中古マンション選びで迷ったら読みたい
2019年刊行。筆者の日下部理絵は、大学在学中にマンション管理士・管理業務主任者試験に合格。マンション管理会社勤務後、マンションの総合コンサルタント事務所を開設し独立された方。ご本人もマンションに居住しており、個人投資家としてのマンション購入もしている。いわば、中古マンションの専門家と言っていいだろう。
内容はこんな感じ
新築より中古が断然おすすめな5つの理由とは?買うタイミングはいつがいいのか?購入後も値下がりしにくい物件の特徴とは?うまくいく値引き交渉のコツとは?マンション管理士であり、管理会社の従業員として働き、自身もマンション住まいである筆者が教えてくれる、ベストな中古マンションを手にいれるためのアドバイス集。
いまさらだが中古マンションを探している
私事で恐縮だが、学生時代に一人暮らしを始めてからずっと、賃貸住宅暮らしが続いている。結婚が遅かったこともあり、買うタイミングを逃していたというのも正直ある。ただ、今後の事を考えると、やはり買っておいた方がいいのか(←まだ悩んでる)と考える部分もあり、情報収集を始めた次第である。
では、以下、簡単に本書の内容を振り返る。
中古マンションが「賢い選択」である5つの理由
マンションを買うなら新築か、中古か。これは永遠のテーマの一つである。筆者はマンション管理士の立場から、以下の5点の理由から「中古を買うべし」と結論付けている。
- 価格が安い
- 住宅ローンの負担が軽くなる
- 現物を自分の目で確かめて判断できる
- 希望エリアの選択肢が広がる
- リフォームやリノベーションで自分好みにできる
一方、中古のデメリットもきちんと指摘はしてくれている。
- 入居後すぐに一時金が発生する可能性
- リフォーム費用がかかる
- バリアフリーへの不安
- ペット飼育不可の可能性
- 借入期間の制限や、金利優遇の対象にならない場合がある
- 公庫融資限度額に差がある
- 耐震性
- セキュリティ不安
- 設備、デザインの陳腐化
- 仲介手数料の発生
購入者としては、メリットとデメリットを比較して、自分の懐事情と相談して決めればいいと思う。もっとも、昨今の都内新築マンションの価格は高騰、高止まりを続けており、ふつうのサラリーマンがどうこう出来る領域を超えていると思う。我が家の場合は中古一択になりそうである。
中古マンションを購入するベストなタイミングは?
第二章は「購入タイミング」がテーマとなっている。何事も欲しい時が買うべき時とはいうものの、マンションは人生最大の買い物である。絶対に失敗は出来ないと思うと慎重にもなってくる。筆者が示す判断ポイントはこちら。
- 不動産価格は8~12年の周期で変動する
現在が上昇期か下降期なのかをまず把握しておこう。地域ごとのおおまかな相場はレインズマーケットインフォメーションで調べることが出来る。
- 今後も大幅に金利が上がる可能性は低い
昨今の金融状況を鑑みるに、大幅な金利変動が起こる余地は少なそうである。故に、今すぐ買わなくては!と焦る必要はない。
- 消費税の増税前か後か?
消費税増税前に書かれた本なのでこの項目がある。中古マンションの場合、売主が個人である場合、建物に消費税はかからない。ただし、売主が法人である場合はしっかりかかってくるので気を付けたい。
中古マンションの売り手は個人であること多いため、消費税の点に関しては気にしなくても良いのではと筆者は説く(消費税は既にあがってしまったので、この項目は現在無視してもいい)。
価値ある中古マンションの見つけ方・探し方
まず気になるのが、大規模マンションか中小規模マンションかの見極めである。本書ではそれぞれのデメリットが指摘されている。
大規模デメリット
- エリアが限られる
- 共用部分のコストが高め
- エレベータが混む
- 居住者の関係が希薄に
- 住民間の合意形成がとりにくい
中小規模デメリット
- 周辺環境に左右される
- 共用施設が限定
- セキュリティ面の懸念
- 清掃がおろそかに
- 共用部分の負担が高めに
- 管理費の長期滞納が、全体に影響
筆者としては、上記のデメリットを踏まえたうえで、300戸以上の大規模、150戸以下の中小が下落率が高くお勧めとしている。
「中古マンション」はここを見て選びなさい!
