ビズショカ(ビジネスの書架)

ビジネス書、新書などの感想を書いていきます

『「働かないおじさん問題」のトリセツ』難波猛 「働かないおじさん」問題を解決する方法を考える

「働かないおじさん」はいつごろから登場したのか 近年、目にすることが多くなったこの言葉だが、いつごろから言われ始めたのか、軽くググってみたところ、比較的古い記事では東洋経済のこちらが発見された。人事コンサルタント楠木新(くすのきあらた)によ…

『刀伊の入寇 平安時代、最大の対外危機』関幸彦 女真族の襲来と軍事貴族たちの台頭

三年前の記事ですが、大河ドラマ『光る君へ』で、刀伊の入寇が映像化されるようなので、上げておきます。刀伊の入寇のようなマニアックなイベントがドラマ化されるとは!その場に紫式部が居たとは思えないけど、今年の大河ドラマは面白いです。 平安時代の異…

『更級日記』菅原孝標女・江國香織訳 『源氏物語』に憧れた女の一生

河出文庫古典新訳コレクションの一冊として 2016年刊行作品。先日ご紹介した『土左日記』と同様に、池澤夏樹(いけざわなつき)による個人編集版「日本文学全集(全30巻)」の第3巻に収録されている作品。『更級日記』『土左日記』以外に、『竹取物語』『伊…

『ヤンキーと地元』打越正行 解体屋、風俗経営、ヤミ業者として生きる沖縄の若者たち

文庫版が出たので情報反映しました! 社会学者の参与観察から生まれた一冊 2019年刊行。筆者の打越正行(うちこしまさゆき)は1979年生まれの社会学者。現在は、和光大学現代人間学部の専任講師、社会理論・動態研究所の研究員を務めている人物。 ヤンキーと…

『ネット怪談の民俗学』廣田龍平 ネット怪談の生成と受容、そして新たな恐怖のカタチ

民俗学者によるネット怪談のアプローチ 2024年刊行。筆者の廣田龍平(ひろたりゅうへい)は1983年生まれの研究者。専攻は文化人類学、民俗学。法政大学ほかの大学で非常勤講師を務めている方。 早川書房による感想まとめ記事はこちら。 廣田龍平の著作はこち…

『偽善系 やつらはヘンだ!』『偽善系II 正義の味方にご用心!』日垣隆 世に溢れる偽善者たちを叩きまくる

2000年刊行。本日は日垣隆(ひがきたかし)が2000代の前半に上梓した二冊の社会批判本をご紹介したい。日垣隆は1958年生まれの作家、ジャーナリスト、ノンフィクションライター。 1999年の『「買ってはいけない」は嘘である」』で第61回の文藝春秋読者賞を。…

『人口減少時代の再開発 「沈む街」と「浮かぶ街」』NHK取材班 タワマンの建設ラッシュが起きているのは何故?

NHKスペシャルを書籍化 2024年刊行。2024年に放映されたNHKスペシャル「まちづくりの未来~人口減少時代の再開発は~」及び、クローズアップ現代「再開発はしたけれど 徹底検証・まちづくりの"落とし穴"」、首都圏情報ネタドリ内の「急増!"駅前・高層"再開…

『若者殺しの時代』堀井憲一郎 若者であることが決して得にはならない時代

ゼロ年代に書かれた「若者」論 2006年刊行。筆者の堀井憲一郎(ほりいけんいちろう)は1958年生まれのライター、コラムニスト。思いっきりバブルを謳歌出来た世代だな。テレビやラジオにも時々顔を出していた人物らしい。「週刊春秋」誌に連載されていた「ホ…

『椅子クラフトはなぜ生き残るのか』坂井素思 椅子づくりから社会経済学を考える

放送大学の授業が書籍に 2020年刊行。筆者の坂井素思(さかいもとし)は1950年生まれの経済学者。現在は放送大学教養学部の名誉教授(刊行当時は教授)。 本書は、2020年から始まっている放送大学の講義『椅子クラフツ文化の社会経済学』の内容を書籍化した…

『科学的根拠に基づく 最高の勉強法』安川康介  アクティブリコールと分散学習、そして精緻的質問と自己説明

Youtubeで370万回以上再生された勉強法 2024年刊行。筆者の安川康介(やすかわこうすけ)は慶應の医学部卒で、日本とアメリカ両国での医師国家試験に合格。しかもアメリカの医師国家試験では上位1%以内の高得点をで合格し、数名しか選ばれない米ミネソタ大学…

