オカルトが支配する日本の企業社会
筆者の斎藤貴男(さいとうたかお)は1958年生まれの、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
本書はまず、1997年に文藝春秋から単行本として上梓された。その後、2000年に文春文庫化版が刊行されている。
更に、2019年に入り、ちくま文庫版が登場している。こちらは、新たに序章と最終章が新章として追加されている。
内容はこんな感じ
ソニーのエスパー研究室。「永久機関」。科学技術庁のオカルト研究。「万能」微生物EM。オカルトビジネスのドン「船井幸雄」。米国政府が徹底して擁護するアムウェイ商法。バブル崩壊以降の日本経済界において、少しずつ、しかし着実なペースで顕著になりつつあるオカルティズムへの傾倒。その底流にある共通事項とは……。
見出しを見ているだけでクラクラする
本書の内容を知っていただくには、各章のタイトルを読んでいただく方が早いと思う。以下、列記する。
- 文庫版序章 カルト国家の愛国・道徳オリンピック狂騒曲
- 第1章 ソニーと「超能力」
- 第2章 「永久機関」に群がる人々
- 第3章 京セラ「稲盛和夫」という呪術師
- 第4章 「万能」微生物EMと世界救世教
- 第5章 オカルトビジネスのドン「船井幸雄」
- 第6章 ヤマギシ会―日本企業のユートピア
- 第7章 米国政府が売り込むアムウェイ商法
- 文庫版最終章 「カルト資本主義」から「カルト帝国主義」へ
いかがだろうか?ヤバそうなワードがてんこ盛りで実に衝撃的ではないだろうか。
功成り名遂げた経営者たちが、スピリチュアルやオカルト系の志向を持つ話はよく聞く話である。ソニーの井深大、京セラの稲盛和夫、そして経営コンサルタントの船井幸雄。この三人はその中でも特に大物と言える面々である。
本書では彼らが「社業」として行ってきたエピソードの数々を披露していく。まさかそんなことまで!と驚くこと請け合いである。よくこれだけネタを集めて来たなと、筆者の取材力には驚かされる。
個人で楽しむならいいけれど
知人が大の稲森和夫ファンで、何年か前に読めと云って配られた本は船井幸雄の本だった。胡散臭いネットワークビジネスにハマって辞めていった連中が周りに何人もいたりする。こんな自分に取っては本書の世界は絵空事でも無ければ、他人事でもないわけで、この世界を俯瞰して捉えるには良き一冊であった。結構身近にいるのだ。
個人的にスピリチュアルやオカルトの類は嫌いではないし、「あった方が世の中面白い」程度には感じているが、あくまでも自分個人に留めてこその話。他人を(ましてや家族を)巻き込んではダメだと思うのだ。資産家がプライベートで何をしようと勝手だが、社業として自分以外の人間を巻き込むのは悪質であると感じる。
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余談
ちなみに、宮澤伊織の『裏世界ピクニック2』に登場するDS(ダークサイエンス)研究会は本書を参考にして書かれている。気になる方は是非。