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『宗教図像学入門』中村圭志 十字架、神殿から仏像、怪獣まで

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中村圭志にる宗教図像学ガイド

2021年刊行。筆者の中村圭志(なかむらけいし)は1958年生まれの宗教学者。

2014年の『教養としての宗教入門 基礎から学べる信仰と文化』、2017年の『聖書、コーラン、仏典 原典から宗教の本質をさぐる』に続く三冊目の書籍となる。

中村圭志は、宗教、特に五大宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教)についての解説、入門本を多数上梓しており、書店で見かけることの多い作家だ。

この書籍から得られること

  • 主要宗教のシンボル画像の意味と由来がわかる
  • 豊富なイラスト見ながら主要な宗教について詳しくなれる
  • さまざまな宗教の神や、その眷属について知ることが出来る

内容はこんな感じ

キリスト教の十字、仏教の法輪、イスラム教の新月。これらのシンボルマークはにはどんな由来と意味があるのか。諸宗教のシンボルや図像、空間的な表現を横断的に俯瞰し、古典的な宗教的世界を図像学の視点から読み解く。ユダヤ教、キリスト教、仏教をはじめとした世界の主要宗教の図像学的知識を、豊富な写真、イラストとともに解説した一冊。

目次

本書の構成は以下の通り。

  • はじめに
  • PART1 教えの本質の象徴化(十字架と法輪、空と偶像禁止、三位一体と三神一体)
  • PART2 開祖と聖人の生と死(降誕、開祖の生涯、死と復活、諸宗教の開祖と預言者、聖人と宗祖)
  • PART3 神々のバリエーション(聖なる母、天界の王族、異形の神々、瞑想の中の救済者、絶対神の眷属)
  • PART4 儀礼と修行の可視化(求道の階梯、大宇宙と小宇宙の照応、戦いか和合か、聖なる文字)
  • PART5 聖なる空間をレイアウトする(神殿と聖地、祈りと修業の場、塔と宇宙樹、聖なるランドスケープ)
  • PART6 根源的驚異と畏怖の喚起(原初の怪獣、世界と自己の起源、死と終末)
  • おわりに
  • 付録 成り立ちや教義がすぐわかる!教養としての宗教ガイド

図像学とは

まずは用語の確認から。図像学(ずぞうがく)についてWikipedia先生から引用させていただくと、こんな意味の言葉である。

図像学(ずぞうがく、英語:iconography)は、絵画・彫刻等の美術表現の表す意味やその由来などについての研究する学問。イコノグラフィー。icon はギリシャ語のエイコーン(εικών、形の意味)に由来する語(イコン参照)。

(中略)

例えば西欧において百合は「純潔」を、犬は「忠誠」を表すといった例がよく知られている。また、百合を持っているのは聖母マリア、蛇と翼の付いた杖を持っているのはヘルメース(メルクリウス)などと、人物とその持ち物が関連付けられていることも多く、これをアトリビュートという。

図像学 - Wikipediaより

美術鑑賞の世界では図像学の概念は、絵画を読み解くうえで重要な意味を持っており、これを知っているだけで絵を見る楽しみが数倍に広がる知識であったりする。

図像学の入門本として

いきなり話がズレた。中村圭志の『宗教図像学入門』の話に戻るが、本書は、図像学を取り扱っている書籍ではあるが、西洋絵画や仏像などのお約束を網羅的に扱ったものではない。各宗教の全般的な特徴を伝えるところに留まっている。その点では、「図像学入門」のタイトルは、内容を的確に表したものと言えるかもしれない。

取り扱っている宗教は、世界五大宗教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教をはじめ、ゾロアスター教、シク教、ジャイナ教、儒教や道教、更には神道に至るまで著名な宗教は一通り網羅されている。

図や写真が豊富に収録されており、本書オリジナルのイラストも多い。パラパラと眺めているだけでも楽しい一冊でとなっている。図像学に興味のある方は、本書から学びはじめると良いかと。

ムハンマドの肖像画

個人的には比較的なじみの薄い、イスラム関連の記述を興味深く読んだ。偶像崇拝が禁じられているイスラム教では、預言者ムハンマドが描かれる事例は少ない。しかし、本書では預言者ムハンマドを描いた事例として、16世紀の細密画が紹介されている。この絵で描かれるムハンマドは顔をヴェールで覆われた姿で登場しており、これが当時としてはギリギリの表現であったのかもしれない。

『宗教図像学入門』に掲載されているものとは異なるのだが、同様の主題を扱った絵画があったので、以下引用だけさせていただく。こちらの絵のムハンマドも顔はヴェールで隠されている。

もっとも、現代のイラン(シーア派)では、ムハンマドが描かれることはある程度容認されているようで、Wikipediaにはこんな記事があった。

 

ちなみに、図像学、特にアトリビュートについてもっと知りたい方はこちらの書籍がおススメ。

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