十字軍から生まれた修道騎士団
1994年刊行。筆者の橋口倫介(はしぐちともすけ)は1921年生まれの歴史学者で、上智大学出身で、教授、学長まで務められた方である。2002年に他界されている。
本書のオリジナルは近藤出版社より1971年に刊行された『騎士団』である。講談社学術文庫から23年ぶりの復刊ということになる。
十字軍を扱った翻訳作品が他にいくつかある。1954年のルネ・グラッセの『十字軍』。
1977年のレジーヌ・ペルヌー『テンプル騎士団』本書と内容も被る。
ご自身の著作としては、1974年の岩波新書『十字軍 その非神話化』がある。この世界ではもはや「古典」と言っていい作品である。わたしが学生時代に、十字軍に興味を持って最初に読んだのがこの本だったように記憶している。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
西欧中世史が好きな方、「十字軍」の歴史に詳しくなりたい方、塩野七生ファンの方、テンプル騎士団!聖ヨハネ騎士団!と聞くだけでワクワクしてきてしまう方におススメ。
内容はこんな感じ
十字軍の発生と共に誕生した修道騎士団。騎士と修道士の両面を兼ね備え、いずれの王権にも属さない勢力として、強大な権力を持つまでに至る。悲劇的崩壊を遂げたテンプル騎士団と現代まで存続しえた聖ヨハネ騎士団。対照的な運命を辿った両者の興亡を十字軍運動の盛衰と絡めつつ描く。
国家に匹敵する力を持った騎士団の存在
世界史の授業で名前くらいは聞いたことがあったのだが、いまひとつその実情が良くわからなかったのがこの修道騎士団である。どの国家にも属さない武装勢力が何故かくも権力を持つことが出来て、領土まで有していたのか。本書では数ある修道騎士団の中から最も著名な二大騎士団について、その歴史から組織の概要まで幅広く解説しており、門外漢の一般人でも楽しく読むことが出来た。
明暗分かれたテンプル騎士団と聖ヨハネ騎士団
十字軍運動の変容。教皇権力と王権の対立。こうした時代の変化の中で、かつて比類なき勢力を誇ったテンプル騎士団が、フランス王家によって解体され、異端として処刑されるまでに至った経緯はとても興味深かった。一方で、聖ヨハネ騎士団(マルタ騎士団)が、現在まで存続しているというのも驚きであった。このテーマで是非佐藤賢一あたりに1冊小説を書いて欲しいところだ。
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