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『日本の偽書』藤原明 荒唐無稽なものに人は魅せられる

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六冊の偽書をとりあげる

2004年刊行。筆者の藤原明(ふじわらあきら)は1958年生まれのノンフィクションライター。古今有名な六つの偽書を題材に、怪しげな文献が制作者の意図すらも越えていつのまにか一人歩きしていく謎について、新書のボリュームでコンパクトにまとめた一冊。

 2019年には河出文庫版が登場。現在読むならこちらの方かな。


 

内容はこんな感じ

偽書は何故人々の心を惹き付けて止まないのか。記紀以前の書として古くから喧伝されてきた、「上記(うえつふみ)」「竹内文献(たけうちぶんけん)」「東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)」「秀真伝(ほつまつたえ)」「先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)」「先代旧事本紀大成経(せんだいくじほんぎたいせいきょう)」の六書を取り上げ、その発生から流布に至る過程、誰が作ったのか、そして現代に至るまで命脈を保ち続けてきたメカニズムを明らかにしていく。

偽書の生成と受容について

当然のことながら史学系の方たちにとっては偽書などというものは鼻持ちならない、胡散臭い存在でしかないのだと思う(そりゃそうだ)。しかしながら小説読み、それも伝奇ファンにしてみればトンデモな設定やハッタリに一筋のもっともらしさを付与してくれる大切なアクセントだったりもする。隠れされた秘密、秘められた歴史という言葉に人は弱い。

「上記」「竹内文献」「東日流外三郡誌」「秀真伝」あたりは偽書の中でも横綱級の知名度を誇る。でも、名前だけは知っていても、意外にその成立過程や、内容については知らないことが多いよね、ってことで本書を手に取った次第。

平安期に作られ、以後数百年に渡って真書だと信じられてきた「先代旧事本紀」の存在には相当ドキドキさせられた。

もうすこし尺が欲しかった

有名な六書をテーマとして、どうして偽書なのか、なぜ偽物なのかをつまびらかにしていくのだが、結論に至るまでの展開が性急に過ぎる。とにかくこれは偽物なんだ!ってコテンパンにやっつけてしまうのだけど、その根拠が哀しいかな素人には理解出来ない。もう少し丁寧な解説や注釈が欲しかった。偽書そのものの内容についても、ボリューム不足で不満が残るところ。

どうして人は偽書を信じてしまうのか。歴史の影には、秘められた真実がある。権力者が隠したいとする「なにか」があったのだと信じたくなる。これは現在の陰謀論に惹かれてしまう類の人の気持ちに近いものがあるように感じる。

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