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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

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既に2024年の1月も後半に入っている状況で、遅きに失した感が無きにしもあらずだが、恒例の〇〇年に読んで面白かった本企画をお届けしたい。

2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

なお、あくまでも2023年に読んだ本が対象であって、2023年に刊行された本ではないのでその点はご容赦を。

では、今回のラインナップは以下の10冊。

歴史編

まずは歴史編から。2023年はあまり歴史系の本が読めておらず、例年に比べるとボリュームは抑えめ。理由はおそらく大河ドラマが定番の戦国時代モノ(内容についてはあえて触れない)で、周辺知識を得たいという気になれなかったことが大きいかな。今年の大河ドラマは貴重な平安時代モノなので、何冊か関連本を読んでみるつもり。

足利将軍たちの戦国乱世(山田康弘)

あまり知られていない室町幕府後半の将軍たち七人にスポットを当てた一作。個人的に室町時代が大好きなので楽しく読んだ。相次ぐ反乱。脆弱すぎる幕府権力。将軍なのに、長期に渡って京都を追われることもしばしば。室町幕府ってどうしてこんなに安定しなかったのか。その謎に迫りたい方には堪らない一冊だと思う。

っていうか、新書のおススメはこれくらいしか読めてなくてショック!2024年はもっといろいろ読めるといいのだけど。

『足利将軍たちの戦国乱世』の詳しい感想はこちら

「民都」大阪対「帝都」東京(原武史)

私鉄王国関西。官主導の東京とは異なり、民間主導で鉄道が普及した関西。東京とは異なる発展の経路をたどった関西の鉄道史をひもとく一冊。都内の私鉄は、起点となる駅がJRの主要駅と接続しており、独自の始発駅を持たない。一方で、関西の私鉄は独自の巨大な始発駅を持っている(阪急大阪梅田駅とか、南海難波駅とかね)。どうしてこのようなことになったのか知りたい方におススメ。

『「民都」大阪対「帝都」東京』の詳しい感想はこちら

日本民俗学概論(福田アジオ・宮田登/編)

昨年11月に、放送大学の面接授業で、宮内貴久先生の『しきたりの民俗学』という講義を受講した。その際に参考書として指定されたのがこちらの一冊。日本民俗学の泰斗、福田アジオ、宮田登の両名の編による概論書である。

空間(イエ、家族、ムラ)、時間(年中行事、冠婚葬祭)、心意(信仰、昔ばなし、怪異)といった切り口で、日本民俗学の基礎が学べる。1983年刊行とかなり古い本なのだが、今でも再版されているので、大学の民俗学の授業では、今でも現役でテキストとして活用されているのかもしれない。

『日本民俗学概論』の詳しい感想はこちら

ミュージック・ヒストリオグラフィー(松本直美)

音楽の歴史について書かれた本、、ではなくて「「音楽史」史」とでも言うべきか?そもそもが文字にできない「音楽」の歴史は、どのように語られてきたのか?そして、どう語られるべきなのか。音楽史研究の現場におられる方が書いた問題定義の書だ。

「作曲家、作品の歴史」だけにスポットがあたりがちな音楽史の世界だが、これから「楽曲だけではなく、それを受容している人々の文化や社会」までも対象とすべきなのではないかと筆者は結ぶ。

『ミュージック・ヒストリオグラフィー』の詳しい感想はこちら

ちなみに現在わたしが受講している、放送大学の講義『西洋音楽史』も、非常に意欲的な内容になっていたので併せて推しておく。この本についてはいずれ感想を書くつもり。

ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った女>たち(川本静子)

ガヴァネスとは住み込みの女性家庭教師のこと。19世紀のイギリスでは、男女の人口バランスが崩れ、女性の大結婚難時代が到来。未婚の中産階級女性たちは「レディ」の身分を維持しながらも、収入が得られる唯一の職業ガヴァネスに殺到した。

ヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』を読んでいて、登場するヒロインの職業がガヴァネスだったので、気になって手を出してみたのがこの本。『ジェイン・エア』のヒロインや、ヘレン・ケラーを育てたサリヴァン先生も実はガヴァネスだった。19世紀、特にヴィクトリア朝時代のイギリスがお好きな方におススメ。

