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『日本の国境』山田吉彦 領土問題の歴史的経緯を学ぶ

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海洋問題の専門家が書いた日本の領土問題

2005年刊行。筆者の山田吉彦(やまだよしひこ)は1962年生まれ。本書の刊行当時は日本財団(日本船舶振興会)の海洋船舶部長を務めていた。その後、東海大学の海洋学部で、准教授、教授と順当にキャリアを積まれ、現在は東海大学静岡キャンパス長を務めておられる方。

日本を巡る海洋問題、特に領土関連についての著作が多い。近著は2022年に刊行された扶桑社の『日本の領土と国境』である。

内容はこんな感じ

北は択捉島から南は沖ノ鳥島まで。東は南鳥島から西は与那国島まで。日本の排他的経済水域(EEZ;Exclusive Economic Zone)は約447万平方キロにも及ぶ。世界第六位の広大な水域は、どのようにして成立したのか。そしてその国境を日本はいかにして守っているのか。北方領土や、竹島、尖閣諸島でいま何が起きているのか。現地リポートを交えながら読み解いていく。

目次

本書の構成は以下の通り。

  • 第1章 海洋国家日本の肖像
  • 第2章 日本の国境を行く
  • 第3章 領土紛争最前線から
  • 第4章 「日本の海」を守る

日本の排他的経済水域の広さは世界で第六位

日本は島国なので国境は海の上にしかない。国土は狭いのに、この国の排他的経済水域の広さは世界で6番目にもなるらしい。筆者は広大な排他的経済水域を支えている、国境の島々を訪れその実情をつぶさに紹介していく。ここ十数年領土問題が報じられることが多くなってきただけに、基本的な部分を知っておくには良い本かと思われる。

沖ノ鳥島訪問記が興味深い

本書では日本各地の「国境」の島々と、その歴史的背景について述べていく。日本との間に領土問題を抱える、中国、北朝鮮、韓国、そしてロシアの歴史的な因縁について知ることが出来る。

特に、沖ノ鳥島訪問記はとても興味深く読んだ。沖ノ鳥島を実際にこの目で見た日本人が、いったい何人いるだろうか。

Google Mapで見た沖ノ鳥島がこちら。あからさまに人工的な外観に衝撃を受けるはずである。

実物の沖ノ鳥島はコンクリートの護岸とチタン製のネットで厳重に保護されているらしい。確かにこれは島というよりは岩だ。しかし、これが失われると水域と共に膨大な権益を日本は失うことになる。どことなく滑稽に見えるのだけれどもこれは必要なことなのだろう。

なにぶん、この筆者は日本財団出身の方なので、思想的に右寄りの傾向が強めなのは致し方の無いところではあるが、島国なのに国民や政府の海への意識が低いという指摘は確かにその通りかと納得。日本は国境が全て海であるだけに、肌間隔でその緊張感を理解するのはなかなか難しい。海上保安庁については少々興味が出てきたので、もう少しこっち方面の本を探してみて読んでみるつもり。

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