「HACKS!」シリーズのお勉強版
2008年刊行。筆者の小山龍介(こやまりゅうすけ)は1975年生まれの実業家、コンセプトクリエイター。2006年の『IDEA HACKS!』に始まる「HACKS!」シリーズが人気で、このブログでも以前に、『在宅 HACKS!』をご紹介している。
「HACKS!」シリーズは「スピーディに、楽して、効率よく」仕事をこなすノウハウを、TIPS(小ネタ)形式で紹介している。
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講談社α文庫版は2012年に登場。文庫化に際して、加筆修正が施されている。
内容はこんな感じ
人生において、新しい考え方を取り入れることは大切である。時には今までの経験を忘れることも重要になってくる。井の中の蛙。悪い意味での「熟成」を避けるためには、常に自分を新陳代謝させていく必要がある。自分を変えていくために必要な「勉強」のノウハウとは?辛くない。楽しい勉強を生み出す、ライフハックエンジンの数々を紹介していく。
勉強法模索中
先日、勉強法の本として山本憲明の『朝1時間勉強法』をご紹介した。続いて、本日は二冊目の勉強本として小山龍介の『STUDY HACKS!』である。
勉強法として紹介されているジャンルは、ツール、時間、試験、習慣、環境、語学、キャリアの7つ。TIPS数としては89もの数にのぼる。
このシリーズの良いところは、TIPS(小ネタ)形式で勉強法の数々が披露されている点である。目次を見て、気になるところから読めばよいし、使えそうなネタから試してみるのも良い。合う合わないは当然出てくるだろうが、どなたでも1つや2つは、使えるTIPSが見つかるのではないだろうか。
以下、各章ごとに収録されているTIPS項目をご紹介。そして、気になる部分についてコメントしていきたい。
Chapter 1 ツールハック
この章では、勉強に必要なツールの数々が紹介されている。登場するTIPSは以下の13点である。
- 「ラク耳勉強法」でグングン学ぶ
- ICレコーダーで知識を音声化する
- まず記憶してから理解する
- 勉強がはかどるヘッドホンの選びかた
- 先生の口調から思考を真似る
- 全体像はマインドマップで理解しよう
- Evernoteで自分辞書を作ろう
- 専門誌を定期購読して図解をゲットしよう
- Facebookで勉強グループを作成する
- 勉強ノートをGoogle Documentsで共有する
- 人に教えることで深く学ぶ
- まとめサイトで情報を集約する
- 機能と形態
筆者の考えとしては以下の三点がポイント。
- 知識のインプットの多様化(ラク耳勉強法、五感の活用)
- 知識の構造化(マインドマップによるメタ知識の活用)
- 知識のネットワーク化(他人との知識の共有)
とかく勉強は「目で見る」ことが多いと考えがちだが、「耳で聞く」など他の五感を活用することで効率があがっていく。知識の構造化や、ネットワーク化は、ネット全盛の現代だからこそ出て来たメソッドであろう。
Chapter2 時間ハック
社会人の学習にとって最大の敵は「時間の無さ」である。これに対して、本書は以下の「時間ハック」ネタを紹介している。
- 長時間の勉強はしない
- すきま時間を活用する
- 通勤駅のベンチで勉強する
- ながら勉強で時間を倍増させる
- 会計を英語で勉強する
- 七時間以上寝ると記憶力がアップする
- 講義を受けて強制的に勉強する
- テストでの締め切り効果を生み出す
- 年間計画を立てて「積立貯金」する
- 問題集のページの隅に終了日を書き込む
- 早朝をアウトプット学習にあてる
- 連休を使って集中的にアウトプットする
- すきまとながら
選択と集中。睡眠時間は犠牲にしない。隙間時間の活用と、ながら学習のススメあたりが気になる点だろうか。
社会人はぼーっとしていると本当にあっという間に一日が終わってしまう。僅か、一時間の勉強時間を確保することすらままならない方も多いだろう。しかし、短時間でも勉強時間は確保できる。結局は「はじめる」ことが大切なのかな。
Chapter3 試験ハック
この章は試験編。資格を取りたい、昇格試験がある、などのニーズに対応している。試験勉強と、試験当日に仕えるTIPS集である。
- 問題集は答えから読む
- 正解した問題は二度とやらない
- 残された時間の半分で復習に切り替える
- ワンポケット原則に基づく教科書の使い方
- 教科書は最初から最後まで読み通す
- 教科書はさかさまに読む
- 通勤の駅に合わせて暗記する
- 覚えたことはできるだけ忘れる
- 各予備校の解説を見比べる
- 試験では得意分野から問題を解く
- 受験を思い立ったら、まず申し込む
- 適切な難易度の試験を選ぶ
- ヤマを張る
- 選択と集中
気になったのは「まずは問題集から解きはじめる」点だ。本書で提示されているやり方はこうだ。
- まず過去問をやる(自分の弱点がわかる)
- 解説を読む(この時点で学びになる)