この章では気になる、築年ごとに中古マンションの選びかたが紹介されている。
- 1970年代以前の中古マンション
旧耐震基準、旧旧耐震基準の問題。間取りが古い。リフォームについてはマンション規定を参照すべし。埋め込み配管で、バリアフリー化できない可能性。
値段的には手ごろになってくるが、耐震面や、設備面では相応に見劣りがするのは確か。今後の何年住むつもりなのかも考えて、慎重に判断すべしとしている。
- 1980年代の中古マンション
1981年から、新耐震基準でのマンションが登場する。境目ギリギリの年代の中古マンションの場合、「建築確認証の交付日が1981年6月1日以降かどうかで判断」できる。
- 1990年代の中古マンション
90年代のマンションは前半と後半で特性が別れてくる。90年代前半から、二重床、二重天井が導入され防音性能が向上する。そして90年代後半では、阪神大震災の影響から制振構造、免振構造を備えた物件が登場する。
- 2000年代の中古マンション
24時間換気の導入。監視カメラの設置や二重ロック等、防犯性能が向上。床の厚みが更にまして防音性が増す。
- 2010年代の中古マンション
バリアフリーからユニバーサルデザインへ。省エネ住宅の登場。
我が家の予算的に最近のマンションはとても買えそうにないので、どうしても古い物件を探すことになる。となると、気になるのは地震対策で、やはり古すぎる物件は怖い。
ババ物件をつかまないための見抜き方
この章ではババ(外れ)物件を掴まされないための智恵が紹介されている。危険な物件はこんな感じ。
- 旧・旧旧耐震基準
- 心理的瑕疵物件(事故、事件物件)
- 計画・資金不足
- 建て替え予備軍
これらについては、取り扱いの不動産業者に確認するだけでなく、周辺の聞き込みや、ネット情報なども活用してさぼらずに情報を集めるべしと筆者は説く。
マンション管理に詳しい筆者だけに、長期修繕計画等、管理組合がしっかりしているかどうかは特に気を付けるよう本書では再三説かれている。
内在するマンショントラブルを見抜く方法
この章ではマンションの管理について、注意すべき点が詳しく書かれている。マンション三大トラブルは以下の三点。
- 駐車場・駐輪場
- 生活者
- ペット
これらのトラブルについて、物件を内見する際に「マンション内の掲示板に注意」すると良いらしい。
マンション内の掲示板は通常、外部の人間は見ることが出来ない。そこには、そのマンション内部の問題点(クレームの発生やトラブル、今後の予定)が掲示されていることが多く、これから購入を考えている人間にとっては情報の宝庫なのだとか。
値引き交渉を成功させる7つのポイント
欲しい物件が決まったらいよいよ価格交渉である。この章では値引き交渉のノウハウが披露されている。
- 売り手は法人か個人か?
- 値引き交渉の準備「物件の周辺相場を把握する」
- 値引き交渉の準備「物件の状況をよく確認する」
- 値引き交渉の準備「売主の状況をよく把握する」
- 値引き交渉は不動産会社を通す
- 値引き交渉は、6月、7月、12月がおすすめ
値引き幅は物件価格の3~5%程度が目安。法人であれば望み薄。個人であれば状況次第(相続、転居などで早く売りたい人も居る)では可能性ありとしている。
6月、7月、12月がおススメなのは閑散期だから。逆に年度末などの繁忙期は競争相手が増えてむしろ値が上がる傾向になるのだとか。
住宅ローンとの賢い付き合い方
最終章は気になるお金の問題。住宅ローンとのつきあい方である。気になったのこのあたり。
- 車のローンを既に抱えていると、融資額が減る。
- クレジットカードのキャッシング枠も、融資額に影響する。
- 申し込み証拠金を払う際は、「預かり証」をもらうこと。(キャンセルになる場合もあるので)。
- 手付金支払い時、相手が法人の場合、売買代金の10%もしくは1000マンを超える場合、銀行や保証会社などによる保全措置が必要(売り主が倒産する場合がある)。
類書をあと何冊か読んでみる
不動産関係のハウトゥ本は、どうしても書く側の所属業界に引きずられる。その業界の悪口は書けないし、自分の所属先に有利なことを書きたくなってしまう。今回は、マンション管理士の資格を持つ方の著作だが、後日、他のスタンスで書かれた類書も読んでみる予定。
何年か前に実家の家土地を売却したので、「売る側」のノウハウは掴めたのだが、「買う側」はまた別の視点が必要となることが分かる。しばらく、情報を集めて勉強していくしかないなあ。
住宅関連のおススメ本はこちら