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『町田忍の昭和遺産100』町田忍 個人的な昭和遺産写真も公開!

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町田忍、昭和研究50年の集大成

2021年刊行。筆者の町田忍(まちだしのぶ)は1950年生まれ。警察官から転身して、庶民文化研究所を設立。近現代の庶民文化研究家として知られる人物。昭和レトロ系などの「なつかし」系のガジェットについて多くの著作を上梓している。

町田忍の昭和遺産100 令和の時代もたくましく生きる

『町田忍の昭和遺産100』は、産業経済新聞社発行の「夕刊フジ」に2015年から2017年にかけて126回掲載された『町田忍認定 昭和遺産』から100本をセレクトし、加筆修正した上で単行本化したものである。

この本で得られること

  • 懐かしい昭和の遺産を振り返ることが出来る
  • 昭和の庶民文化に親しむことが出来る

内容はこんな感じ

昭和時代を彩ったさまざまな庶民文化。それらを「建築」「乗物」「風俗」「広告・看板」「商品」「実用品」「日用品」「その他」「町田忍昭和遺産研究60年のあゆみ」などの分類に分けて紹介。町田忍が撮り貯めた300の写真と共に、失われゆく「昭和」を振り返る。風俗文化研究の第一人者・町田忍の昭和研究50年を集大成した一冊。

目次

本書の構成は以下の通り。

  • まえがき
  • 第1章 BEST20昭和の玉手箱
  • 第2章 輝き続ける商品
  • 第3章 永遠の建築
  • 第4章 愛される乗り物
  • 第5章 30・40年代グラフィティ
  • 第6章 元気なサイン
  • 第7章 娯楽の殿堂
  • 第8章 街頭のシンボル
  • 第9章 絶滅危惧種
  • 第10章 事件・文化・モノ&流行年表
  • 第11章 町田忍 昭和研究60年 あゆみ
  • あとがき

 

昭和時代を懐かしむ

一口に昭和といっても、この時代は長い。なんと64年もあるのだ。平成の倍以上である。戦前と戦後、高度成長期、そして昭和末期では全く異なった様相を見せるのが昭和時代である。

筆者の町田忍が1950(昭和25)年生まれのためか、本書の懐かしさの対象は、彼が子供時代を過ごした昭和30年代~昭和40年代にある。かくいうわたしは、筆者と比較すると干支的にひとまわり以上下の世代なので、昭和30年代は未知の時代である。ぎりぎり昭和40年代がついていけるかという程度。本書に掲載されているガジェットを、リアルな体験として懐かしめるのは、昭和40年代生まれがギリギリといったところだろうか。

もちろん、若い世代が読んでつまらないかというとそんなことはない。昭和30年代~昭和40年代、デジタルが存在しなかった時代の世界観は新鮮に見える筈である。

以下、各章を概観していきたい。

第1章 BEST20昭和の玉手箱

 

最初に紹介されるのは昭和遺産のBEST20!町田忍のセンスが光る部分でもある。登場するのは以下の20点。

実用自転車/宮型霊柩車/宮造り銭湯/ペコちゃん/コーワのカエル/遊郭建築/滑り台/ホーロー看板/交番(派出所)/消火栓/トタン板/サインポール/顔出しパネル/ストリップ/見世物小屋/秘宝館/喫茶店/酒屋の看板/白ポスト/自由の女神像

「実用自転車」とは耳慣れない言葉だが、自動車の普及する以前、地元商店の経済活動は自転車によって支えられていたのだとか。

「白ポスト」は、すっかり数が減ってしまったが、家庭でのエログッズを回収するために、各駅等に設置されたものである。こんなやつ。

近江鉄道水口駅の白ポスト

近江鉄道水口駅の白ポスト

「白ポスト」については、個人的に一家言あるので、ツッコミを別ブログに書いておいたので、気になる方はチェックしてみて頂きたい。

「ホーロー看板」はこんなやつ。狭義ではガラス質の釉薬を表面に焼き付けた金属性の看板(琺瑯)。広義には金属製の看板全体を指す。

たばこ+フコク生命のホーロー看板

たばこ+フコク生命のホーロー看板

東芝リンクストアとキンチョール

東芝リンクストアとキンチョール

肩こり ムヒ

肩こり ムヒ

第2章 輝き続ける商品

登場するのは17点。この章では昭和を彩った人気商品が主として登場する。

正(征)露丸/赤チン/富山の配置薬/ケロリン桶/水中花/ラジオ/プラモデル/若者雑誌/セルロイド/ティントイ/蚊取り線香/鯨肉/印鑑店/アイス/ひょうちゃん/甘栗太郎/グリコ

現代でも流通している正露丸が、かつてはロシアを征する「征露丸」であったという事実には驚かされる。大幸薬品のものが有名だが、正露丸はは商標的に普通名詞化されており、同社以外の正露丸が存在するのも意外であった。

「富山の配置薬(置き薬)」は、あらかじめ預けられていた配置薬から、使ったものだけ代金を支払う仕組みで、我が家でも利用していたので懐かしく感じた。おまけでもらえる紙風船が嬉しかったのを覚えている。

