書評ブログで何を書いていいかわからないあなたへ
ブログで主として書評を書かれている皆さま(わたしのことである)。思ったような文章が書けているだろうか。そして狙ったような反応は得られているだろうか。何を書いていいのか分からない。書いても全く読まれない。検索順位も上がらない。そんな方は多いのではないだろうか。
当ブログもかれこれ運営開始から一年となるが、別ブログ(小説感想ブログ)ほどの手ごたえは得られていない。このブログは非小説系の新書、ビジネス書等を専門に運営しているのだが、小説の感想とは明らかに違うベクトルの書き方が必要なのではないかと痛感している。
そろそろ方向修正が必要だなと感じていた時、ちょうど巡り合ったのが本書『書評の仕事』である。
人気書評家が教えてくれる「書評の仕事」
2020年刊行。筆者の印南敦史(いんなみあつし)は1962年生まれ。広告代理店勤務を経て音楽ライターに転身。音楽雑誌の編集長を経てフリーに。現在は年間500冊の書評を世に送り出している超売れっ子レビュアーである。
主な掲載メディアはライフハッカー、東洋経済オンライン、ニューズウィーク日本版、マイナビニュース、サライ.JP、WANI BOOKOUT等。
印南敦史はこれだけのメディアに、信じられない物量とペースで記事を提供している。はっきり言って超人の域である。いったいどうすればこれだけの記事が書けるのか。そして読者に支持されている理由は何処にあるのか。それを教えてくれるのが本書である。
この本で得られること
- 読者が書評に何を求めているか
- 要約の書き方
内容はこんな感じ
印南敦史が書評を書くだけで本の売り上げがアップする!書評家の日常、書評家の収支、本の選びかた、読み手の心を動かすにはどうすればいいのか、売れる本と話題になる本、自分に役立つ本、要約の極意、批評と感想文の違いは?各メディアで引っ張りだこの筆者が解き明かす「書評の仕事」の全貌。
読者が書評に何を求めているか
書評を書く上で最初に抑えておかなければならないのは「読者が書評に何を求めているか」である。筆者が提示するポイントは二つ。
- おもしろそうな本の情報を知りたい
- この本が面白いのかどうかを知りたい
書評家はこの二つを意識して書評を書くべきであると筆者は説く。非小説系(新書、ビジネス書)の書評に読者が期待しているのはこの二点に尽きる。ネットメディアの普及で現在は誰にでも書評が書ける時代となっている。書き手が増えているからこそ、その書評が読み手に取って「役に立つのか」が問われてくるというわけである。
ここで注意しておきたいのは、自分の個性や価値観を前面に出さないこと。これはメディアの書評として書く上での注意なので、個人ブロガーとして全面的には頷けない部分もあるかもしれない。しかし、多くの読み手が書評に求めているのは個人の意見ではなく「情報」なのである。よほどの人気ブロガーでない限り、書き手の主観は読む側にとって雑音にしかならないのだ。
要約の書き方
書評は読書の「入口」である。
読者が本に興味を持ち、手に取るきっかけになりさえすればいい。
筆者は書評において、その本の内容を全て伝える必要はないと明言している。対象となる本の中で、書き手が最も主張したい点はどこにあるのか。読む側にもっとも刺さりそうなポイントはどこにあるのか。まずはそれを探すところから始めよと説く。
そのためには、想定読者をイメージする必要がある。いわゆるペルソナという奴である。学生に向けて書くのと、中高年のビジネスパーソンに向けて書くのとでは、書く内容は違って当然である。
続いて、想定した読者層のニーズはどこにあるのかを考える。本の中から、ニーズに合わせたトピックを抽出していけば、自然に書評は組上がっていく。
上記をまとめるとこんな感じ。
- 誰に向けるのか、ターゲットを明確にする(自分なのか、他人なのか)
- そのターゲットが求めているもの(ニーズ)を見極める
- 当該書籍の目次をチェックし、ニーズにかなった部分を探し出す
- その部分を、どう伝えるべきかを”具体的に”考える
- ”わかりやすさ”を意識しながら、その部分を簡潔にまとめる
- 書き終えた後で推敲し、問題があれば修正する
- 「あれが足りなかったのでは?」などと考えず、よい意味で割り切る
なお、要約のコツは書評の世界だけでなく、日ごろのビジネス文章でも活かせる。仕事の上でも文章力を高めたいと考えている方にもおすすめの一冊であろう。
書評の方向性を変えてみようと思う
以上、印南敦史の『書評の仕事』から、「読者が書評に何を求めているか」「要約の書き方」についてご紹介した。
当ブログでは、これまで全体の要約を書くことが多かったのだが、筆者は「情報量を増やすと輪郭はぼやける」と主張する。あくまでも「刺さりそうな部分だけをクローズアップすればいい」としている。この指摘は目から鱗であった。
本書を参考にして、今後、当ブログの書評についても少し方向性を変えてみようかと思った次第。ブログで書評を書いている方には参考になる部分が多いので、是非読んでみて頂きたい。プロの視点はやはり一味違う。
作中で紹介されていた作品、著者はこちら
『数の女王』はちょっと不思議なファンタジー作品。
著書は違うけど、末井昭の著作ということで。