ビズショカ(ビジネスの書架)

ビジネス書、新書などの感想を書いていきます

4つ★(おススメ!)

『決算書のトリセツ』前田忠志 決算書くらいは読めるようになりたいあなたに

決算書が読めないコンプレックスをなんとかしたい 社会人一年目頃、研修の一環として簿記三級の資格を取りましょうという勉強会があった。最初の何回かだけ通ったものの、あとは日々の忙しさにかまけて脱落してしまった。同期で、ちゃんと合格したのは経理配…

『徒然草』兼好・島内裕子訳/校訂 日本三大随筆のひとつを現代語訳と併せて通読できる

あけましておめでとうございます。 今週のお題「2024こんな年だった・2025こんな年にしたい」に便乗。 昨年は大河ドラマの影響で、平安時代や日本の古典文学に沼った一年だった。その影響は今年も続く予定。その一環として、本日はこちらの作品をご紹介した…

『ヨハネ受難曲』礒山雅の遺稿となった入魂の「ヨハネ」考察本

礒山先生の遺作 2020年刊行。筆者の礒山雅(いそやまただし)は1946年生まれの音楽学者。残念ながら2018年に不慮の事故で亡くなられている。 遺稿となったのが本書で、国際基督教大学名誉教授である伊東辰彦(いとうたつひこ)が校訂し刊行にまでこぎつけて…

『女たちの平安後期―紫式部から源平までの200年』榎村寛之 藤原詮子、彰子からはじまった女院権力の変遷

平安時代の後期を概観 2024年刊行。筆者の榎村寛之(えむらひろゆき)は1959年生まれの研究者。三重県立斎宮歴史博物館で学芸員を務めている方。 中公新書としては2017年の『斎宮―伊勢斎王たちの生きた古代史』、2023年の『謎の平安前期―桓武天皇から『源氏…

『更級日記』菅原孝標女・江國香織訳 『源氏物語』に憧れた女の一生

河出文庫古典新訳コレクションの一冊として 2016年刊行作品。先日ご紹介した『土左日記』と同様に、池澤夏樹(いけざわなつき)による個人編集版「日本文学全集(全30巻)」の第3巻に収録されている作品。『更級日記』『土左日記』以外に、『竹取物語』『伊…

『ヤンキーと地元』打越正行 解体屋、風俗経営、ヤミ業者として生きる沖縄の若者たち

社会学者の参与観察から生まれた一冊 2019年刊行。筆者の打越正行(うちこしまさゆき)は1979年生まれの社会学者。現在は、和光大学現代人間学部の専任講師、社会理論・動態研究所の研究員を務めている人物。 ヤンキーと地元 (単行本) 作者:打越 正行 筑摩書…

『死者の花嫁 葬送と追憶の列島史』佐藤弘夫 死後、人はどこにいくのか?

日本人の死生観って? 2015年刊行。筆者の佐藤弘夫(さとうひろお)は1953年生まれの、歴史、宗教学者、思想家。東北大学の名誉教授。 死生観について考える、同著者の関連本としてはこちらの三冊がある。 人は死んだらどこへ行けばいいのか: 現代の彼岸を歩…

『ヴィクトリア朝時代のインターネット』トム・スタンデージ モールス符号による即時の情報伝達が世界を変えた

トム・スタンデージの第一作 オリジナルの英国版は1998年に刊行されており、原題は『The Victorian Internet』。筆者のトム・スタンデージ(Tom Standage)は1969年生まれのジャーナリスト。本作が初著作となる。他にも、『謎のチェス指し人形「ターク」』や『…

『枕草子』清少納言・酒井順子訳 ほとばしる定子への賛美、中関白家のこぼれ話も愉しい!

