STと新たな洗脳の仕組み
筆者の福本博文(ふくもとひろふみ)は1955年生まれのノンフィクション作家。『心をあやつる男たち』は1993年に刊行された作品。
文春文庫版は1999年に刊行されている。
この記事から得られること
- 高度成長期に流行したST(センシティビティ・トレーニング)について知ることが出来る
- 現代社会における「洗脳」の仕組み、手法について知ることが出来る
内容はこんな感じ
1960年代。高度成長期の企業戦士を育成するため、研修活動に活用されたST(センシティビティ・トレーニング)。劇的な効果を上げ、個人の能力を飛躍的に向上させるという評判と裏腹に、成功の陰では多くの人格破壊者、自殺者を誘発。その精神的拷問は後に多くの批判を受けることになる。70年代から80年代にかけてSTは衰退したが、それに変わる新たな「洗脳」の手法が登場する。
ビジネス化された「洗脳」について考える
STの第一人者堀田敏安(ほったとしやす)を中心に我が国での洗脳ビジネスを俯瞰した一冊。かねてより読んでみたかった作品だったが、ブックオフで発見したのでようやく読むことが出来た。自己啓発セミナーとか自己開発セミナーとかよく聞く言葉だが、実態を知らされてみるとあまりの酷さに慄然とさせられる。
身近にある洗脳の実態を描く
アメリカ由来で聖職者の育成方法の一つであったSTは、高度成長期の日本で企業研修に導入され激烈な化学反応を生じ独自の発展を遂げていく。STの成り立ちから発展過程、社会的批判を受けての衰退までを前半部では解説。
後半部ではその後継者とも云える洗脳手法の数々が、新興宗教、マルチ商法とリンクし、より危険な存在に成長している現実を説いていく。あからさまに批判的な論調で叩きまくるのではなく、豊富な取材とインタビューで淡々とSTの害悪を浮き彫りにしていく姿勢が○。
福本博文は、その他の著作でも「洗脳」をテーマとした作品を買いている。1993年の『そして、催眠セミナーへ』は小説仕立て。
『そして、催眠セミナーへ』は1995年に『洗脳の部屋―あなたが「別人」に変わるとき』と改題されて、イーストプレスより文庫化されている。っていうか、表紙絵が怖すぎる。
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