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『藩と日本人 現代に生きる“お国柄”』武光誠 県民性のルーツは江戸時代の藩に?

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江戸時代の藩が"お国柄"をつくった

オリジナルのPHP新書版1999年に刊行されている。筆者の武光誠(たけみつまこと)は明治学院大の教授。日本古代史、日本思想史が専攻。

しばらく入手困難な状態が続いていたが、その後、2015年に河出文庫版が登場している。現在、手に入りやすいのはこちらだろう。復刊したのはちょっとびっくりしたけど、日本人は県民性とか、こういう話好きそうだもんね。

藩と日本人: 現代に生きる〈お国柄〉 (河出文庫)

この本で得られること

  • 江戸時代の「藩」の存在が日本人にどんな影響を与えているかがわかる
  • 地域による「お国柄」がいかにして生まれたのかがわかる

内容はこんな感じ

均質化が進む日本社会の中でも、未だその地域ならではのお国柄は残っている。特定の地域にだけ見られる特異な慣習、気質、ことば。そのルーツはどこにあるのか。戦国時代を経て、織豊政権~江戸期に成立した藩にスポットを当て、現在にまで残るお国柄はいかなる歴史的背景を受けて成立したのかを紹介していく。

目次

本書の構成は以下の通り

  • 第1章 お国柄と江戸時代の藩
  • 第2章 織豊政権から藩の成立へ
  • 第3章 地縁にもとづく藩、もとづかない藩
  • 第4章 最大の藩、加賀一〇〇万石
  • 第5章 岡山藩の藩政
  • 第6章 庄内藩主・酒井家の指導力
  • 第7章 古さと新しさを兼ね備えた薩摩藩
  • 第8章 北の辺境、津軽藩と松前藩
  • 第9章 廃藩置県がもたらしたもの

大藩はお国柄が明確化されやすい?

島津氏が治めた薩摩や、毛利氏の長州、前田氏の加賀、伊達氏の仙台等々、お国柄が色濃く残るのは、やはり同一大名が広大な領土を長期間支配し続けた地域に多いように思える。秋田、熊本、高知あたりなんかも同様の印象を受ける。国替えによる領国移動がなかった、大大名の藩は積み重ねてきた歴史の重みが違う。 

早くから集権化が進み土豪の力が弱かった畿内地方、江戸期に至っても国人(地域豪族)たちの力が強かった薩摩や東北地方。一口に藩といっても、その成立はさまざまで、鉢植えのように支配大名が変わった地域と、一貫して同じ一族が支配した地域とではお国柄は違って当たり前なのだろう。

その地域に住んでいないとこうしたローカルな歴史は知る機会が少ないので、どうせならもう少したくさんの地域についても触れて欲しかった。誌面スペース的に限界があったのだろうけど、この点は少々残念。個人的には会津編もやって欲しかったな。

ちなみにわたしは神奈川県出身だが、県民性の希薄さとしては全国屈指の都道府県と思われる。神奈川県民に出身地聞くと、横浜とか、川崎とか、鎌倉みたいな感じで、市町村名で返されることが大多数で、「神奈川!」って答える人ほとんどいないんだよね。

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