河出の「日本文学全集」版が文庫化 2016年刊行作品。池澤夏樹(いけざわなつき)による個人編集版「日本文学全集(全30巻)」の第7巻として刊行された。『枕草子(まくらのそうし)』だけではなく、『方丈記(ほうじょうき)』(高橋源一郎訳)、『徒然草(…

『13歳からのアート思考 「自分だけの答え」がみつかる』末永幸歩 VUCA時代を生き抜くために

発行部数17万部超のベストセラー本 2020年刊行。筆者の末永幸歩(すえまつゆきほ)は武蔵野美術大学を経て、東京学芸大学の教育学研究科へ。現在は、東京学芸大学の個人研究員兼、中学・高校の美術教諭として活躍している人物。 帯の「薦」には、藤原和博、山…

『ある行旅死亡人の物語』武田惇志・伊藤亜衣 他者の人生を覗き見る罪深さを考える

1200万PVをたたき出した記事の書籍化 2022年刊行。筆者のふたりは共同通信社の記者。そのうちのひとり武田惇志が、記事になるネタはないかと官報を読んでいた本件にぶち当たった。 書籍化される前にネットでも記事になり、とても話題になったので、記憶に残…

『殴り合う貴族たち』繁田信一 藤原実資「小右記」から読む平安貴公子のご乱行

素行の悪い平安の貴公子たち 筆者の繁田信一(しげたしんいち)は1068年生まれの歴史学者。神奈川大学の日本常民文化研究所で特別研究員をされている方。 単行本版は2005年刊行。この時は副題として「平安朝裏源氏物語」が付されていた。 殴り合う貴族たち: …

『謎の平安前期―桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年』榎村寛之 多様な可能性が存在した平安時代の前半分

平安時代の前期には何があったのか? 2023年刊行。筆者の榎村寛之(えむらひろゆき)は1959年生まれの研究者。三重県立斎宮歴史博物館で学芸員を務めている方。 勤め先からも想像がつくとおり、伊勢斎宮研究の専門家で、関連著作がいくつもある。当ブログで…

『壱人両名 江戸日本の知られざる二重身分』尾脇秀和 身分制度の常識を覆す

江戸時代の秩序観を知る一冊 2019年刊行。筆者の尾脇秀和(おわきひでかず)は1983年生まれ。神戸大学経済経営研究所の研究員。佛教大学の非常勤講師。専門は日本近世史。 その他の著作に、2014年の『近世京都近郊の村と百姓 』、2018年の『刀の明治維新: 「…

『ガザに地下鉄が走る日』岡真理 「絶望の山」から「希望の石」を切り出す鑿として

パレスチナの歴史を知るために 2018年刊行。筆者の岡真理(おかまり)は1960年生まれの学者。専門は現代アラブ文学、パレスチナ問題、第三世界フェミニズム思想。京都大学名誉教授、早稲田大学文学学術院文化構想学部教授。 東京外大のアラビア語科を卒業後…

『書評の仕事』印南敦史 読者のニーズに応え、的確な要約を書く技術とは?

書評ブログで何を書いていいかわからないあなたへ ブログで主として書評を書かれている皆さま(わたしのことである)。思ったような文章が書けているだろうか。そして狙ったような反応は得られているだろうか。何を書いていいのか分からない。書いても全く読…

『椿井文書(つばいもんじょ)』馬部隆弘 日本最大級の偽文書の正体

偽史が発生するメカニズムを知る 2020年刊行。筆者の馬部隆弘(ばべたかひろ)は1976年生まれの歴史学者。大阪大谷大学の准教授で、戦国期権力論、城郭史、偽文書研究で知られる人物。本書で一気に知名度があがった。やはり中公新書で出てくると影響力が大き…

『カルト資本主義』斎藤貴男 オカルトにハマった日本の大企業

オカルトが支配する日本の企業社会 筆者の斎藤貴男(さいとうたかお)は1958年生まれの、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。 本書はまず、1997年に文藝春秋から単行本として上梓された。その後、2000年に文春文庫化版が刊行されている。 カルト資本主義…

『勘定奉行の江戸時代』藤田覚 勘定奉行で学ぶ江戸幕府の財政史

勘定奉行から江戸時代を読み解く 2018年刊行。筆者の藤田覚は1946年生まれ。東京大学の史料編纂所の教授を2010年に定年で退官し、現在は同大の名誉教授。専門は日本近世史。江戸時代に関する著作が20冊ほど刊行されている。 内容はこんな感じ 江戸時代に活躍…

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり 平安の格差社会を生き抜いた紫式部が『源氏物語』に込めた想い

