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『北条義時 鎌倉殿を補佐した二代目執権』岩田慎平 『鎌倉殿の13人』を見ながら読むならこの一冊

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『鎌倉殿の13人』のハンドブックとして

筆者の岩田慎平は1978年生まれの歴史学者。専門は日本中世史(中世武士論、鎌倉幕府論)。現在は、神奈川県愛川町の郷土資料館で主任学芸員を務めている方。

北条義時 鎌倉殿を補佐した二代目執権 (中公新書)

2021年の12月に刊行。タイトル的にも2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に思いっきり標準を合わせてきた感が強い。

その他の著作として2011年に新人物往来社から出た『平清盛』がある。タイミング的にこちらも、大河ドラマ合わせかな?

平清盛

平清盛

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この書籍から得られること

  • 北条義時の生涯がわかる
  • 北条執権体制確立までの流れがわかる

内容はこんな感じ

十八歳にして源頼朝の挙兵に参加。父は北条時政。姉は頼朝の妻となる政子。自身も、頼朝の側近として仕え、平家追討戦に参加。鎌倉幕府の創設に尽力する。頼朝の死後は、有力御家人らとの抗争を制し、承久の乱にも勝利。将軍の独裁を廃した御家人たちによる合議体制を確立。後の、北条執権体制の基盤を作る。波乱の生涯を送った北条義時の生涯を綴った一冊。

目次

本書の構成は以下の通り。

  • はじめに
  • 序章 伊豆国と北条氏
  • 第1章 流人源頼朝と北条氏
  • 第2章 平家追討戦
  • 第3章 幕府草創
  • 第4章 鎌倉殿源頼家と北条義時
  • 第5章 実朝・政子・義時
  • 第6章 後鳥羽院政期の鎌倉幕府
  • 第7章 承久の乱
  • 終章 新たな公武関係
  • あとがき

鎌倉殿の13人を確認できる

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を見ていて気になるのは、「誰が13人なのか」という点ではないだろうか。既に語り尽くされた感がある、戦国モノの大河ドラマであれば、誰が出てきてもお馴染みのキャラクターかもしれない。

しかし『鎌倉殿の13人』はマイナーな鎌倉モノ、しかも更に知られていない、頼朝の死後の時代までをも取り扱ったドラマなのである。

本書では、ページ数はあまり多くないものの「13人」についての言及がある。

『鎌倉殿の13人』で言うところの、「13人」とは、頼朝の死後に、二代目将軍の頼家を補佐するために成立した御家人らによる合議体制のことではないかと思われる。そのメンバーは以下の通り。

  • 北条時政(坂東彌十郎):政子の父。義時の父。頼朝の舅
  • 北条義時(小栗旬):時政の息子。政子の弟
  • 安達盛長(野添義弘):御家人、比企尼乳母縁者
  • 足立遠元(大野泰広[):御家人、比企尼乳母縁者、安達盛長甥
  • 比企能員(佐藤二朗):御家人、比企尼乳母縁者
  • 八田知家(市原隼人):御家人、寒川尼乳母縁者
  • 三浦義澄(佐藤B作):御家人、御厩別当
  • 和田義盛(横田栄司):御家人、侍所別当
  • 梶原景時(中村獅童):御家人、侍所所司
  • 中原親能:中下級貴族
  • 大江広元(栗原英雄):中下級貴族
  • 三善康信(小林隆):中下級貴族
  • 二階堂行政:中下級貴族

一般的な知名度が低い人物が多い。ドラマの中ではまだ登場していない人物もおり、あまりピンとこない方も多いかな。個人的には乳母人脈強いなあという印象。

陰謀論には与しない?

少し前に読んだ本郷和人の『承久の乱 日本史のターニングポイント』では、実朝暗殺の立案者が北条義時だったのでは?と、陰謀論的な推測を展開していたのに対して、本書では史料から読み取れないことには立ち入らないスタイルを取っている。あくまでも、公暁(本書では「こうぎょう」と読んでいた)の単独犯説を取っていた。

政権簒奪の印象が強い北条氏だが、筆者は「幼い実朝を補佐するために、幕府が統治機構として維持されるように管理した結果。不測の事態ながら、将軍不在でも幕府が存続するようになった」としていて、北条体制の確立はあくまでも結果論としている。

義時と三人の女

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』視聴者的に、気になるのは義時の妻となった三人の女性たちである。いずれもキャラの濃そうな人物ばかりなので、ドラマ視聴者的にはこの先が楽しみ。

  • 阿波局

三代執権、泰時の母となる女性だが、詳細はわかっていない。本書では、筆者自身の説ではないが、源頼朝の最初の妻であった八重と同一人物ではという説もあると紹介されている。大河ドラマはこの説が採用されそう。となると、泰時の出自が怪しくなってきそう……。

  • 姫の前

比企氏出身。正室となる女性。幕府に仕えていた女房で、義時が再三好意を伝えるも相手にされず、頼朝が仲介し「別れないことを記した誓詞」を送ることでようやく婚儀が決まったとするエピソードが面白い。比企氏滅亡後は、義時のもとを去っている。

  • 伊賀の方

姫の前と離別後、義時の継室となった女性。7代執権政村の母親。義時の死後、伊賀氏の変を起こし流罪となる。

「義時本」なのか?

本書の、序章と第1章は、義時登場以前のお話。北条氏そのものの成り立ちと、平家による武家政権が出来るまでなど、歴史背景の部分から丁寧な導入がなされている。第2章からようやく北条義時が登場するのだが、存在感は薄め。頼朝や、政子についての言及も多く、タイトルが『北条義時』の本としては寂しい。史料が少ないのか?いやいや、さすがにそんなことはないはず。このタイトルは大河ドラマ合わせで、やや強引につけられてしまったもののように思える。編集側の意向を強く感じてしまうのであった。

義時本人にあまりフォーカスが当たっていない点はさておき、平家時代から、頼朝の挙兵、鎌倉政権の誕生。頼朝死後の内紛と承久の乱。そして北条執権体制の基盤づくりまでと、一連の流れを概観するには良書かと思われる。

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