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『50歳からのむなしさの心理学』榎本博明 「むなしさ」をきっかけに前を向く方法

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中高年を襲う「むなしさ」

40代後半~50代前半の方に伺いたいのけれども、近頃こんなむなしい思いに囚われたことはないだろうか。

  • やる気が出なくなった
  • 仕事への情熱がなくなった
  • 自分に自信が持てなくなった
  • このままでいいのか焦る
  • 自分らしく生きていないような気がする

恥ずかしながら、ここ数年のわたしがこのパターンで、とにかく仕事にモチベーションを見いだせずに困っている。淡々と作業をこなすだけ。時間が来れば止めてしまうし、より精度を高めよう、完璧に仕上げようとという気持ちも薄れ、ほどほどの完成度でやめてしまう。つまらないミスも多くなってきている。このままでは不味いなとは思うものの、なかなか改善できない。人としての成長は止まってしまったのではないか、不安な気持ちになることも多い。

この何とも言えない「むなしさ」の正体は何なのだろうか。

この記事から得られること

  • アラフィフ年代を襲う「むなしさ」の正体がわかる
  • 「むなしさ」をバネに前向きに生きていく方法がわかる

「むなしさ」の正体は「危機意識」

榎本博明は著書の『50歳からのむなしさの心理学』の中で、この「むなしさ」についてこう説明している。

50歳からのむなしさの心理学 (朝日新書)

それは変革の時を迎えていることを知らせるシグナルとも言える。むなしさは、現状を超えていこうとする向上心のあらわれ、あるいは貪欲さのあらわれである。現状に満足していたら、むなしさを感じることはない。

『50歳からのむなしさの心理学』p211あとがきより

少しは救われたと思うだろうか?それともそんなバカな!と思うだろうか。

五十代は、ひとつの節目となる年代である。所属組織での限界も見え、定年も視野に入ってくる。望んだような地位や仕事を得られている人間は少数派であろう。惰性で仕事を流してしまうようになり、向上心も失われてくる。

もちろん、そんな状態を自分自身では望ましく思っていない。この危機意識が「むなしさ」の元であると筆者は説くのである。

「むなしさ」をきっかけに軌道修正する

五十代にして惑い始める現代人。「むなしさ」に悩まされるようになったわたしたちは、それではどうすればよいのだろうか。

筆者は、「むなしさ」を感じているのであれば、「今」こそ、その理由について向き合い、よくよく考えるべきだとしている。「今」が変わらなければ、いつまでも「むなしさ」はついてくる。行き詰まりを感じたり、逆境に追い込まれたときこそが、新たな自分を見出す好機だ。

ひとつの手法として、筆者がまず紹介しているのが

  • 使命感の大切さ

である。他者との関係性の中で生きている日本人にとって、人の役に立つことをしていると感じられることは充足感に繋がる。誰かのためになる。役に立つことで生き甲斐が得られることもあるというわけだ。

続いて、筆者が示しているのが、

  • 学びのよろこび

である。幾つになっても向学心は持っていたいものである。出来なかったことが出来るようになり、わからなかったことがわかるようになる。さらに知りたいことが出てきて、自分の中の知の世界が広がっていく充足感は格別のものがある。

何かの資格を得よう、試験に受かりたい!といった目先の目標がなくても、学びそのものが人生を充足させてくれる。仕事に直接関係なかったとしても、興味のある分野があれば、学びを深めてみるのも一つの手段と言えるだろう。

やりたいことが見つからなくてもいい

もちろん、問題はそう簡単ではないだろう。すぐに使命感を得られる何かを見つけ出すことは容易ではないし、学びたいことを誰もが持っているわけではない。しかし筆者はそれでも良いのだとしている。悩むことで成長する。悩み苦しむことも人生の意味につながる。

筆者はこうも書いている。

とくに目標が見当たらないときは、プロセスを生きるという姿勢を心がけたい。「何のために」ということがはっきりしなくても、何かに没頭することで生活に張りが出る。生活の張りはむなしさを払いのけてくれる。

『50歳からのむなしさの心理学』p121より

どんなものであれ、目先の「何か」にまず没頭してみてはどうかというのである。なりたい自分が見つからなかったとしても、物事に集中して取り組み、充実した時間を過ごすことが出来ればそれもまたひとつの成果だ。そうすることで、日々の生活が意味で満たされ、やがては自己実現への道も開かれていくと筆者は説いている。

「今」考えてみよう

最終章で筆者は、

  • あとで考えようをやめよう

と、再度読者に問いかける。五十代に入り、「むなしさ」を感じ始めたのは、これからの生き方を変えていくせっかくのチャンスなのだ。先延ばしをやめて、この機会を逃さずにしっかりと受け止めて考えてみたいものである。

たまたまではあるのだが、わたし自身は「学びのよろこび」を追及しはじめていた。今年の四月から放送大学に入学し、仕事関連(IT系)の学びなおしを進めている。

コロナ禍で自宅で過ごす時間が増えたせいもあるのだが、久しぶりの学びの時間は、自分でも思ってもみなかったほど楽しい時間となっている。もちろんそれで直ちに「むなしさ」が消えるわけではないのだが、没頭できる「何か」は、ささやかではあるが自身の中の支えになってくれているように思えるのだ。

『50歳からのむなしさの心理学』はこんな本

いつもと構成が変わってしまったが、最後に書籍のご紹介。

『50歳からのむなしさの心理学』は2019年刊行。筆者の榎本博明(えのもとひろあき)は1955年生まれの心理学者。名城大学人間学部の教授職を経て、現在はMP人間科学研究所代表。心理学、教育関連の著作が100冊以上ある(すごいな)。

内容はこんな感じ

人間五十にして惑う。人生の夏は終わり、老いや衰えが現実のものとしてやってくる。無力感や孤独感。残りの人生の時間が見えてくる焦り。そんな「むなしさ」の中で、人はどう生きるべきなのか。何を考えて、どう動けば、この辛さが楽になるのか。ゆらぐことのない「生きる意味」を見出すための一冊。

目次

本書の構成は以下の通り

  • 第1章 50歳前後のむなしさの正体
  • 第2章 心の危機は軌道修正のチャンス
  • 第3章 むなしさと向き合う言葉
  • 第4章 もがくことこそ、自己実現への道
  • 第5章 とりあえず「何」をするか
  • あとがき

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