大塚ひかりの「源氏本」が出た! 2023年刊行。筆者の大塚ひかりは1961年生まれの古典エッセイスト。 わたしが初めて大塚作品を読んだのは草思社の『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』から。新潮新書の『女系図でみる驚きの日本史』はこのブログ…

2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

既に2024年の1月も後半に入っている状況で、遅きに失した感が無きにしもあらずだが、恒例の〇〇年に読んで面白かった本企画をお届けしたい。 なお、あくまでも2023年に読んだ本が対象であって、2023年に刊行された本ではないのでその点はご容赦を。 では、今…

『陸の深海生物 日本の地下に住む生き物』小松貴 知られざる地下生物140種を紹介した魅惑の生物図鑑

2023年刊行。筆者の小松貴(こまつたかし)は1982年生まれ。信州大学大学院博士課程修了、国立科学博物館協力研究員のキャリアを経て、現在は在野の昆虫学者として活躍している人物。 現在までに、以下の著作がある。 裏山の奇人:野にたゆたう博物学(2014…

『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』三宅香帆 「言葉の発信力」を上げたい人へ

バズったことがないあなたに お恥ずかしい話だが、Twitterを10数年、ブログを20年近くやっているが、バズりを体験したことがない。扱うテーマが地味なのか、文体や見出しの問題なのか、それとも書き手のキャラクターのせいなのか。 あなたは、Twitterやブロ…

『ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った女>たち』川本静子 生計のために住み込みの家庭教師となった女性たち

中公新書版が再刊されたみすず版を読んだ 筆者の川本静子(かわもとしずこ)は1933年生まれの英文学者。津田塾大学の教授職を務め、2004年に退官。2010年に逝去されている。専門は19世紀~20世紀のイギリス文学。 『ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った…

『千葉からほとんど出ないひきこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』済東鉄腸 情熱と生存戦略と他者からの承認

タイトルが長い! 2023年刊行。筆者の済東鉄腸(さいとうてっちょう)は1992年生まれの映画ライター、作家。本書の題名にある通り、ルーマニアへの渡航歴がないにもかかわらず、日本国内にてルーマニア語の小説を書き、ルーマニア人向けに発表し続けている稀…

『遅いインターネット』宇野常寛 21世紀の共同幻想論

「遅い」インターネットがなぜ必要なのか 2020年刊行。筆者の宇野常寛(うのつねひろ)は1978年生まれの作家、評論家。解説は成田悠輔(なりたゆうすけ)が書いている。 遅いインターネット(NewsPicks Book) 作者:宇野 常寛 幻冬舎 Amazon 宇野常寛のデビュ…

『日本民俗学概論』福田アジオ・宮田登/編 民俗学について学びたい初学者は読んでおきたい一冊

民俗学に興味を持ったら読みたい一冊 1983年刊行。編者は日本民俗学の権威、福田(ふくた)アジオ、宮田登(みやたのぼる)の両名。福田アジオは1941年生まれ、そして宮田登は1936年生まれの民俗学者(2000年に物故)。 1983年と40年も前に刊行された著作だ…

『悪魔の布 縞模様の歴史』ミシェル・パストゥロー ストライプをめぐる文化論

縞模様好き必読の一冊 1993年刊行。オリジナルのフランス版の原題は『L' étoffe du diable』で1991年刊行。筆者のミシェル・パストゥローは1947年生まれのフランス人研究者。紋章学を主要な研究ジャンルとしているが、幅広い分野で活躍をしている人物である。…

『死に山 世界一不気味な遭難事故 ディアトロフ峠事件の真相』ドニー・アイカー 2023年度文庫ベストテンの第一位

謎に満ちたディアトロフ峠事件を描く 2018年刊行作品。オリジナルの米国版は2013年刊行。原題は「dead mountain」。筆者のドニー・アイカー(Donnie Eichar)はアメリカ人の映画プロデューサー、作家。 死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》…

『足利将軍たちの戦国乱世』山田康弘 室町幕府は何故存続し、何故滅びたのか?

応仁の乱後、七人の将軍はどう生きたか? 2023年刊行。筆者の山田康弘(やまだやすひろ)は1966年生まれの歴史学者。専門は日本中性子。現在は東京大学史料編纂所の学術専門職員。ちなみに考古学者の山田康弘(東京都立大教授)とは同姓同名の別人みたい。 …