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『四谷怪談 祟りの正体』小池壮彦 事件の発生から変容の過程を読み解く

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「知の冒険」シリーズの一冊

2002年刊行。筆者の小池壮彦(こいけたけひこ)は1963年生まれの作家、ルポライター、怪談史研究家。近著では2019年の『東京の幽霊事件 封印された裏歴史』、2016年の『東京 記憶の散歩地図』などがある。

本書は学研の新レーベル(当時)、「知の冒険」シリーズの一冊として刊行された。「知の冒険」シリーズって最近聞かないので、もうレーベルとしては存在していないかな?

 

内容はこんな感じ

江戸の昔から語り継がれた四谷怪談。しかしその実際のところはあまりに不明な部分が多い。お岩はなぜ祟るのか。どのような者がどんな時に祟られるのか。明治、大正、昭和にいたっても脈々と続いていく祟りの系譜を、具体例を挙げながら概観。事件の発生から変容の過程で起きた意外な真相を探り当てる。

四谷怪談伝承の系譜を振り返る

「お岩さん」で知られ、あまりに有名な「四谷怪談」だが、そのベースに実話的な要素が含まれていることはそれほど知られていないのではないだろうか。「四谷怪談」が成立するまでには、さまざまな要素が複雑に絡み合っている。

お岩さんはどうして祟るのか。そもそも四谷で何が起こったのか。知られていないことは多々ある。わたし自身、お岩稲荷がどうして二箇所あるのかもよく知らなかったし、お岩さんのことだと思っていた話が、実は番町皿屋敷のお菊さんのエピソードとの取り違えであったことも今回判明したりして、ずいぶんいい加減に認識していたことが明らかになった。

というわけで、四谷怪談に対する状況認識をやり直すにはなかなかよいのではと思うのだが、構成がやや凝りすぎていて、どうにもとっつきにくいのが難点。冒頭に謎めいた挿話を入れるよりも、シンプルに基本的な事実確認を序盤でやってくれた方が、わかりやすかったのではと思う。文献を引っくり返して、予想外の結論を導き出していく過程は、素直に面白かったので、その点は惜しいと感じた。

「知の冒険」シリーズをふりかえると

本日のオマケ。学研の「知の冒険」シリーズのラインナップを拾える限り拾ってみるとこんな感じ。

  • 『「三国志」を陰で操った倭王 卑弥呼』
  • 『オーパーツ大全』
  • 『ピラミッド「秘密の地下室」―解読された惑星コード』
  • 『アトランティス・ブループリント―神々の壮大なる設計図 』

トンデモ系というべきか、「ムー」的なテイストを感じる作品がラインナップに入っており、これはなかなかにそそる顔ぶれである。雑誌の「ムー」ってそういえば、学研から出ていたわけだし、関連があるのかもしれない。