SEOを意識した文章を書きたい方へ
2016年刊行。筆者の松尾茂起(まつおしげおき)は1978年のWebプロデューサ。Webプランニングチーム「ウェブライダー」代表取締役。作曲家、ピアニストとしても活動をしている人物である。
2019年に改訂を施した第二版が登場しており、わたしが読んだのはこちら。変化の速いWeb業界ではこうして小まめな改定を入れてくれるのはありがたい。
あらすじ
宿泊客の減少。外資タイパイ社の営業妨害。老舗の温泉旅館みやび屋の宮本サツキ、ムツミ姉弟は苦悩していた。インターネットでのブログ活動に活路を見出した二人だったが、書いた記事は一向に上位表示されない。そんな中、みやび屋に一人の男が訪れる。彼こそは伝説のWebマーケッター、ボーン・片桐その人であった。
この書籍で学べる事
あらすじ?ストーリーがあるのかよ!と、驚いた方も多いかもしれないが、本書は「SEOのためのライティング」について、ストーリー仕立てで学べる一冊となっている。
本書で学べる内容は以下のとおり。
- SEOを意識したコンテンツの作り方
- 他者にはない独自の強みをいかに活かすか
- わかりやすい文書を書くためのポイント
- 論理的思考をSEOにどうやって結びつけるか
- オウンドメディアに必要なSEO的思考について
- SEOに強いライターの育成法
- バズに繋がるコンテンツ作成のコツ
600ページを超える大ボリュームにビビりそうになるのだが、イラストを多用した会話形式で全体が進行するので、テンポよくサクサク学べる。
章の前半がストーリーモード、後半がおさらいのまとめとなっている。そのため、再読時には後半のまとめパートだけ読めば要点はいつでも確認できる仕組みになっている。これは使いやすい。
ブログ初心者におすすめ
本書の帯のコピーから引用させていただくが、ブログ初心者で、以下のような悩みを持っている方に、本書は有効ではないかと思われる。
- 検索エンジンに評価される記事を作りたい!
- わかりやすい文書が書けない!
- 書いても書いても成果が出ずに困っている!
この三つのテーマに対しての回答が、前半の一章~四章にかけて書かれている。
ただ、後半に書かれている「オウンドメディアに必要なSEO的思考」や、「SEOに強いライターの育成法」については、初心者レベルではまだ早いテーマ(というか、そこまでやる個人は少ないと思う)に思えたので、読むだけ読んでおいて、まずは前半部分が身についてから再度意識するような流れで良いかと思う。
他者にはない独自の強みをいかに活かすか
他者にはない独自の強みを、本書ではUSP(Unique Selling Proposition)と呼んでいる。ブログにとって独自の強みがあると、以下の二つの点で意義が出てくる。
- 競合に真似されにくい
- 競合と同じステージで戦わずに済む
仮にブログの内容が「サービス比較系」なのであれば、必要な要素は以下となる。
- どのサイトよりもユーザが知りたい情報を的確に返す
- どのサイトよりもユーザが抱えると思える「疑問」や「悩み」に関して「先回り」して答えを返す
- どのサイトよりもユーザが知りたい情報に素早くアクセスできる
- どのサイトよりも、見やすくわかりやすく情報を発信している
- どのサイトよりも信頼できる
- どのサイトよりも情報が新しいコンテンツ
ブログ全盛時代と呼ばれて久しいが、たいていのテーマは、既に書いている先行ブログが存在する。競合するテーマを扱うブログに対して、より読んでもらえるようにするにはどうすればいいのか。本書にはその答えが示されているのである。
また、本書では、ブログの書き手には独自の視点、ポリシーや理念が必要であると説く。大多数のブロガーは名も知れぬ一般人である。匿名の一般人が情報を発信したとしても、なかなか信用はされないであろう。だからこそ、情報の客観性や、一定の論理性、明確な根拠を示しながら文書を書くことが大切になってくるわけだ。
わかりやすい文書を書くために
わかりやすい文章とは何だろうか。いざ、問われてみるとなかなか即答は出来ないものである。本書では、わかりやすい文書を書くためのポイントとして以下の三点を挙げている。
- 感情表現を入れ、自分事(じぶんごと)化による共感を誘発する
書いてある内容が読者にとって、自分に関係のあることなのだと気がつかせてあげることが重要。文章に共感を感じさせることが出来れば、読者はその先も読みたいと思ってくれる。
例えば、転職についての記事を書いている時に「転職の方法についてお教えします」と書くよりも、「第二新卒の女性の転職について書きました」「定年退職後の男性の再就職について書きました」と書いた方が、よりターゲットが明確化されて対象ユーザにとって読んでもらいやすくなるわけだ。
- 伝えたいことがきちんと伝わるよう、見やすさ、わかりやすさにこだわる
二番目は、見やすさ、読みやすさの問題である。本書では以下、11項目もの注意点を列挙している。読んでいて、ああ、これ出来てないなと思うことがずいぶんあって反省……。
- 改行と行間に気を配り、心地よいリズムを意識する
- 漢字とひらがの含有率を調整
- 指示代名詞を減らす
- 箇条書きを使い要点整理する
- 情報をカテゴライズして整理する
- いらない言葉や表現はカットする。
- 感情表現を入れ、自分事化による共感を誘発する
- 文字のサイズや色、強調のルールに気を配る
- 区切り線や記号を使う
- 写真やイラストを挿入する
- マンガ的な演出を入れる
- ファーストビュー(冒頭文)で伝えたいことをまとめる
三つ目は冒頭文、書き出しの文章の重要さである。ここでのポイントは以下の五点。
- 記事の更新日を入れる
- 誰に向けて書かれたのかを明確にする
- 内容を簡潔に要約
- ページ内リンクとしての目次
- 話者を明らかにする
本ブログでは全然できていないことばかりで頭が痛い……。今後は要改善である。
ブログ文章の基本が学べる一冊
以上、ザックリではあるが、『沈黙のウェブライティング』の概要をお届けした。後半のオウンドメディアや、ライター育成法については、本書を手に取るような読者にとってはまだ早いように思えたので、今回の記事ではあえてとりあげていない。
前半部の四章までを読むだけでも、ブログ初心者の方にとっては大きな助けとなるはずである。いくら書いても、なかなかアクセスが増えない。Google検索で上位ページに表示されない。そんな悩みを持っている方には、是非おススメしたい一冊である
なお、本書については太っ腹なことにかなりの部分がウェブで公開されている(各章後半のまとめ部分は書籍のみ)。書籍を買う前に、ざっと読んでみたい方はこちらをどうぞ。
文章力をつけたい方にはこちらもおススメ