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『秘島図鑑』『幻島図鑑』清水浩史 不思議な島たちの物語

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本日は清水浩史(しみずひろし)による『秘島図鑑』と『幻島図鑑』の二冊をまとめてご紹介したい。清水浩史は1971年生まれの編集者、ライター。日本各地の島を訪ね歩いた著作の数々で知られる人物だ。

この記事から得られること

  • 魅力的な日本の島、50島について知ることが出来る
  • 日本の国土が実はものすごく広いことがわかる

『秘島図鑑』

2015年刊行。清水浩史の単著としては、本書がデビュー作となる。

秘島図鑑

『秘島図鑑』内容

そこは絶海の孤島。住人ゼロ。アクセス皆無。そこにたどり着くだけでも、多大な困難を強いる「秘島」の数々。日本各地の島々の中から厳選された、33の「秘島」を実際に往訪。それぞれの島に秘められた歴史や、海防、資源問題にまで目を向ける。「行けない島」ガイドの決定版。

島国、日本とは言うけれど

島国である日本には各地にさまざまな特色を持つ島々があるが、実際にわたしたちが訪れることのある島は少ない。

本書は以下の5つのこだわりをもって秘島のみをセレクトしている。

  1. 遠く離れたリモート感がある
  2. 孤島感がある
  3. もの言いたげな佇まい
  4. 行けない。島へのアクセスがな
  5. 住民がいない
  6. 知られざる歴史を秘めている

美麗な写真と共に紹介している一冊だ。

わたしも旅行は大好きで日本各地を訪れているものの、島となるとまったくの手つかずで筆者の行動力には憧れるばかり。これら30余の島々を、筆者は可能な限り現地への到達を試みている。

『秘島図鑑』をMap化してみた

本書で登場する33の島をGoogleMapのマイマップ機能でまとめてみた。こうして見てみると、日本という国の広大さを実感せずにはいられない。

マップ上の番号は、書籍上の番号とある程度一致させているが、宮古島の「奇岩」は2箇所あったのでそこから番号がずれている。この点ご容赦を。また、幻の島系の「南波照間島」と「中ノ鳥島」はそもそも存在していないので”なんとなく”の位置となっている。それから肥前鳥島は南小島の緯度経度に配置している。

中ノ鳥島(ガンジス島)についてはかつて日本最東端の島とされていたが、歴史上の”発見”からさまざま紆余曲折を経て承認が”取り消し”となった。まさに、いわくつきの島で、非常に心惹かれる秘島と言える。このあたりはわたしが大好きなサイト幻想諸島航海記さんで詳しく解説されているので気になる方はぜひ。

秘島図鑑

秘島図鑑

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『幻島図鑑』

続いて『幻島図鑑』のご紹介。こちらは2019年の刊行。『秘島図鑑』と同様に河出書房新社からの登場。カバーデザインもフォーマットが揃えられており、第二弾!的な雰囲気が強い。

幻島図鑑: 不思議な島の物語

『幻島図鑑 不思議な島の物語』内容

浸食で消えたエサンベ鼻北小島。柿本人麻呂終焉の地として知られながら、海に沈んだ鴨島。炭鉱の空気孔として作られた人工島(初島、三池島)。すべての住民が島を去った鵜渡根島。そして、住人が最後のひとりとなってしまった黒島。憑かれたかのように、日本各地の孤島を巡った筆者が、厳選した17島を紹介。その魅力と歴史を語り尽くす本邦初の「泡沫の島」ガイドブック!。

「幻島」の定義は

まずは筆者なりの「幻島」の定義から。筆者は今回17島の島々をセレクトしているが、その評価基準は以下の通り。

  1. はかなげ:人口が少ない、もしくは無人島、無人化島
  2. 希少性:珍しい名称・フォルム、稀有な美しさ、知られざる歴史
  3. 小さい:面積が小さい、狭小性

泡沫(うたかた)の島とも筆者は呼んでいる。本書では既に存在すらしていない島から、やがて消えゆく島、そして人の暮らしがあった島、それが失われようとしている島の数々が登場する。登場する島々は、知名度の点で、前作『秘島図鑑』のランナップと比べると弱く感じるかもしれないが、その分、個性豊かでキャラの立ったものがピックアップされている。

エサンベ鼻北小島の「消失」を発見

冒頭に登場するエサンベ鼻北小島から、既にそのインパクトは強烈である。エサンベ鼻北小島は2014年になって初めて日本地図に登録された島である。なぜ、いきなり島が増えるのか?その理由は2010年代に機運が高まった、領海、排他的経済水域(EEZ)への意識である。有効な領海、排他的経済水域を広げるためには、存在はするが、地図への記載が漏れていた島々を増やせばよい。そんな観点から、エサンベ鼻北小島は新たに「発見」され地図に追記されたのだ。

面白いのはエサンベ鼻北小島が、2014年の時点ですでに存在してなかった点である。岩礁に近いような、ギリギリに島であったエサンベ鼻北小島は、浸食によって失われていた。筆者の訪問よってエサンベ鼻北小島の「消失」が、確認されてしまったのである。これほどの大発見は、島マニアとしては冥利に尽きるだろう。

人の暮らしのある(あった)島がせつない

『秘島図鑑』の33島から半分の17島に対象を限った分、一つ一つの島に割ける原稿量が増えたのは嬉しい限り。魅力的な島が多数登場するが、特に気になったのは長崎県五島市の黒島。この島は、住民がおばあさんただ一人になってしまった島だ。海をバックにしたこの女性を捉えたショット(とてもいい笑顔)が、最後まで心に残る。

よそ者としてはどれだけ寂しいのだろうかと心配にもなるのだが、こちらの方は、慣れ親しんだ島での暮らしを慈しんで様子なのだ。人の生き方の多様さに、なんとも言えない気持ちにさせられるエピソードだった。

『幻島図鑑』をMap化してみた

最後に『秘島図鑑』同様、『幻島図鑑』をMap化してみたのがこちら。

概ね、書籍の掲載順になっているが、炭鉱の空気孔として設けられた初島、三池島は二島あるので、ここで番号がずれている。その点はご了承いただきたい。

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