- 教科書、テキストを読む(問題集でわからなかったところをマークする
何度も間違えた箇所は、その都度チェックを入れる。結果的に、自分の苦手な部分がテキストを見るだけで可視化されていくわけである。
これは先日読んだ山本憲明の『朝1時間勉強法』でも登場した考え方だ。違う筆者の勉強法で同じことが書かれていると、信憑性が増してくる。これは普遍的なノウハウであるのかもしれない。
Chapter4 習慣ハック
勉強は継続しなければ意味がない。つまり、習慣化しなくてはならない。社会人の勉強で最大の課題はこの習慣化ではないだろうか。本章では習慣化についてのノウハウが登場する。
- 根性で勉強しない
- マイ勉強ボタンを押す
- 家庭教師でなくコーチをつける
- 勉強仲間をつくると途中で挫折しにくい
- ツィッターで進捗を報告する
- 極上のスイーツを食べる
- ゲーム機は電源を切って箱に入れる
- 五年後の自分の姿に名前をつける
- 最先端の研究を学ぶ
- 昨日の自分に勝つ
- 自然と勉強が進むレコーディング勉強法
- 勉強でアハ!体験する
- 愛着と定着
筆者は勉強のスイッチを入れる「マイ勉強ボタン」を作ろうと提案している。ただ「マイ勉強ボタン」のトリガーは人によって変わってくる。本書では事例として以下の4タイプが挙げられている。
- 好奇心タイプ:新しい知識の喜びとワクワク
- 理論派タイプ:真理を得る喜びと更なる渇望
- 期待に応えるタイプ:人の気持ちを重視
- ちょっとオタク?タイプ:かけているものがあると気になる
かならずしも、上記の事例に全ての方があてはまるとは限らないだろう。しかし自分が勉強をしようと思った動機と照らし合わせて、自分なりの「マイ勉強ボタン」を押せるようになることが大切。自分の「マイ勉強ボタン」を探すことは、何故学ぶのかという根っこの部分にも繋がってくる。
Chapter5 環境ハック
この章は勉強するための環境づくりについて、いくつかのノウハウが紹介されている。項目は以下の通り。
- シータ波の効能
- 夜の散歩でリスニング暗記
- 喫茶店を勉強部屋にする
- 自習室を借りて勉強する
- 勉強合宿で集中学習
- 香りで集中力をコントロールする
- 勉強に効くハーブティー
- 食事は腹八分、半日断食を取り入れる
- 部屋の照明を落とす
- 黄色いものを周りに置く
- まず机のそうじから始める
- お経を聞いて集中する
- 冬のエアコンは二十度に設定する
- 腹式呼吸で雑念を消す
- あぐらをかいて勉強する
- 身体と環境
ノイズキャンセル型のヘッドフォンをつけて、夜間い外を出歩きながらリスニング学習したら危ないのでは?「お経を聞いて集中する」なんてのは、さすがに眉唾のような……。筆者としては効果があった事例だとは思うが、万人向きとは思えない小ネタも含まれているので、ここは、読者それぞれの価値観で取捨選択してしまった良いのではと考える。
Chapter6 語学ハック
この章は語学に特化した小ネタ集である。勉強の中でも、語学を伸ばしたいという方には必見である。
- ペーパーバックで100万語を読破する
- たった1000語でも英会話はできる
- Nintendo DSで単語を暗記する
- リスニングは年間1000時間
- ドラマで生きた英語を身につける
- カラオケ感覚でシャドーイングする
- 決めゼリフを丸暗記する
- iTunesUで海外留学する
- Skype英会話で実力をチェックする
- リズムとゆらぎ
結局、語学はひたすら量をこなすしかないということ?それでもやり切るんだ!と思える、勉強に対しての熱量が大前提になりそう。
って、わたしは、昔から語学は超苦手なので、いまのところ手を出す気はないのだけど……。
Chapter 7 キャリアハック
最終章は、これからのキャリア形成について書かれている。
- キャリアのブルーオーシャン戦略
- 会計を学んで水兵展開する
- 勉強したことをすぐに実践する
- ダブルキャリアを目指す
- 勉強で広げる人脈術
- 勉強の費用対効果
- 仕事を「ケーススタディ」に変える
- 師匠を持つ
- 業務時間の20%を自分R&Dに費やそう
- STUDYとSTUDIOUS
よくあるライフハック本は「減らす」「取り除く」が主要なアクションとされてきたが、本書で提案されているのは「つけ加える」「増やす」アクションである。新たな要素を大胆に取り込むことで、新しい価値が生み出せる。筆者はそう説くのである。
最後の節「STUDYとSTUDIOUS」では、単なるSTUDY(勉強する)から、STUDIOUS(熱中する)への移行が説かれる。勉強を続けることで、自身の提供価値が増え、人脈や、人生の選択肢が広がる。結果として熱中できる人生が築かれていく。
最初のとっかかりが、目の前の試験や、資格のための勉強であったとしても、STUDYから、STUDIOUSに変わった勉強には人生を変える意義が出てくる。
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