第3章 永遠の建築

第3章は昭和のよすがを感じさせる建築物の数々が紹介されている。

帝冠建築/病院建築/百貨店建築/テレビ塔/戦争遺産/同潤会アパート/戦前の小学校/屋上神社/和風旅館/煙草屋/木造建築/ユースホステル

「テレビ塔」の中で、もっとも有名なのは東京タワーであろうが、設計者は内藤多仲(ないとうたちゅう)。実は、名古屋テレビ塔、さっぽろテレビ塔、二代目通天閣、別府タワーまでもが全て内藤多仲の設計であったというのは驚きであった。

「ユースホステル」は、近年ではすっかり少なくなってしまったが、旅好きの若者には安価(素泊まりで3000円代)に泊まることが出来た人気の宿泊施設であった。

第4章 愛される乗り物

第4章は乗り物編である。タイトルを見るだけで濃厚な昭和感がたちこめる(笑)。

スーパーカブ/ボンネットバス/オート三輪/路面電車/ビートル/蒸気機関車/人力車

オート三輪は、わたしが子どもの頃には数多く見かけることが出来た。現代ではほぼ絶滅しした乗り物である。

ビートル(フォルクスワーゲン)は、当時(昭和50年代)でもそこいら中で走っていて、「〇〇色のワーゲンを見ると幸せになれる」というのがよく話題になっていた。懐かしい。ビートルは二代目、三代目も登場したが、初代のデザインの秀逸さには及んでいない。

第5章 30・40年代グラフィティ

第5章は町田忍による自筆カラーイラストが収められている。この人、絵心もあるのが凄いよね。

消防自動車/ロードローラー/オート三輪/路面電車/乳母車/ジュークボックス/赤電話/足踏式ミシン/電気アイロン/牛乳箱/貸本屋/駅前旅館/骨接ぎ/パーマ屋

写真で見るのもいいが、風情のあるイラストで昭和を振り返るのも良い。

第6章 元気なサイン

サインとは、商業施設に置かれた広告物のこと。

ビクターの犬/サトちゃん/ピョンちゃん/小便小僧/キングコング/仁丹町名看板/力王看板/カーネルおじさん/くいだおれ人形/マネキン人形/狸の置物/チンドン屋/手描き看板/看板建築

ビクターの犬(すっかり見なくなった)については、わたしも秘蔵画像があるので披露しておこう。こちらは2000年頃に静岡県の藤枝市で撮影したもの。

ビクター犬のムーバー

ビクター犬のムーバー

第7章 娯楽の殿堂

この章で登場するのは、昭和の娯楽を象徴するものたちである。

遊園地/芝居小屋/ラブホテル/ボーリング/おみくじ/軍人将棋/駄菓子屋/軍国酒場

遊園地、ラブホテルはもちろん現在でも存在するが、本書では昭和ならではの物件を取り上げている。目黒エンペラーって、まだ健在なのか!

第8章 街頭のシンボル

この章では、路上観察を趣味としている人間たちには垂涎の街頭シンボルたちが登場する。

丸形郵便ポスト/木製牛乳箱/街頭ゴミ箱/小原型日時計/マンホール/新聞少年像/警察官人形/飛び出し坊や/防火用水/井戸

飛び出し坊やは、児童らの飛び出し防止、ドライバーの注意喚起のために作られた看板で、滋賀県を中心に数多くのバリエーションが存在する。いちばん有名な飛び出し坊やはこんな感じのデザイン。

標準的な飛び出し坊や

標準的な飛び出し坊や

第9章 絶滅危惧種

本書で登場する昭和ガジェットの中でも、特に絶滅の危機にある物件が多く紹介されている。

ペナント/ボーイスカウト/黒電話/アイビー(IVY)/栞/謄写版印刷/貝細工/ラーメンバス/かき氷/薬味紙/ジャルパック/屋台

ペナントとは観光地で売られていた三角形型の旗を模した土産物である。もはや死語かもしれない。こちらは小学校時代のわたしが、何故か買ってしまったペナントの数々。実家を片づけていたら出土した。

何故か買ってしまうペナント

何故か買ってしまうペナント

謄写版(謄写版印刷)印刷も懐かしい。かつては卒業文集なども、ボールペン原紙をガリガリ削って書いていた。あの独特の匂いは今でも思い出せる。

第10章 事件・文化・モノ&流行年表
第11章 町田忍 昭和研究60年 あゆみ

最後の、10章は昭和の流行年表と、町田忍の昭和研究60年の歩みが掲載されている。昭和の文化史を振り返るには良い資料になるのではないかと思われる。

おまけ:個人的な昭和遺産

昭和の中高生はみんな使っていた(はず)インスタントレタリング!略称インレタ。

ワープロ、パソコン、プリンタ、テプラが普及する以前、綺麗な字が書けない若者は、インレタで身のまわりをデコっていたのだ。カセットテープ(←死語)のラベルもインレタで作ってたなあ。母音(aiueo)は使用頻度が高いのですぐになくなるのが困りモノであった。

インスタントレタリング

インスタントレタリング

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