『土左日記』紀貫之・堀江敏幸訳 虚と実の間をたゆたう五十五日の船旅

河出文庫古典新訳コレクションから! 2016年刊行作品。池澤夏樹(いけざわなつき)による個人編集版「日本文学全集(全30巻)」の第3巻として刊行された。『土左日記』以外に、『竹取物語』『伊勢物語』『堤中納言物語』『更級日記』を収録していた。 竹取物…

『なぜガザは戦場になるのか イスラエルとパレスチナ攻防の裏側』高橋和夫

高橋先生のガザ本が出た! 2024年刊行。筆者の高橋和夫(たかはしかずお)は1951年生まれの国際政治学者。放送大学の元教授(現在は名誉教授)。中東領域を主な研究対象としている。昨今のパレスチナ情勢を踏まえ、解説者としてテレビ出演されていることも多…

『死者の花嫁 葬送と追憶の列島史』佐藤弘夫 死後、人はどこにいくのか?

日本人の死生観って? 2015年刊行。筆者の佐藤弘夫(さとうひろお)は1953年生まれの、歴史、宗教学者、思想家。東北大学の名誉教授。 死生観について考える、同著者の関連本としてはこちらの三冊がある。 人は死んだらどこへ行けばいいのか: 現代の彼岸を歩…

『50歳からのむなしさの心理学』榎本博明 「むなしさ」をきっかけに前を向く方法

中高年を襲う「むなしさ」 40代後半~50代前半の方に伺いたいのけれども、近頃こんなむなしい思いに囚われたことはないだろうか。 やる気が出なくなった 仕事への情熱がなくなった 自分に自信が持てなくなった このままでいいのか焦る 自分らしく生きていな…

『方丈記(全)』鴨長明・武田友宏編 角川のビギナーズ・クラシックスで古典を読む

ビギナーズ・クラシックスを知っているか? 2007年刊行。角川ソフィア文庫からの刊行。同レーベルはKADOKAWAの角川学芸出版ブランドの取り扱い。主として古典文学関連の作品を多数出版している。 ビギナーズ・クラシックスは、角川ソフィア文庫から出ている、…

『ヴィクトリア朝時代のインターネット』トム・スタンデージ モールス符号による即時の情報伝達が世界を変えた

トム・スタンデージの第一作 オリジナルの英国版は1998年に刊行されており、原題は『The Victorian Internet』。筆者のトム・スタンデージ(Tom Standage)は1969年生まれのジャーナリスト。本作が初著作となる。他にも、『謎のチェス指し人形「ターク」』や『…

『大江戸死体考―人斬り浅右衛門の時代』氏家幹人 大都市江戸のアンダーワールド

江戸のアンダーワールドを知る 1999年刊行。筆者の氏家幹人は1954年生まれの歴史学者。朝日カルチャーセンター掲載のプロフィールによると国立公文書館で勤務されていた方らしい。講談社現代新書の『武士道とエロス』『江戸の性風俗』など、江戸時代について…

『枕草子』清少納言・酒井順子訳 ほとばしる定子への賛美、中関白家のこぼれ話も愉しい!

河出の「日本文学全集」版が文庫化 2016年刊行作品。池澤夏樹(いけざわなつき)による個人編集版「日本文学全集(全30巻)」の第7巻として刊行された。『枕草子(まくらのそうし)』だけではなく、『方丈記(ほうじょうき)』(高橋源一郎訳)、『徒然草(…

『13歳からのアート思考 「自分だけの答え」がみつかる』末永幸歩 VUCA時代を生き抜くために

発行部数17万部超のベストセラー本 2020年刊行。筆者の末永幸歩(すえまつゆきほ)は武蔵野美術大学を経て、東京学芸大学の教育学研究科へ。現在は、東京学芸大学の個人研究員兼、中学・高校の美術教諭として活躍している人物。 帯の「薦」には、藤原和博、山…

『日本の偽書』藤原明 荒唐無稽なものに人は魅せられる

六冊の偽書をとりあげる 2004年刊行。筆者の藤原明(ふじわらあきら)は1958年生まれのノンフィクションライター。古今有名な六つの偽書を題材に、怪しげな文献が制作者の意図すらも越えていつのまにか一人歩きしていく謎について、新書のボリュームでコンパ…

