社会人のたしなみとして知っておきたい「ハロー効果」
2018年刊行。人気ブログ「分裂勘違い君劇場」のふろむださんの初書籍。
美男美女に生まれるだけで人生の難易度は下がる。有名大学を卒業しているだけで「デキル男」だと思われてしまう。思考の錯覚は、知らず知らずのうちに人間の判断を歪めている。
一つの属性が優れているだけで、全体についても優良であると誤認してしまう。ハロー効果について書かれた一冊である。
Amazonのレビューをつらつら見ていると、ハロー効果を知らなかった人はみんな目から鱗が落ちまくっている反面、既知の人間からは内容が薄い、物足りないという指摘が目につく。それ故に、本書はハロー効果って何?という方にはおススメである。
ハロー効果は、それを利用するしないは個々の判断に委ねられるとしても、その存在を知っているか否かは、社会人生活の質を多少なりとも左右するからである。
目次
本書の構成は以下の通り。
- おいしいのは「正しいとしか思えない間違ってること」
- 自分はハロー効果に騙されないと思っている人が騙される理由
- 学生と社会人では人生ゲームのルールが根本的に異なる
- 誰も卑怯と気づかない卑怯なやり方が最強の勝ちパターン
- 運ゲーで運を運用して勝つ方法
- 優秀な人間が運に左右されずに成功する理由
- 食欲でも睡眠欲でもない、性欲よりもはるかに切実な欲望
- なんでも悪く解釈される人とよく解釈される人の違い
- ダメな奴はなにをやってもダメという呪いの正体
- 自分の意思で選択しているとしか思えない
- 成果主義という名のインチキゲームの裏をかいて勝つ方法
- 幸運を引き当てる確率を飛躍的に高くする方法
- 思考の死角に棲む悪魔の奴隷から主人になる
- 美しき敗者と醜悪な勝者、どちらになるべきか?
- 有能な人と無能な人を即座に見分けられるのはなぜか?
- 自分は公平だと思っているえこひいき上司の脳内
- 欺瞞が錯覚を第繁殖させる
- 思考の錯覚のまとめ
- 錯覚資産を雪だるま式に増やしていく方法
「錯覚資産」をどうやって作り始めるか?
ハロー効果の利用法の一つとして、筆者は「錯覚資産」を築くべきであると説いている。「錯覚資産」とは「自分の得になるような、他人の勘違い」を指す。
本書の「錯覚資産」の作り方、増やし方については既にたくさんの方がレビューされているので、当Blogではスルーするとして(笑)、わたしが特に賛同したいと思ったのは、「錯覚資産」生成の初期段階においては、CVRよりもPVを重視すべしとしている点である。
CVR⇒Conversion Rateの略でウェブページ閲覧者中、商品を購入してくれた人の率
PV⇒Page Viewの略でウェブページを見てもらえた数
いずれもウェブマーケティングの用語だが、ビジネスにおいて、CVRは成功する確率、PVは挑戦機会と読み替えることが出来る。
実力が伴わないうちはチャンスが訪れても挑戦するのをためらってしまう。しかし、もう少し実力がついてから、もう少し経験を積んでからなどと思っていると、いつまでたっても成功体験が得られない。
ハロー効果では「一つの属性が優れているだけで、全体についても優良であると誤認してしまう」わけだから、まずは最低一つ優れた属性を獲得しなければならない。であれば、成功体験の無い初期段階こそ、とにかくなんでも挑戦して「小さな成功」を積み上げて、その後の確変を待てと筆者は主張している。
経験も実力もないところで、挑戦機会を増やしていこうという姿勢を取り続けるのは勇気が必要だ。だが、何事も始めてみないと先に進まないのだ。
「錯覚資産」は卑怯であると思える部分も多く、それを使うことに嫌悪感や、躊躇いを覚える方は多いと思うが、少なくともCVRよりもPVを重視すべしは人生の真理ではないかとわたしは考えている。その点を再確認できただけでも、本書は読む価値アリであった。