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『リモートワークの達人』もっと早く読みたかった「テレワーク」ガイドブック

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8年も前に書かれた「テレワークのすすめ」本

コロナ禍で日本のテレワーク対応は一気に進んだ(というか、導入せざるを得なかった)のだが、本書はそれに先駆けること8年前の2014年に刊行されていた本である。単行本版のタイトルは『強いチームはオフィスを捨てる 37シグナルズが考える「働きた革命」』であった。オリジナルの米国版は2013年に刊行されており、原題は『REMOTE:OFFICE NOT REQUIRED』である。

今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、この国のテレワークの普及が猛烈な勢いで進む中、今こそ世に問うべき!と思ったのか、タイトルを『リモートワークの達人』に改めて2020年に文庫版が登場している。こういう機を見るに敏な動きは嫌いじゃない。

ちなみに文庫版は『自己紹介2.0』などの著作で知られる横石崇の解説がついてくる。

筆者のジェイソン・フリードとディヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソンはソフトウェア開発会社「ベースキャンプ(単行本刊行時は37シグナルズ)のCEOとその共同経営者。いち早く全社的なテレワークのシステムを導入した企業として知られている。

この書籍から得られること

  • テレワークの導入方法がわかる
  • テレワークの長所と短所について知ることが出来る
  • テレワーク時代だからこそのコミュニケーションの大切さがわかる

内容はこんな感じ

会社員でありながら、職場ではなく自宅で働く。新しい仕事形態「リモートワーク(テレワーク)」に注目が集まっている。その導入方法から、長所と短所までを紹介。メリットを生かし、デメリットに対して以下に備えるか。お役立ちの小ネタから、マネジメントに役立つ考え方まで、リモートワークの先進国アメリカの知見を伝えてくれる一冊。

目次

本書の構成は以下の通り。

  • はじめに
  • イントロダクション――オフィスのない世界
  • リモートワークの時代がやってきた
  • リモートワークの誤解を解く
  • リモートのコラボレーション術
  • リモートワークの落とし穴
  • リモート時代の人材採用
  • リモート時代のマネジメント
  • リモートワーカーの仕事スタイル
  • おわりに
  • オフィスが過去になるとき
  • 解説:リモートワークを「乗りこなす」ためのバイブル

テレワークの短所から長所まで

日本ではリモートワークよりも、テレワークと呼ぶ方が一般化しているように思えるので、本稿では以後テレワークで統一させていただく。

ご存じの通り、日本でのテレワークは、コロナ禍で否応なく始まってしまったものである。入念に事前検討されたものでもなければ、十分なテストが行われたものでもない。とにかくやるしかないということで、ぶっつけ本番で多くのビジネスパーソンが、テレワークを体験した。

わたしの場合、2020年3月の前半から2022年4月までの二年間近く、週1~3日の出社義務はあるものの、ほぼほぼ自宅での勤務が続いている。三年前では想像もできなかった事態である。

『リモートワークの達人』ではテレワークの導入、長所と短所、マネジメントはどうあるべきか、採用は?注意すべき点は?と、これからテレワークを始めようかとする人々に対して、その効用と説いた一冊である。

実際にテレワークを半年体験してから読むとずいぶんと強い感慨を持って読むことが出来た。テレワークには時間を自由に使える。余計な雑用で無駄な時間を使わなくて済む。通勤時間が有効に使えるなど、多くのメリットがある。しかしその反面、生活を侵食される、コミュニケーションのロスが出る、紙や判子などの企業文化を捨てきれないなどデメリットも多数存在した。

本書では特に、デメリットしてあげられている点に対していかに対処すべきか、テレワークのパイオニア企業だけに豊富な具体例を元に解決策が示されており、もっと早く読んでおけば良かったと反省しきりなのである。

コロナ禍、日本の環境に対応したものではない

とはいえ、もともとの書籍が2014年(米国版は2013年)に書かれたものなので、現在の最新状況は踏まえていない。特に新型コロナウイルスの大流行については予見のしようもなかったであろうから、そのまま受け止めるわけにはいかない事例も多い。

自宅でばかり作業しているとメンタルに影響が出るから、外部のワーキングスペースやカフェなどでの作業をおススメしているが、コロナ禍ではなかなかそうもいかないだろう。

また、住居のスペースが狭く、十分な保育体制が整っていない日本固有の状況下でのテレワークが相応の困難を伴うことについても、当然のことながら言及はない。この点、別稿でも良いので、日本向けのローカライズなり、補記があれば万全であったのだが、それは多くを望みすぎであろうか。

テレワークの課題はメンタルへの配慮

最後に個人的なテレワークへの所感。

半年間テレワークを体験してみて、最大の問題点は各人のメンタルの変化に気付きにくいことではないかと感じている。WEB会議などで頻繁に顔を合わせていても、どうしても相手が何を考えているのか、どんな気持ちでいるのかまでを察することは難しい。いわゆる空気を読むのが困難なのである。

テレワークが続く中で、不満やストレスをため込んでいたり、意見があるのに言えないでいたりと、孤独になり精神的にダメージを受けていたりする方は身近におられないだろうか?テレワーク下では、リアルでの対面業務以上に他者への心配りが必要になってくるのではないかと思われる。

『リモートワークの達人』でもコミュニケーションの大切さは再三提示されていて、特にたまにしかないリアルでの会話は本当に大切にすべきであろうと主張している。この点はホントに大賛成。テレワークでリアルの接触が激減する分、リアル会話の大切さが本当に身に染みてくるのである。

リモートワーク体制下でのコミュニケーションのあり方について、もうすこし深堀りされた書籍が無いかと探しているのだが、そういう著作はないのかな。もうちょっと知見を深めてみたいところ。

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