「働かないおじさん」はいつごろから登場したのか
近年、目にすることが多くなったこの言葉だが、いつごろから言われ始めたのか、軽くググってみたところ、比較的古い記事では東洋経済のこちらが発見された。人事コンサルタント楠木新(くすのきあらた)による 2013年の記事。
楠木新は2014年に『働かないオジサンの給料はなぜ高いのか: 人事評価の真実』を上梓している。「働かないおじさん」が書籍のタイトル名に用いられたのはこれが最初かな?
2014年の週刊ダイヤモンドでは『オジサン世代に増殖中!職場の「お荷物」社員』特集が組まれている。
その後、毎年コンスタントに「働かないおじさん」を扱った記事が定期的に書かれるようになっていくが、検索ボリューム的には控え目。
働かないおじさんがウヨウヨ?「限界集落職場」は急増するか | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン
「働かないオジサン」いるいる!典型7タイプの生態と攻略法 | 週刊ダイヤモンド特集セレクション | ダイヤモンド・オンライン
「働かないおじさん」だって、心底悩んでいる | ワークスタイル | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
「働かないおじさん」は若者よりも承認欲求が強い、これだけの理由(横山信弘) - 個人 - Yahoo!ニュース
「働かないおじさん」はなぜ働かないか | PRESIDENT WOMAN Online(プレジデント ウーマン オンライン) | “女性リーダーをつくる”
検索ボリュームが一気に増えるのは2019年あたりから。2020年以降は頻繁に目するようになってきた感がある。
2021年には白河桃子(しらかわとうこ)の『働かないおじさんが御社をダメにする ミドル人材活躍のための処方箋』が登場。さすがはトレンドに敏感な白河桃子。こういうパワーワードは見逃さないな。
「働かないおじさん問題」のトリセツ
というところで、本日ご紹介するのは難波猛(なんばたけし)による『「働かないおじさん問題」のトリセツ』である。本書は2021年刊行。筆者は現役の人事コンサルタント。
この書籍から得られること
- 「働かないおじさん」問題がどうして生まれたのかがわかる
- 「働かないおじさん」が変わっていくためのヒントを学べる
- 「働かないおじさん」を抱える人事、上司、同僚が何をすればいいのかがわかる
内容はこんな感じ
昨今増え続けている「働かないおじさん」たち。彼らはどうして働かなくなってしまうのか。彼らはどうすれば変わることが出来るのか。「働かないおじさん」当人だけの問題ではない。上司と人事もまた変わる必要がある。様々な業界で約2000人の中高年キャリア開発を手がけた人事コンサルタントが説く、「働かないおじさん」問題の処方箋。
目次
本書の構成は以下の通り。
- はじめに
- 第1章 「働かないおじさん」問題とは何か
- 第2章 問題解決を遅らせている「三すくみ」
- 第3章 「働かないおじさん」を生む3つのズレ(人事向けトリセツ)
- 第4章 「働かないおじさん」戦力化の5ステップ(上司向けトリセツ)
- 第5章 「働かないおじさん」が変化する4ステージ(本人向けトリセツ)
- 第6章 もしも「働かないおじさん」と同じ部署になったら(同僚向けトリセツ)
- 第7章 人生100年時代、活き活きと働くキャリア戦略
- 特別対談 ミドルシニアが輝くために
「働かないおじさん」対策として、本人だけでなく、上司や人事サイド、さらには同僚の立場からも、なにができるのかを多角的に解説している。
「働かないおじさん」になっている気がする
本書では「働かないおじさん」をこう定義している。
企業側の期待に十分に応えられていない、または応えられない一部のミドルシニア社員に対して、企業の経営者・人事・上司たちの問題意識が高まっていることが見て取れます。こうしたギャップが生じているミドルシニアを、ここではひとまず「働かないおじさん」と呼ぶことにします。
『「働かないおじさん問題」のトリセツ』第1章より
「働かないおじさん」という言葉を目にするだけで胸が痛くなるわたくし。「働かないおじさん」問題は目の前の喫緊の課題である。会社員生活も後半に入り、ポスト的に現在よりも上位のレイヤーに進める可能性がほぼ皆無と思われる人間にとって、モチベーションを保ちつつ、日々の業務で成果を上げ続けることは、けっこうしんどいことである。
どうしても「この程度いいか」と勝手に自分の中で線を引いてしまうし、自分から進んで何かをしようという意識も衰えてくる。もちろん定時を過ぎたら一分でも早く帰りたいタイプである。
そんな「働かないおじさん」に対して、本書は二つのリスクを提示している。
- 「キャリア」の問題
40~50代で周囲の期待に応えられない状態になってしまうと、まだまだ長く続く職業人生をコントロールできなくなるリスクがある。
- 「ライフ」の問題
会社の期待に応えられない状態が長期化することで、厳しい処遇を受ける可能性がある。場合によっては解雇のリスクすらある。
キャリア論を説くビジネス書は、危機感を持たせてナンボ、煽ってナンボとはいえ、こう真正面からリスクを提示されると焦ってしまう。
「働かないおじさん」はどうすればいいのか
本書の扉部分にはこうある。
この本には「働かないおじさん」を強制的に変化させる方法は載っていません。
残念ながら即効性のあるお手軽な対策はないのだ(がっかり)。
それでも「自らの意思で」「自らの人生を充実したものにする」ために、本書では以下の二点が重要であると説いている。
- 変化し続ける力
- 学び続ける力
人生100年時代と言われ、定年延長などの動きで働く期間は長期化している。そして、世の中は変わり続ける。現代のビジネスパーソンは一つのスキルだけで、キャリアを終えることはできない。自分のスキルはいずれ陳腐化する、あるいはすでに陳腐化していると考えて、備えていくことが大事なのだと思う。言われたことだけをやっている受け身の姿勢では、自身の能力は衰える一方なのだ。
そのために、もう一つ大事なことが、
- 「ありたい姿」を考える
ことであると、本書では説かれている。
この「ありたい姿」を思い描くことが、個人的には本当に難しいと感じている。変化したい、学びたいと考えても、「ありたい姿」が自分の中で描けていないと、どうしても軸がブレてしまう。自分はこれからどうしたいのか。何が出来るのか。まずはこの点を考え直すところから、「働かないおじさん」対策の第一歩は始まるのではないだろうか。
って、かれこれ一年以上考えて、放送大学の学生になったりもしたのだけど、結論は出ないんだよね。