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2022年に読んで面白かった新書・一般書12選

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毎年恒例の〇〇年に読んで面白かった本シリーズ、2022年版をお届けしたい。しかしながら、今年は放送大学二年目ということで、学習に割かれる時間が多くて、あまり数がこなせなかったのが残念。昨年は歴史編その他編と二回に分けてお送りするほどネタがあったのだけど、今回は一回のみ(12冊)となる。

2022年に読んで面白かった新書・一般書12選

日本史編

まずは日本史編から。2022年は大河ドラマの『鎌倉殿の13人』が、猛烈に面白く、この時代の関連本を比較的多く読んだ。戦国や幕末にくらべると、相対的に知らないことが多いので発見も多く、同じ素材を複数の著者の視点で読み解くのも楽しい時間だった。

源氏物語の結婚(工藤重矩)

「鎌倉殿」からはちょっと離れるけど、本書で描かれているのは、源氏と言っても貴族の方の源氏。『源氏物語』を素材として、平安朝の結婚制度について考察していく一冊。有力者であれば、たくさん奥さんを持てたように思える平安時代でも、正妻に強大な権利が付与されており、他の側室らとは歴然とした差が存在したとする内容が興味深かった。

『源氏物語の結婚』の詳しい感想はこちら

平氏(倉本一宏)

源氏本を読んだなら平氏の本も読まなければ!ということで読んだのがこちら。清盛系統の武家政権を作った一門ばかりでなく、桓武天皇以来、膨大な数に上る貴族としての平氏の系譜を丹念にたどってくれているのが特徴。貴族としての平氏は、摂関家ほどの格はなかったにせよ、宮廷社会を支える実務の家柄としてしっかり幕末まで生き残っている。

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北条氏の時代(本郷和人)

「鎌倉殿」本は何冊か読んだのだけれども、本郷センセの書きっぷりが、個人的には好みだった(陰謀論にやや傾きがちだが)。鎌倉時代全体を通じて、得宗家の単位で北条氏による鎌倉幕府支配を考察していくスタイルがわかりやすかった。

『北条氏の時代』の詳しい感想はこちら

「鎌倉殿」の時代を扱った作品としてはこちらの三冊もおススメ。

世界史編

世界史編からはこちらの三冊をセレクト(っていう程、読めてないのだが)。来年はもう少し、世界史系の本も読みたい。

青木健(ゾロアスター教)

放送大学の高橋和夫先生の講義「国際理解のために」を理解するための、サブテキストとして購入。ゾロアスター教は現在でこそ、ごくごく限られた民族だけが信仰する宗教だが、二元論、終末論、救世主思想は、キリスト教や、イスラム教、仏教に大きな影響を与えている。近代に入ってからアーリア民族の聖典として、ナチスドイツに「再発見」された経緯にも興味を惹かれた。

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古代中国の24時間(柿沼陽平)

各方面で話題になったし、書店でも平積みにされているのをよく見たので、ご存じの方も多いのでは?歴史に名を残したような偉人ではなく、あくまでもふつうの人々の暮らしはどうだったのか。秦漢期に生きた人間の行動を「24時間」という切り口で、わかりやすく解説してくれる。

『古代中国の24時間』の詳しい感想はこちら

謎のチェス指し人形「ターク」(スタンデージ)

18世紀に実在した、「自動」でチェスを指す人形タークの数奇な生涯を綴った一冊。こんな時代に高度な機械知性が!ってのはまあ、本書を読んでいただくとして(笑)。タークと対局した歴史上の著名人のラインナップの豪華さ。タークの謎を解かんと、推理を巡らせる数々の知性との対決。歴史ミステリとしても抜群の面白さだった。

『謎のチェス指し人形「ターク」』の詳しい感想はこちら

原武史の著作が面白かった

放送大学は、基本的には自宅での通信教育なのだが、実際に学校(学習センターと呼ぶ)に通って学ぶスクーリング(面接授業と呼ばれる)科目もある。わたしは、原武史先生の「西武鉄道と沿線文化」という超絶マニアックな科目を受講したのだが、これがめちゃくちゃ楽しかった。講義を受けるにあたって、テキスト及び、副読本として指定されたのがこちらの三冊。鉄道や団地好きの属性を持つ人間にはたまらない内容となっている。

レッドアローとスターハウス(原武史)

西武の名物特急列車「レッドアロー」号と、団地建築の華ともいえる「スターハウス」を軸に、他沿線と比べて特異な発展を遂げた西武沿線の歩みを考察する。堤一族による西武鉄道の歴史から、更には、沿線に次々と作られた公団の団地群の存在。西武沿線の住民になってまだ十年のわたしには、知らないことだらけで衝撃を受けた。

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団地の空間政治学(原武史)

1960~70年代。何もなかったところに、ある日突然、巨大な団地群が建設され、万単位の新住民が押し寄せる。駅まで遠いのにバスが無い。買い物をする施設が無い。保育所も病院もない。不満や不足は、住民たちの政治感情を醸成し、独特の政治風土を形成する。原武史ならではの「空間と政治」論のエントリー本としても良書なのではないかと。

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滝山コミューン一九七四(原武史)

前二著とは違って、原武史個人のパーソナルヒストリーが濃厚に反映された異色の作品。1970年代の学校教育に存在した「自由で民主的」な教育の正体とは何であったのか?わたしは、少し後の世代なのだけれども、当時の学校現場の異様な熱気、ヒリヒリとした緊張感を確かに覚えている。

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その他の三冊

最後にお届けする三冊は、ジャンルでくくるのが難しかったので「その他」編とさせていただいた。雑なくくりで恐縮だが、いずれも良作揃いで、是非読んでいただきたい著作群である。

ヤンキーと地元(打越正行)

「社会学の研究のために20年間暴走族のパシリをしていた人」として、テレビ番組『激レアさんを連れてきた。』に出演され、一気に知られるようになった作品。

研究対象者の現場に仲間として入り込み、関係性を深めながらその実態を研究していく。そんな社会学の研究手法、エスノグラフィーの成果とも言える一冊。

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四国辺土(上原善広)

信仰やレジャー、旅行としてではなく、「生きるため」「食べていくための手段」として四国遍路を行っている人々が存在する。職業としての四国巡礼者たちに密着取材した迫真のドキュメント作品。筆者自身もお遍路に参加し、門付けの体験までしている。この情熱はどこから来るのか。

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22世紀の民主主義(成田悠輔)

この著作だけ、なんだか全然傾向の違う作品になってしまった感がある。

社会問題が多様化し、各人が置かれている思想や、立場も様々。そんな中で、たったひとつの政党、政治家を選ばなければならない現代の選挙制度は、もはや古いのではないか?AIに管理された「無意識民主主義」を提唱した、なんとも刺激的な内容。

『22世紀の民主主義』の詳しい感想はこちら

おわりに

以上、2022年に読んで面白かった新書・一般書12選をお届けした。2022年の読書傾向としては

  • 「鎌倉殿の13人」の影響から、この時代に関連した著作を多数読んだ。
  • 放送大学からはじまった興味、関心から、新しいジャンルを開拓できた

といったあたりになるかな。原先生の著作はいずれも楽しく読めたので、2023年も追いかけていくつもり。放送大学の講義の方もいずれ履修する予定。

悩ましいのは、仕事と放送大学の学習が、けっこうな生活時間を圧迫していて、本を読む時間を削らざるを得なくなっていること。更には、コロナ禍による、会社のテレワーク主体の働き方体制が、さすがにそろそろ終わりそうな点。その点でもライフサイクルの再構築が必要になりそうだ。

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