確率がわからない方へ
私事で恐縮だが、わたしは私立文系人間(しかも文学部だ)で、高校時代に数学は「数II」までしか履修していない。よって、確率がよくわからない。最近、統計の勉強を始めているのだが、確率についての根本的な理解が足りない故に、あれこれ支障が生じるようになってきていた。
なにか、良い書籍はないものかと物色していたところ、こちらの書籍に行き当たったのでご紹介したい。
東大の先生がやさしく確率を教えてくれる
『文系のためのめっちゃやさしい確率』は2021年刊行。
監修者の倉田博史(くらたひろし)は、1967年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科、教養学部の教授職にある人物。専門は統計学。
「文系のためのめっちゃやさしい」シリーズはニュートンプレス社から刊行されている人気シリーズで、これまでに既刊17冊を誇る。
理系ジャンルへの強い興味を持ちながらも、基礎的な知識がないための挫折してしまいがちな、文系人間への福音の書となっている。
この本で得られること
- 確率についての基本中の基本事項が学べる
- 確率の基本的な計算方法がわかる
内容はこんな感じ
私たちの日々の生活は選択の連続である。しかし意思決定には常にリスクがつきもの。リスクに対して備えるには、その蓋然性の程度を「確率」という数値によって客観的に評価するべきである。「確率」とは何なのか?東京大学の先生が教えてくれる「数学が苦手な、文系人間向けに書かれた「めっちゃやさしい」解説本。
目次
本書の構成は以下の通り
- はじめに
- 1時間目 確率って何?(身近にあるいろんな確率)
- 2時間目 確率の計算の基本をマスターしよう!
- 3時間目 もっとむずかしい確率を考えよう!
本書は、監修の倉田先生と、生徒役の文系サラリーマン男性の会話形式で進行していく。イラストや、図解でわかりやすく解説してくれているので、初学者としてはとてもありがたい。
じゃんけんはパーが勝つ確率が一番高い
1時間目の「確率って何?」は導入編ということで、身近にあるさまざまな確率を紹介する。
- 雷に打たれる確率は851万3500分の1
- 火事にあう確率は1426分の1
- 20代の死亡率は0.059%
などなど、興味をひきやすい「へー」と思えるような、確率に関する小ネタが多数紹介されており面白い。
特に気になったのは、じゃんけんの確率の話。単純に考えると1/3なのではと思える、グー、チョキ、パーによるじゃんけんの勝率だが、実際に実験してみたところ以下の結果になったのだとか。
- パーが勝つ確率(グーが出る確率):35%
- チョキが勝つ確率(パーが出る確率):33%
- グーが勝つ確率(チョキが出る確率):32%
グーの指の形がもっとも、つくりやすいってことがあるのかな。
確率の基本法則を学ぼう
2時間目の「確率の計算の基本をマスターしよう」からは、いよいよ確率についての数学的な部分に切り込んでいく。登場する定理は以下の通り。
- 数学的確率(求める場合の数/おこりうるすべての場合の数)
- 大数の法則(何度も繰り返すと理論的な確率に近づく)
- 乗法定理(AとBがともに起こる確率=Aが起こる確率×Bが起こる確率)
- 加法定理(AまたはBが起こる確率=Aが起こる確率+Bが起こる確率)
- 余事象(Aが起こらない確率=1-Aが起こる確率)
- 順列(n個からr個を選んで並べる順列)
- 組み合わせ(n個からr個を選ぶときの場合の数)
いずれも確率において、基本中の基本とも言える概念なので、ここはしっかり理解しておきたいところ。図やイラストを駆使して、とにかくわかりやすく書いてくれているので、根気よく読めば理解できるのではないかと思う。
確率の世界の有名な問題に挑戦!
最終章の、3時間目「もっとむずかしい確率を考えよう!」は応用編である。これまでに学んだ理論を使って、確率の世界ではよく知られた有名な難問に挑戦していく。
ここでは次の概念が登場する。
- 期待値(起こり得るすべての事象について、それぞれの事象が起こる確率と、その事象が起きたときに得られる値をかけ、足し合わせたもの)
- 条件つき確率(Bが起こった条件のもとでAが起こる確率)
取り上げられる主な話題はこんな感じ。
- 「20回に1回全額返金」は「5%還元」と同じ?
- ジャンボ宝くじ、連番とバラのどちらを買うべき?
- ポーカーのノーペアの確率は50%
- 期待値無限大!サンクトペテルブルクのパラドックス
- 互角の日本シリーズが最終戦までもつれる確率は、3割程度
- ベストな結婚相手の選び方
- 30人クラスに同じ誕生日の二人がいる確率は70%くらい
- 迷惑メールの判別にも条件つき確率
- 数多くの数学者を悩ませたモンティ・ホール問題
興味を引きそうな、有名な事例が多数紹介されているので、内容的にはちょっと難しいのだが、最後まで無理なく読み進められるようになっている。
ただ、「モンティ・ホール問題」は、お恥ずかしい話だがわたしの残念な文系脳では、理解が出来なかった。
実際に計算してみよう
以上、ざっくりとではあるが『文系のためのめっちゃやさしい確率』の内容をご紹介した。本書を読むにあたっては、実際に自分で計算して、手を動かして学ぶことを強くお勧めする。一部の理系的なセンスのある人間以外は、こうした数学的な知識は、実体験として取り組むことでしか身につけることはできない。
どうしてその回答が得られるのか。自分なりに悩んで、結論を導き出すことで、ゆっくりとではあるが確実に知識は血肉となってくるはずだ。
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