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『希望格差社会』山田昌弘 「負け組」の絶望感が日本を引き裂いた?

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『パラサイトシングルの時代』の著者が示した未来への警鐘

2004年刊行。筆者は1957年生まれ。本書刊行時は東京学芸大学の教授だったが、現時点では中央大学の教授。専門は家族社会学と感情社会学。


 

ちくま文庫版が2007年に刊行されている。


 

メディアでの露出機会が多い人なので、あんまり説明は不要かな。代表作は『パラサイトシングルの時代』である。「婚活」という造語の提唱者としても知られている(白河桃子と共に定義)。もやっとした漠たる概念を、明文化するのが上手。


 

内容はこんな感じ

高度成長期からバブル期を経て、そして現在。終身雇用、年功序列は崩壊し、加速するリストラは採用抑制を招き、若年層の失業率はかつてない数字を記録している。晩婚少子高齢化と家族のあり方も大きく変容し始め、日本人を取り巻く環境は急速にリスク化、二極化している。勝ち組と負け組の格差は広がり希望は失われていく。

勝ち組と負け組に二極化していく日本社会

サブタイトルが凄い"「負け組」の絶望感が日本を引き裂く"ときた。豊富な統計データを元に、職業、家族、教育それぞれの現場で勝ち組と負け組に二極化していく日本社会の現状を示し、"努力しても酬われないこと"による希望格差社会がいずれこの国を押しつぶすとの暗澹たる未来を予見した一冊。リスク化と二極化。二つの視点から、いかにしてこの国が希望格差社会へと変貌していったのかを解き明かしていく。

現在を予見する一冊

若年層の高失業率。ニートの顕在化。高推移する離婚率と非嫡出率。虐待の増加。こうして数字を突きつけられてみると、いずれも目を覆わんばかりの惨状で、厳しい現状を見ようとしてこなかった人間に取っては衝撃は大きい。

未来はより過酷なものになる。それに対して、現在の立ち位置を見つめ直し、「これから」の備えを取るための問題提起としては良書だった。今にして思えば、サブタイトルの派手な煽りはブラフでは無いことがよく判る。実際は、本書に書かれているよりももっと酷くなっているように思えるしね。

ではどうすればいいの?

とはいえ、学者さんが書いた本なのでデータを取りそろえての現状分析にほとんどの頁数が割かれていて、ではどうすればいいのかという部分についての試案ははなはだ心許ない。

分不相応な高望みを諦めさせるための職業カウンセリングの導入、コミュニケーション能力を向上させるための公的支援と言われても今ひとつピンと来ない。これほどの問題にそうそう簡単に解決策が出てくるとも思えないから、致し方のないところではあるのだろうけど。

学歴社会は一定の時間をかけてゆるやかに身の程をわきまえさせ、分相応な階層に人間を流し込むためのに社会的な装置だったという指摘は、身も蓋もない言い方だけど確かにその通りで、ものすごく腑に落ちた。

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