『「働き手不足1100万人」の衝撃』古屋星斗+リクルートワークス研究所 2040年の日本が直面する危機と“希望”

2024年刊行。筆者の古屋星斗(ふるやしょうと)は一橋大学大学院社会学研究科を経て、経済産業省に入り、その後リクルートワークス研究所の主任研究員に転じている人物。 本書は2023年3月にリクルートワークス研究所が発表した未来予測シミュレーションの結…

『土葬の村』高橋繁行 滅びゆく弔いの習慣

筆者は死と弔いに豊富な知見を持つ 2021年刊行。筆者の高橋繁行(たかはししげゆき)は1954年生まれのルポライター。『ドキュメント現代お葬式事情』『葬祭の日本史』など、人間の死、葬式、葬祭儀礼に関連した著作を何冊か他にも上梓している。 この本で得…

『体験格差』今井悠介 子どもたちの間に「体験」の格差が広がっている

2024年刊行。筆者の今井悠介(いまいゆうすけ)は1986年生まれ。東日本大震災をきっかけに、生活困窮家庭の子どもたちの学びを支援する公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンを設立。今回の『体験格差』が初めての著作となる。 Webメディアの現代ビジネス…

『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』スズキナオ なんでもない日々を少しぐらいは楽しく

スズキナオ初の単著 2019年刊行。筆者のスズキナオは1979年生まれ。Webメディア「デイリーポータルZ」「メシ通」などでの活躍が知られる、大阪在住のフリーライター。 同業者との共著で、『"よむ"お酒』『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』『酒…

『国のために死ぬのはすばらしい?』ダニー・ネフセタイ イスラエルからきたユダヤ人家具作家の平和論

イスラエルから日本にやってきたユダヤ人の平和論 2016年刊行。筆者のダニー・ネフセタイ(Dany Nehushtai)は1957年生まれのイスラエル人。イスラエルの高校を卒業後、徴兵でイスラエル空軍に三年間所属。その後、来日、日本人女性と結婚。日本で家具職人と…

『猫語の教科書』ポール・ギャリコ ネコが書いた、ネコのための本

猫のためのマニュアル本? オリジナルの米国版の原題は『The silent miaow』(原題からして既にかわいい)で、1964年の刊行。こちらの書影はペーパーバック版で1985年刊行。 Silent Miaow 作者:Gallico, Paul Three Rivers Press Amazon 日本語版は1995年に…

『ぼくの村は壁で囲まれた』高橋真樹 パレスチナ問題についての入門書として

パレスチナ問題の入門書として 2017年刊行。筆者の高橋真樹(たかはしまさき)は1973年生まれのノンフィクション作家。エネルギー問題、SDGs関連等、環境についての著作多数。 帯には放送大学教授(現在は退官されて名誉教授)の高橋和夫の推薦文が掲載され…

『紫式部の父親たち 中級貴族たちの王朝時代へ』繁田信一 書簡集『雲州消息』から平安朝を読み解く

繁田先生の本が面白い 2010年刊行。筆者の繁田信一(しげたしんいち)は1991年生まれの歴史学者。 2004年に吉川弘文館から出た『陰陽師と貴族社会』が最初の著作。以後、平安朝に関連した著作を二十作以上、世に送り出している。 大河ドラマ『光る君へ』にハ…

『現代アラブを知るための56章』松本弘・編著 アラブの各国を概観できるエントリー本

明石書店のエリア・スタディーズシリーズ 2013年刊行。編著者である松本弘(まつもとひろし)は1960年生まれの政治学者。大東文化大学、国際関係学部の教授。同氏をはじめとして二十名を超える中東地域の研究者たちが執筆陣として名を連ねている。 本書は明石…

『ある行旅死亡人の物語』武田惇志・伊藤亜衣 他者の人生を覗き見る罪深さを考える

1200万PVをたたき出した記事の書籍化 2022年刊行。筆者のふたりは共同通信社の記者。そのうちのひとり武田惇志が、記事になるネタはないかと官報を読んでいた本件にぶち当たった。 書籍化される前にネットでも記事になり、とても話題になったので、記憶に残…