ビズショカ(ビジネスの書架)

ビジネス書、新書などの感想を書いていきます

新書

『刀伊の入寇 平安時代、最大の対外危機』関幸彦 女真族の襲来と軍事貴族たちの台頭

三年前の記事ですが、大河ドラマ『光る君へ』で、刀伊の入寇が映像化されるようなので、上げておきます。刀伊の入寇のようなマニアックなイベントがドラマ化されるとは!その場に紫式部が居たとは思えないけど、今年の大河ドラマは面白いです。 平安時代の異…

『ネット怪談の民俗学』廣田龍平 ネット怪談の生成と受容、そして新たな恐怖のカタチ

民俗学者によるネット怪談のアプローチ 2024年刊行。筆者の廣田龍平(ひろたりゅうへい)は1983年生まれの研究者。専攻は文化人類学、民俗学。法政大学ほかの大学で非常勤講師を務めている方。 早川書房による感想まとめ記事はこちら。 廣田龍平の著作はこち…

『人口減少時代の再開発 「沈む街」と「浮かぶ街」』NHK取材班 タワマンの建設ラッシュが起きているのは何故?

NHKスペシャルを書籍化 2024年刊行。2024年に放映されたNHKスペシャル「まちづくりの未来~人口減少時代の再開発は~」及び、クローズアップ現代「再開発はしたけれど 徹底検証・まちづくりの"落とし穴"」、首都圏情報ネタドリ内の「急増!"駅前・高層"再開…

『若者殺しの時代』堀井憲一郎 若者であることが決して得にはならない時代

ゼロ年代に書かれた「若者」論 2006年刊行。筆者の堀井憲一郎(ほりいけんいちろう)は1958年生まれのライター、コラムニスト。思いっきりバブルを謳歌出来た世代だな。テレビやラジオにも時々顔を出していた人物らしい。「週刊春秋」誌に連載されていた「ホ…

『なぜガザは戦場になるのか イスラエルとパレスチナ攻防の裏側』高橋和夫

高橋先生のガザ本が出た! 2024年刊行。筆者の高橋和夫(たかはしかずお)は1951年生まれの国際政治学者。放送大学の元教授(現在は名誉教授)。中東領域を主な研究対象としている。昨今のパレスチナ情勢を踏まえ、解説者としてテレビ出演されていることも多…

『50歳からのむなしさの心理学』榎本博明 「むなしさ」をきっかけに前を向く方法

中高年を襲う「むなしさ」 40代後半~50代前半の方に伺いたいのけれども、近頃こんなむなしい思いに囚われたことはないだろうか。 やる気が出なくなった 仕事への情熱がなくなった 自分に自信が持てなくなった このままでいいのか焦る 自分らしく生きていな…

『大江戸死体考―人斬り浅右衛門の時代』氏家幹人 大都市江戸のアンダーワールド

江戸のアンダーワールドを知る 1999年刊行。筆者の氏家幹人は1954年生まれの歴史学者。朝日カルチャーセンター掲載のプロフィールによると国立公文書館で勤務されていた方らしい。講談社現代新書の『武士道とエロス』『江戸の性風俗』など、江戸時代について…

『日本の偽書』藤原明 荒唐無稽なものに人は魅せられる

六冊の偽書をとりあげる 2004年刊行。筆者の藤原明(ふじわらあきら)は1958年生まれのノンフィクションライター。古今有名な六つの偽書を題材に、怪しげな文献が制作者の意図すらも越えていつのまにか一人歩きしていく謎について、新書のボリュームでコンパ…

『土葬の村』高橋繁行 滅びゆく弔いの習慣

筆者は死と弔いに豊富な知見を持つ 2021年刊行。筆者の高橋繁行(たかはししげゆき)は1954年生まれのルポライター。『ドキュメント現代お葬式事情』『葬祭の日本史』など、人間の死、葬式、葬祭儀礼に関連した著作を何冊か他にも上梓している。 この本で得…

『体験格差』今井悠介 子どもたちの間に「体験」の格差が広がっている

2024年刊行。筆者の今井悠介(いまいゆうすけ)は1986年生まれ。東日本大震災をきっかけに、生活困窮家庭の子どもたちの学びを支援する公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンを設立。今回の『体験格差』が初めての著作となる。 Webメディアの現代ビジネス…

『秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』 昭和30年代をカラー写真で楽しめる

昭和30年代の光景をカラーで見ることが出来る 今回紹介するのは、昭和30年代の日本の光景を切り取った貴重なカラー写真集。この時代の写真といえば、ほぼモノクロ写真であっただけに、カラー写真の表現力、再現力の凄さを感じさせてくれる一冊だ。 このシリ…

『天井のない監獄 ガザの声を聴け』清田明宏 UNRWA保健局長による2010年代のガザの実情

UNRWAの保健局長が書いたガザの実情 集英社のWebメディア「集英社新書プラス」に2017年7月~2018年9月にかけて連載された「ガザの声を聴け!」をベースに書籍化したもの。 2019年刊行。筆者の清田明宏(せいたあきひろ)は1961年生まれの医師。世界保健機関…

『謎の平安前期―桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年』榎村寛之 多様な可能性が存在した平安時代の前半分

平安時代の前期には何があったのか? 2023年刊行。筆者の榎村寛之(えむらひろゆき)は1959年生まれの研究者。三重県立斎宮歴史博物館で学芸員を務めている方。 勤め先からも想像がつくとおり、伊勢斎宮研究の専門家で、関連著作がいくつもある。当ブログで…

『「おりる」思想 無駄にしんどい世の中だから』飯田朔 生きていくのが少し楽になる考え方

飯田朔、初の著作集 2024年刊行。Webメディア「集英社新書プラス」に連載されていた記事をまとめたもの。筆者の飯田朔(いいださく)は1989年生まれ。本書が初めての著作となる。 早稲田大学在学中に引きこもりとなり、卒業後は学習塾で七年働き、その後一年…

『書評の仕事』印南敦史 読者のニーズに応え、的確な要約を書く技術とは?

書評ブログで何を書いていいかわからないあなたへ ブログで主として書評を書かれている皆さま(わたしのことである)。思ったような文章が書けているだろうか。そして狙ったような反応は得られているだろうか。何を書いていいのか分からない。書いても全く読…

『椿井文書(つばいもんじょ)』馬部隆弘 日本最大級の偽文書の正体

偽史が発生するメカニズムを知る 2020年刊行。筆者の馬部隆弘(ばべたかひろ)は1976年生まれの歴史学者。大阪大谷大学の准教授で、戦国期権力論、城郭史、偽文書研究で知られる人物。本書で一気に知名度があがった。やはり中公新書で出てくると影響力が大き…

『中流危機』NHKスペシャル取材班 中流層没落の原因と再生のための処方箋は?

NHKスペシャルを書籍化 2023年刊行。2022年9月に放映された「NHKスペシャル”中流危機”を超えて」をベースに、書籍としてまとめたもの。最近はこの手の、テレビで放映した内容を本にしました!的なものが多くなってきた気がする。 映像はNHKオンデマンドで現…

『勘定奉行の江戸時代』藤田覚 勘定奉行で学ぶ江戸幕府の財政史

勘定奉行から江戸時代を読み解く 2018年刊行。筆者の藤田覚は1946年生まれ。東京大学の史料編纂所の教授を2010年に定年で退官し、現在は同大の名誉教授。専門は日本近世史。江戸時代に関する著作が20冊ほど刊行されている。 内容はこんな感じ 江戸時代に活躍…

2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

既に2024年の1月も後半に入っている状況で、遅きに失した感が無きにしもあらずだが、恒例の〇〇年に読んで面白かった本企画をお届けしたい。 なお、あくまでも2023年に読んだ本が対象であって、2023年に刊行された本ではないのでその点はご容赦を。 では、今…

『50代からの人生戦略』佐藤優 いまある武器をどう生かすか

50代をどうすごすかで人生は決まる! 2020年刊行。筆者の佐藤優(さとうまさる)は1960年生まれ。元外務省勤務で主任分析官。ロシア事情に精通し、鈴木宗男に関する一連の事件で逮捕、起訴。有罪判決を受け退職。その後作家業に転身し、多くのヒット作を生み…

『ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った女>たち』川本静子 生計のために住み込みの家庭教師となった女性たち

中公新書版が再刊されたみすず版を読んだ 筆者の川本静子(かわもとしずこ)は1933年生まれの英文学者。津田塾大学の教授職を務め、2004年に退官。2010年に逝去されている。専門は19世紀~20世紀のイギリス文学。 『ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った…

『安いニッポン 「価格」が示す停滞』中藤玲 ディズニーもダイソーも日本が世界最安値

日本は「安い」らしい コロナ禍のため現在では見る影もないが、2019年までの日本国内は外国人観光客であふれていた。爆買いというフレーズが話題になったのも記憶に新しい。 日本もこんなにたくさんの外国人の方に来ていただけるようになったのかと、当時は…

『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか』高橋杉雄/編著 アイデンティティをめぐる戦いには落としどころが無い

ウクライナ戦争の終わらせ方を考える 2023年刊行。高橋杉雄(たかはしすぎお)は1972年生まれ。防衛省防衛研究所防衛政策研究室の室長を務める人物。ウクライナ戦争がはじまってからテレビに出ずっぱりなので、ご存じの方も多いのではないかと。 本書では、…

『デジタル・ポピュリズム』福田直子 SNSが加速する衆愚制への道

SNS全盛時代の世論操作術 2018年刊行。筆者の福田直子はドイツ在住のジャーナリスト。 本書では、ネットが当たり前になった時代、特にSNS全盛時代のポピュリズムの危険性を指摘している。 ポピュリズムとは聞きなれない言葉かもしれないが、wikipediaから当…

『足利将軍たちの戦国乱世』山田康弘 室町幕府は何故存続し、何故滅びたのか?

応仁の乱後、七人の将軍はどう生きたか? 2023年刊行。筆者の山田康弘(やまだやすひろ)は1966年生まれの歴史学者。専門は日本中性子。現在は東京大学史料編纂所の学術専門職員。ちなみに考古学者の山田康弘(東京都立大教授)とは同姓同名の別人みたい。 …

『問題はロシアより、むしろアメリカだ』池上彰×エマニュエル・トッド 第三次世界大戦に突入した世界

対談形式でウクライナ戦争を語る 2023年刊行。日本人ジャーナリスト池上彰(いけがみあきら)と、フランス人の歴史人口学者・家族人類学者のエマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)による対談本。 対談はオンラインで行われ、三日間、計八時間に及んだとのこと…

『ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』服部正也 46歳で超赤字国家の経済を再建した日本人がいた

50年売れ続けているロングセラー オリジナル版の『ルワンダ中央銀行総裁日記』は1972年刊行。同年の毎日出版文化賞の文学・芸術部門を受賞している。およそ、半世紀前。かなり昔に刊行された中公新書である。 2009年に新章が追加された「増補版」が登場し、20…

『読書する人だけがたどりつける場所』齋藤孝 わかりやすい言葉で読書の意義を教えてくれる一冊

ネット全盛の時代に「本を読む」理由とは? 2019年刊行作品。筆者の齋藤孝は1960年生まれ。明治大学文学部の教授で、教育学者。非常に多くの著作があるが、代表作は 『声に出して読みたい日本語』あたりかな。 って、書いてて既視感あるなと思ったら、以前に…

『感染症の日本史』磯田道史 日本人はいかにパンデミックと対峙してきたか

歴史から学ぶ、感染症の教訓 2020年刊行。筆者の磯田道史(いそだみちふみ)は1970年生まれの歴史学者。国際日本文化研究センターの准教授。NHKなど、テレビでの出演も多く、顔を見れば「ああこの人か」と思う方は多いのではないだろうか。 代表作としては、…

『日本の国境』山田吉彦 領土問題の歴史的経緯を学ぶ

海洋問題の専門家が書いた日本の領土問題 2005年刊行。筆者の山田吉彦(やまだよしひこ)は1962年生まれ。本書の刊行当時は日本財団(日本船舶振興会)の海洋船舶部長を務めていた。その後、東海大学の海洋学部で、准教授、教授と順当にキャリアを積まれ、現…