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『消えたマンガ家 ダウナー系の巻』大泉実成 マンガ界の深淵を覗き込む

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 マンガ界の闇の部分を垣間見ることの出来る一冊

2000年刊行。元々は太田出版から1996~97年に発売されていた『消えたマンガ家1・3』を文庫化にあたり加筆修正、更に『クイックジャパン』誌に掲載されていた「ねこぢる」篇を追加収録したもの。

消えたマンガ家―ダウナー系の巻 (新潮OH!文庫)

内容はこんな感じ

かつて一世を風靡しながらもいつしか表舞台から消え去っていったマンガ家たち。日本マンガ界死屍累々の歴史の中から埋もれていった作家たちを掘り起していく迫真のドキュメント。本書では出版界の圧力の中で消されていった八名の作家(ちばあきお/山田花子/鴨川つばめ/阿部慎一/中本繁/冨樫義博/内田善美/ねこぢる)を取り上げる。

マンガ家たちが「消えていく」理由はさまざま

読みたかった本なので文庫化されて嬉しい。過労死に近い形で死んでいったちばあきお、自殺した山田花子とねこぢる。激務の中で筆を折った鴨川つばめ。遂にその天才は理解されなかった阿部慎一。まさにマンガ界は死屍累々。大手出版社による作家の使い捨て構造の深淵をこれでもかといわんばかりにえぐり出していく良書なのである。

作家ごとに章は分けられており、章ごとにその形態はさまざまで、ロングインタビューあり、正統派の追跡レポートあり、時にはファンレター形式までとバラエティに富んでいて飽きさせない。

『HUNTER×HUNTER』で人気絶頂の冨樫義博がラインナップに入っていることはややもすると意外な感もあるが、これは『幽遊白書』から『レベルE』までの空白の時期を追いかけたレポート。出版界から圧殺されようとした冨樫がやがてその立場を逆転、併せて悪名高いジャンプシステム(読者人気最優先。どんな大家でも人気がなければ10週で打切り)の疲弊化について描いていく。

しかしなによりも気になったのは内田善美。主に少年誌しかフォローしてきていないわたしにとって、恥ずかしながらこの作家は全くのノーチェック。集英社系の少女漫画雑誌『リボン』『ぶ~け』で活躍していたらしい方なのだが、本書での扱われかたが並み大抵ではないのだ。全文手紙形式。半分ストーカー入っているようなすごい思い入れの入った紹介の仕方で、筆者の怨念をひしひしと感じる。ここまで書かれると読んでみたくなるよね。

消えたマンガ家―ダウナー系の巻 (新潮OH!文庫)

消えたマンガ家―ダウナー系の巻 (新潮OH!文庫)

 

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