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『大江戸死体考―人斬り浅右衛門の時代』氏家幹人 大都市江戸のアンダーワールド

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江戸のアンダーワールドを知る

1999年刊行。筆者の氏家幹人は1954年生まれの歴史学者。朝日カルチャーセンター掲載のプロフィールによると国立公文書館で勤務されていた方らしい。講談社現代新書の『武士道とエロス』『江戸の性風俗』など、江戸時代についての著作を多く書かれている。


 

本書については、2016年に『増補 大江戸死体考』として平凡社ライブラリー版が登場している(わたしは未読)。現在手に入るのはこちらの版であろう。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

江戸時代の刑罰について知りたい方、刑吏の歴史について知りたい方、山田浅右衛門について知りたい方におススメ!

内容はこんな感じ

死体を見ることそのものが極めてまれになってしまった現代社会に比べ、江戸時代の人々にとって、死体は生活にとても近い存在であった。大都市江戸を中心に、巷にあふれていた死体の数々を概説。多くの需要があったとされる様斬(ためしぎり)に焦点を当て、名高い首切り人として知られる、山田浅右衛門とその周辺について解説していく。

山田浅右衛門から読み解く「死体」考

刑吏モノとか死体モノは個人的にツボなのでなるべく読むようにしている。

本書は、江戸時代の死刑執行人として知られる山田浅右衛門を軸として、江戸時代における「死体」について考察していく一冊である。

山田家の歴代当主は代々「浅右衛門」を名乗り、浪人の立場でありながら、江戸期を通じて幕府より罪人の首斬り役を請け負っていた。首斬りには当然、高度な剣技が要求される。どんな時にでも確実に首を斬り落とさなくてはならないため、山田家では世襲はほとんど行われず、実力本位で弟子たちが家門を継承していった。

山田浅右衛門の役得

山田浅右衛門の興味深いところは、死刑執行後の役得として死体の扱いを任されていたことである。

処刑された罪人の死体は、様斬(ためしぎり)に使われたり、解体されて薬の原料にもなった。それ故、山田家の財政状態は江戸期を通じて非常に豊かであったらしい。様斬の薀蓄は知らないことが多くて面白かったし、屍肉に歯を立てて肝を奪い合う恐怖の風習「ひえもんとり」は正直今でも信じられない程驚かされた。

非常に興味深い「山田浅右衛門」という存在への突込みがやや浅いかなと思わないでもないが、この頁数ではやむを得ないところかな。

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