放送を禁止されている歌がある!
2000年刊行。筆者の森達也(もりたつや)は1956年生まれ。社会派のドキュメンタリーを得意とするノンフィクション系の映像ディレクター。ノンフィクション作家でもある。
なお、本書の監修はなんとデーブ・スペクターが行っている。
2003年に光文社のノンフィクション系レーベル、知恵の森文庫より文庫版が登場している。
内容はこんな感じ
世の中には放送が自主規制されている歌が存在する。岡林信康『手紙』、赤い鳥『竹田の子守唄』、泉谷しげる『戦争小唄』、高田渡『自衛隊に入ろう』。これらの楽曲はいかなる理由で放送が出来なくなっているのか。その理由は?誰が規制しているのか?テレビディレクター出身の筆者が明らかにする「放送禁止歌」の実態とは。
目次
本書の構成は以下の通り
- 第1章 テレビから消えた放送禁止歌
- 第2章 放送禁止歌、それぞれの具体的な背景
- 第3章 放送禁止歌、日本vs.アメリカ―「デーブ・スペクターとの対話」
- 第4章 部落差別と放送禁止歌
フジテレビ『NONFIX』から生まれた作品
1999年5月。フジテレビ系列のノンフィクション番組『NONFIX』で「放送禁止歌(ほうそうきんしか)」をテーマとした番組が放映された。
本番組を企画した筆者は制作の過程において様々な壁に突き当たる。規制は誰が行っているのか。そしてその基準は、何故規制されなければならないのか、調査を進める筆者の前に意外な真相が浮かび上がってくる。
『NONFIX』は不定期ながらも、今でも放映されているフジテレビ系列のノンフィクション番組だ。これ、けっこうギリギリのテーマで攻めてくる時があって、時として凄い名作が生まれることがある。
放送が禁止された歌の数々
赤い鳥『竹田の子守り歌』。岡林信康『手紙』。泉谷しげる『戦争小唄』。わたしの世代では70年代フォークの名曲と言われてもいまひとつピンと来ないのが残念なのだが、『ほたる』『とおりゃんせ』『かごめかごめ』なんてのもダメらしい。ここまで来ると空恐ろしさすら感じてしまう。
他にも、放送禁止とされてきた楽曲はまだまだある。詳細はwikipedia先生でどうぞ。
「絶対に誰も傷つかない表現などありえない」
根底にあるのは事なかれ主義。そして心の中にある差別意識だ。とにかくヤバそうなものは避けとこう、蓋を被せておこうという思考停止は、自分の仕事でもとても良くある話で、同じ立場だったらきっと右向け右してるんじゃなかろうか、とも思ってしまう
筆者のインタビューを受けた元ディレクターの言葉「絶対に誰も傷つかない表現などありえない」というのは実に重い言葉だと痛感させられた。