ビズショカ(ビジネスの書架)

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『老後に住める家がない!』太田垣章子 明日は我が身の”漂流老人”問題

老後に住む家が借りられない現実を知る

2000年刊行。筆者の太田垣章子(おおたがきあやこ)は専業主婦から一念発起、30代後半で司法書士の資格を取られた方。2,300件を超える家賃滞納トラブルを解決してきた実績を持つ、最新の賃貸事情を知る人物である。

おススメ度、こんな方におすすめです

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

  • 高齢になっても部屋を貸してもらえるのか不安な方
  • 高齢者が部屋を貸してもらえない理由を知りたい方
  • 高齢者の賃貸トラブルはどんなケースがあるのか知りたい方
  • 一生賃貸派としてやっていくつもりだけど、どうすればいいのか知りたい方

内容はこんな感じ

超高齢化社会に突入している日本で「住む家が借りられない」問題が深刻化している。資産があっても家主が貸してくれない。不動産業者は斡旋すらしてくれない。果たしてその理由はどこにあるのか。家主側が抱える不安と、法的な問題点。23,000件以上の賃貸トラブルを解決してきた司法書士が語る、最新の高齢者の「終の棲家」事情とは?

目次はこんな感じ

序章 資産を持つ元エリートビジネスマンが賃貸に住めなかった理由
第1章 だから借りられない!不動産現場のリアルな実態
第2章 高齢者が賃貸住宅に住めないリアルな実態
第3章 対談1 熊切伸英(ベルデホーム統括部長)-不動産管理会社の現場はどう考えているのか
第4章 お金にまつわる高齢者の賃貸トラブル
第5章 対談2 菅井敏之(元メガバンク支店長)-「一生賃貸」で生きるためのお金の知恵
第6章 今すぐ始めたい、「一生賃貸」のための「住活」

高齢者が部屋を貸してもらえない理由

『老後に住める家がない!』とは衝撃的なタイトルである。わたしは賃貸派の人間なので、これは気になる!

高齢者は賃貸住宅を借りにくい。その、想定できる理由として、

  • 孤独死のリスク
  • 家賃滞納のリスク
  • 保証人を用意できないリスク
  • 認知症、要介護となった場合のリスク

あたりまでは思いつくのだが、素人にはなかなか予見できないリスクとして、

  • 貸借権は相続される

という法的問題を本書では指摘している。借主が死亡した場合、賃貸契約は消滅するのではなく、相続人に引き継がれてしまうのである。故に、大家は相続人をすべて探し出して賃貸契約を解除してもらわなければならない。それが出来ないと部屋を再度賃貸に出すことはもちろん、部屋の内部すら片づけられないのである。これは確かに貸す側にとっては大きなリスクである。

本書では、筆者の豊富な実体験を元に、さまざまケーススタディを紹介している。十分な預金があっても、高齢であるだけで部屋が借りられない方。住んでいたアパートが取り壊しになり転居先が見つからず行き詰る方。要介護状態になりながらも、他者を信じられなくなり引き籠る方。なんとも辛い話が続く。

しかし、これは数十年後の自分であるかもしれないのである。

ではどうすればいいのか

賃貸契約が相続されない、一代限りとする「終身建物賃貸契約」という仕組みは用意されているようなのだが、適用するための制限や事務手続きが煩雑で全物件中わずか0.06%しか存在していないとのこと。筆者はこの「終身建物賃貸契約」のハードルを下げるべきであると主張している。

また、高齢になってから賃貸物件を探すのではなく、遅くとも60代の後半には終の棲家となりえる、長期に渡って住めそうな物件を確保しておくべきとも語る。

このあたりは、理屈ではわかるものの、人生100年ともいわれている時代、良い物件を見極めて確保しておくのはけっこう難しいように思える。だいたい、長持ちしそうな物件は築浅だろうから家賃も高そうだしなあ……。

賃貸派として生きるために

現代は、長生きすることが経済的なリスクになる時代である。年金があてにならない以上、現役時代に出来る限り経済面での備えをしておくことは必要であろう。また、お金だけではない、目に見えない人間関係の維持も重要である。本書では対策として以下を挙げている。

  • 固定費(教育費・住宅費・車・保険・通信費)をできるだけ下げておく
  • ライフプラン表を作り、どの年代にどんな出費があるのかあらかじめ知っておく
  • 人に助けてもらえるような「受援力」をつける

特に「受援力」については、ご近所付き合いの大切さ。いざという時に「助けて」と言える人間関係の形成が、老後には極めて重要になってくると説く。

これを読んで、夫婦そろってコミュニケーション能力の低い我が家は、ヤバい!と思ってしまった。今の家も、ご近所付き合いとか全くないんだよね。これからは、しっかり考えておいた方が良いのだろうか。

超高齢化社会にあっては、賃貸物件も供給過剰になるはず。それだけに、なんとかなるんじゃないかな。と、漠然と考えてはいたのだが、本書を読んでもう少し真面目に考えなくてはと反省した次第。