犯罪心理学の専門家が説く防犯論
2005年刊行。筆者の小宮信夫(こみやのぶお)は1956年生まれ。本書執筆当時は立正大の助教授。現在は教授に。専攻は犯罪心理学である。
Wikipedia先生でプロフィール部分を引用させていただくとこんな感じ。犯罪抑止、防犯についての専門家といったところだろうか。
警察庁「持続可能な安全・安心まちづくりの推進方策に係る調査研究会」の座長、文部科学省「学校と関係機関との行動連携に関する研究会」の委員、東京都「非行防止・犯罪の被害防止教育の内容を考える委員会」の座長、東京都「地域安全マップ専科」の総合アドバイザー、広島県「子どもの安全な環境づくりアドバイザー」、青森県「防犯環境設計アドバイザー」、岡山県「安全・安心岡山県づくり委員会」の顧問、宮城県「みやぎ安全・安心まちづくり推進アドバイザー」、群馬県「生活安全教育アドバイザー」などを歴任。
この本で得られること
- 犯罪が起こりやす場所とはどんな場所なのか知ることが出来る
- 防犯への取り組みでは何をしていけばいいのかがわかる
内容はこんな感じ
我が国のこれまでの犯罪対策は犯罪者の人格や劣悪な環境に原因を求め、それをいかにして取り除くかに終始してきた。しかしこれらの施策は大きな効果をあげるには至っていない。昨今欧米で注目されている「犯罪機会論」に着目し、どのような場所が犯罪を呼び起こすのかを検証し、具体的な防犯プランの数々を紹介していく。
目次
本書の構成は以下の通り
- 第1章 機会なければ犯罪なし―原因論から機会論へ
- 第2章 犯罪に強い空間デザイン―ハ-ド面の対策
- 第3章 犯罪に強いコミュニティデザイン―ソフト面の対策
- 第4章 犯罪から遠ざかるライフデザイン―もう一つの機会論
「犯罪機会論」からの防犯対策
世界的に見て安全とされてきた日本でも犯罪発生率は年々上昇の一途を辿っている。生活スタイルの欧米化による個人主義は加速し、地域や社会のコミュニティが解体に向うことで犯罪抑止力は低下していく。犯罪者個人だけに焦点を当てた対策ではもはや限界があるとして、筆者は「犯罪機会論」の視点から新たな提案を投げかけていく。
犯罪の発生しにくい「場所」は?
簡単に言ってしまうと誰かが見ているかもしれない、逃げられないかもしれない、逮捕されてしまうかもしれないという環境を作り出すことで、潜在的な犯罪者に犯行を思いとどまらせようとするもの。
学校では登下校時以外には校門を閉めたり、監視カメラを設置してみたり、公園ならば外からも見えやすいように樹林をカットしたり、外壁を格子状に買えてみるといった具合。とはいえ一部でやっているだけでは「それなら他の街で」ということになりかねないので、地域ぐるみでの取り組みが大事になってくる。
地域安全マップの重要性
興味深い施策がいくつか提案されているのだが、とりわけ地域安全マップは印象に残った。子供、親、教師、地域住民が協力して自ら作る安全マップは確かに効果がありそうだ。特に子供自身をマップの作成に関わせるのは妙案。児童1名につき1枚のオリジナル地図を作るというのは学校や親としては相当な手間になるだろうが、それだけの意義はあるのではないかと思う。
筆者のホームページもある
特に地域安全マップについての取り組みは、具体事例が筆者のホームページに紹介されていたのでリンクを貼っておく。実際にビジュアルで見てみると理解が早いだろう。筆者のホームページはこちらから。