『ガヴァネス ヴィクトリア朝時代の<余った女>たち』の詳しい感想はこちら

ノンフィクション編

ふわっとした雑な分類でゴメン。厳密にはノンフィクションではないような気もするのだけど、そのあたりは緩くとらえていただきたい。

荒野へ(ジョン・クラカワー)

1992年に餓死遺体として発見された、実在のアメリカ人青年の足跡を追いかけた作品。

恵まれた家庭環境で育ち、良い大学を出て、稼げる社会人になる。そんなお決まりの人生のレールからあえて逸脱してみる。全米を放浪し、最後に行きついたアラスカの荒野で若者を待ち構えていた過酷な運命とは。

彼は死にたかったわけではなく、ありきたりの人生からちょっとだけ逸脱してみたかっただけなのではないかと思う。しかし、文明社会からわずかに離れただけで、生活環境は劇的に過酷なものとなり、自然は人間に対して牙をむくのだ。

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千葉からほとんど出ないひきこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話(済東鉄腸)

「好きこそものの上手なれ」を体現したかのような内容。やりたいことがあるのに、一歩前に踏み出せずにいる人の背中をググっと押してくれる。長すぎるタイトルが、余すところなく作品の内容を言い表している一冊(笑)。

健康上の理由で自宅からほとんど出ることができない筆者が、ルーマニア語の魅力に取りつかれ、遂にはルーマニア語で小説を書き、ルーマニア現地で作品を公開できるようになるまでのサクセスストーリー。

『千葉からほとんど出ないひきこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』の詳しい感想はこちら

限界ニュータウン(吉川祐介)

かつては数千万円で売られていた物件が、現在は500万円で手に入る。無計画に乱造された僻地の分譲住宅が、2020年代に至っていかなる末路を迎えているのか。住民の高齢化と過疎化、道路はひび割れ、水道管は破裂する。実際に「限界ニュータウン」に暮らす筆者だからこそ書ける、生々しい生活の在りようが真に迫っていて衝撃を受けた。

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ビジネス書編

ビジネス書というくくりも曖昧だけど、社会人が読んでおくとイイよ!的な本って扱いで、こちらの二冊はおススメ。

「静かな人」の戦略書(ジル・チャン)

コミュニケーション力が問われる昨今。人と話すのが面倒。飲み会に行きたくない。他者との交流が苦手。そんな人間は、社会においてどう生きるべきなのか。「内向性」の性格を活かすためのノウハウが多数詰め込まれている。具体的な事例もあれこれ紹介されているので、職場でのコミュニケーションに悩んでいる方には、ヒントとなる一冊になるのではないかと思う。

『「静かな人」の戦略書』の詳しい感想はこちら

教養としてのAI講義(メラニー・ミッチェル)

2023年は生成系AIが大ブレイクした年として、後世記憶されることになるのではないか。そんなAI大流行の時代に、これくらいは知っておかないと拙い!AIについての基本のキが学べる一冊となっている。AIには何が出来て、何が出来ないのか?理数系の素養が無い、文系人間にもわかるよう書かれているのが嬉しい。

『教養としてのAI講義』の詳しい感想はこちら

おわりに

以上、2023年に読んで面白かった新書・一般書10選をお届けした。

コロナ禍で在宅勤務が続いていた2022年までとは打って変わって、2023年は基本出社の生活に切り替わったた。趣味でやっている放送大学も三年目に入り、専門的な科目が増え、学習に時間がかかるようになった。そのため読書の時間を工面するのにかなり苦労した一年間だった。結果として読書量が減ってしまったので、2022年と比べると「読めなかった」年だったように思う。

良かった点としては、外出が増えたため、リアル書店に通えるようになったことだろうか。未知の書籍に出会うには、昔も今も、実際の書店に通うのが一番だ。2024年も、引き続き時間に追われることになると思うのだが、少しでも多くの本に触れていければと考えている。

いつも、ご覧いただいているみなさま、ありがとうございます。遅まきながら、本年もよろしくお願いいたします!

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