を伴うものだと考えると納得感が出てくる。

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