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『「働き手不足1100万人」の衝撃』古屋星斗+リクルートワークス研究所 2040年の日本が直面する危機と“希望”

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2024年刊行。筆者の古屋星斗(ふるやしょうと)は一橋大学大学院社会学研究科を経て、経済産業省に入り、その後リクルートワークス研究所の主任研究員に転じている人物。

「働き手不足1100万人」の衝撃――2040年の日本が直面する危機と“希望”

本書は2023年3月にリクルートワークス研究所が発表した未来予測シミュレーションの結果をもとに更に考察を深めた一冊。

PRESIDENT Onlineの紹介記事はこちら。

本書以外の、古屋星斗作品はこちら。

内容はこんな感じ

2040年。働き手は1100万人も足りなくなる。少子高齢化による人手不足は産業、企業を直撃し、私たち生活者へも多大な影響を及ぼす。医療、介護、建設、流通、接客。日々の生活を維持するための労働力がなくなっていくのだ。身の回りで起きる働き手の消失は、私たちの生活をどう変えていくのか。そして打開策はあるのか。日本人が未だかつて体験したことがない労働供給制約社会について考えていく。

目次

本書の構成は以下の通り。

  • はじめに
  • 第1章 働き手不足1100万人の衝撃
  • 第2章 都道府県別&職種別2040年の労働需給予測
  • 第3章 生活維持サービスの縮小と消滅
  • 第4章 働き手不足の最前線・地方企業の窮状
  • 第5章 働き手不足を解消する4つの打ち手
  • 第6章 解決策1 徹底的な機械化・自動化
  • 第7章 解決策2 ワーキッシュアクトという選択肢
  • 第8章 解決策3 シニアの小さな活動
  • 第9章 解決策4 企業のムダ改革とサポート
  • 第10章 2040年の“新しい”働き方
  • おわりに

とにかく人が足りない

コロナ禍を経た現在の日本で、注目されているのは各分野での人材難だ。給料を上げても応募が来ない。人が来ないからサービスの質が下がる。人がいないから廃業も視野に入ってくる。採用コストが上昇した結果、生活維持に必要なサービスが存続の危機を迎える。一方で先端分野を研究すべき人材も集まらず、国際競争力も低下していく。1100万人といえば、東京都の人口(約1,400万人)に迫らんとする膨大な数であり、その影響は計り知れない。

事務、技術、専門系の分野はギリギリなんとかなるとしても、生活必須職、いわゆるエッセンシャルワーカーが本当に足りなくなる。本書の前半パートでは、働き手が足りなくなる世界ではどんなことが起こるのか。リクルートワークス研究所が発表した未来予測シミュレーションをベースに考察を述べている。

働き手不足をどう解消するか?

人手不足を解消するため、一般的によく言われる対策がシニア層、女性、そして外国人の活用だ。しかし日本におけるシニア層の就業率は60~64歳で71.5%、65~9歳で50.3%であり、これは既に世界トップ水準となっている。シニア層の健康状態は個人差が激しくなっていくので、働ける方はもちろんおられるのだろうが、誰もが働けるわけではない。また、女性層には難題である年収130万円の壁や、女性が活躍しにくい就業環境の問題がある。そして外国人の受け入れ、とりわけ移民としての需要は、日本社会ではまだまだ抵抗感をもって受け止められているのが現状だ。

働き手不足への四つの対策

もちろん座して悲惨な事態を待つべきではない。本書の後半パートでは、いかなる手段でこの未曾有の事態を乗り切るべきか。以下、四つの打開策が示されている。

解決策1 徹底的な機械化・自動化

人がいないのであれば機械化、自動化してしまえばいい。テクノロジーをもって問題対策に臨むのは、非常にスマートでまっとうな考え方であると感じる。工場現場では機械化・自動化が進んでいるし、いまもっともこの分野で研究されているのは自動運転のカテゴリだろう。法整備にも時間がかかるかもしれないが、遅かれ早かれこのカテゴリでの対応は進んでいきそう。もっとも建設や介護といった機械化、自動化が難しい業種も存在するのではあるけれど……。

解決策2 ワーキッシュアクトという選択肢

ワーキッシュアクトとは耳慣れない言葉だが、「本業以外の活動が誰かを助ける」といった考え方に基づいた各人の社会貢献をさす。詳細はこちらのリクルートワークス研究所の記事をご参照いただきたい。

老朽化が進む社会インフラ(電柱やマンホール)を見つけたら通報してもらう。ゲーム感覚で、なおかつちょっとしたインセンティブを与えることで活動を継続させていく仕組みは面白いと感じた。労働集約が必要なジャンルにうまく活かしていけると良いのではないか。

解決策3 シニアの小さな活動

シニア層に現役並みの負担を強いるのは無理がある。しかし出来る範囲で各人が少しづつ社会に貢献してくれれば、とにかく数が多いだけにそれなりのボリューム感は出る。無理なく。健康的な生活リズムに資する形で。そして利害関係の無い、周囲の人々とゆるやか繋がっていくことで地域の活性化にも繋げていく。

わたしのような年代には、いちばん気になる考え方だった。ただシニア層、特に男性層はコミュニケーション力が低く、きっかけをつかみにくい。いずれ、こうしたシニア層をうまく活用してくれるような仲介ビジネスが増えてくることを期待したい(もうあるのかもしれないけど)。

解決策4 企業のムダ改革とサポート

本書によると企業活動にはまだまだ無駄が多く。15%程度は無駄であり、労働者は週に6~7時間はいらない仕事をさせられていると本書は説いている。確かに自分の職場環境を振り返ってみても、謎の業務、形骸化しているけれどなんとなくやっている仕事は存在するので、こうした点をなくせばもっと効率化は出来るのかもしれない。これからは、こうした無駄を無駄と認め、改善できていく企業が生き残るのだろう。

かくありたい三つの未来予測

本書の終盤では、これまでに提示してきた四つの解決策を踏まえた「2040年の新しい働き方」が紹介されている。

  • 未来予測1 消費者と労働者の境目が曖昧になる
  • 未来予測2 働き手が神様です
  • 未来予測3 労働が楽しくなる

これらは四つの施策が効果を発揮し、明るい未来が描かれた場合の仮定だ。誰もが少しづづ社会貢献し、人手不足の穴を埋めていく。働き手がいない社会では、顧客よりも労働者の方が貴重になって行く。顧客が労働者に対して行う、行き過ぎたクレーム、カスタマーハラスメントに対する注目が高まっているので、労働環境改善の兆しも見え始めている。これらの成果として働くことが楽しくなっていく。

むろんこれらは理想論だし、いずれの施策も不発に終わる、最悪の2040年もあり得る。とはいえ、現時点でリスクをしっかりと捉えて、個人的に対策を講じておくことは重要であると感じる。わたしのような中高年層としては、歳を取ってもそこそこに働ける環境と、地元社会との共生がカギになってくるのではないかと考えている。

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