定年後のキャリアが気になり始めたあなたへ
2017年刊行。筆者の木村勝(きむらまさる)は1961年生まれ。新卒後、日産自動車に入り、関係各社へ出向。主として人事畑でキャリアを積まれ、その後独立起業し、現在はシニアキャリアのアドバイザーとして活躍されている人物。
2019年には本書の続編とも言える『知らないと後悔する定年後の働き方』を上梓。こちらも実はすでに既読なので、後日感想をアップする予定。
内容はこんな感じ
90年は生きるとされている現代人。定年後の人生もまだまだ長い。年金と貯金だけで定年後の人生、やっていけますか?あなたのキャリアはお金に換えることが出来る。55歳になったら始めたい、備えておきたい定年後の働き方。今の会社に残るのか、出向に出されるのか、それとも転職?はたまた独立起業も?人事のプロが教えてくれる、「選択」と「準備」のポイントとは??
目次
本書の構成は以下の通り。
- プロローグ
- 第1章 人生90年時代、どうキャリアを考えるのか
- 第2章 人事のプロがリアルに教える4つのキャリア選択肢
- 第3章 定年前に知っておきたいキャリアチェンジの基礎知識
- 第4章 人生90年時代の実践的キャリアチェンジ術
- エピローグ
以下、ポイントを簡単にご紹介していく。
シニアキャリアの選択肢は四つ
まずは、シニアキャリア(55歳~)の選択肢として、筆者は以下の四つを挙げている。
- 今の会社に勤め続ける
定年後も、高年齢者雇用安定法による「1年ごとに契約更新を行う非正規の有期契約社員」として現在の会社に残るパターン。60歳で定年になり、その後65歳までこのパターンになるケースがいちばん多そう。収入は激減するし、当然昇給も無い。若手がやりたがらない、面倒な仕事を押しつけられがち。福利厚生や、保険、休暇制度がどうなるかは契約を結ぶ前にしっかり確認したいところ。
- 経験を活かして転職する
とはいうものの、シニア世代の転職はあまりいい話を聞かない。そもそも世の中にニーズが無い。よほど実力のある方以外はお勧めできない。それでもチャレンジするなら、前提として家族の理解は得ておく必要がある。
- 出向して、もう一花咲かせる
これは、そもそも出向先が無ければ話が始まらないので、相応の大企業に勤めていないと、そもそも選択肢に挙がってこないかも。給与レベルは出向前のものがベースになるので、意外に給料は下がらない。
- 思い切って独立する
どうせ給料が下がるなら、独立するのもそれほどリスクは大きくない。と、筆者は説いている。自分の能力の棚卸を行い、伸ばすところは伸ばす。あらかじめ人脈を作っておくなど、周到な準備をしておかないと難しそうな印象。
55歳になったら準備を始めよう
上記の四つの選択肢で、どれを選ぶにしても55歳になったら準備を始めよう。というのが本書の趣旨。シニアのキャリアは優秀か、そうでないか。ではなく、どれだけ事前に準備をしたかで決まる。
筆者が提案する55歳からの準備はこんな感じ。
- 55歳で将来のキャリアを計画する
- 55歳から60歳の五年間でその計画を進める
- 60歳定年時に準備状況を踏まえ自分で納得できるシナリオを選択する
55歳になると役職定年を迎える方も多く、会社内での出世争いをもう考える必要が無くなる。よって、ここからは出世ではなく、自立のためのキャリアをどう作っていくかを考えていきたいところ。
やってはいけないパターン
定年後のキャリアプランに向けて、意欲高くあれこれトライするのは良いことではある。ただ、無理のし過ぎは禁物。筆者が掲げる注意事項はこの三点。
- 初期投資の大きい投資は避ける
虎の子の退職金や、老後のための預貯金を切り崩してまでの起業や自己投資は絶対に避けるべき。お金の面での無理は絶対にしないこと。
- 時間を売る起業は避ける
- 肉体を駆使する企業は避ける
これらは、シニア世代の体力、精神力を考えると納得感がある指摘だ。体力勝負になる業務はシニアには辛い。最初は頑張れてもいずれ続かなくなる。
- 現業に関係ない資格は取らない
資格を取るなら現業に寄せる。難易度が高く、それでいて現業から離れた分野の資格は取れたとしても活かす道が少ない。シニア世代の資格取得は対面コミュニケーション力養成と、資格取得後のネットワークづくりがポイント。
独立業務請負人という働き方
本書で再三、筆者が提示しているのが独立業務請負人(インディペンデント・コントラクター)という働き方である。独立業務請負人とは聞きなれない言葉だが、インディペンデント・コントラクター協会による定義は以下の通り。
“期限付きで専門性の高い仕事”を請け負い、雇用契約ではなく業務単位の請負契約を“複数の企業”と結んで活動する“独立・自立した個人”のことを、インディペンデント・コントラクターと呼んでいます。
筆者自身が独立業務請負人という生き方を推進している方であり、そちらの業界の人間なので、この分野の裾野を広げたい気持ちが強いのだろう。わたし自身は、正直、いまひとつピンと来ていないのだが、選択肢の一つとしては考えておきたい。