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『「月給百円サラリーマン」の時代』岩瀬彰 戦前の社畜も大変だった?

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戦前の庶民の暮らしを垣間見てみよう

2006年刊行。筆者の岩瀬彰(いわせあきら)は1995年生まれ。共同通信社を経て、2020年3月まで関連会社のNNAの代表取締役現在は同社の顧問を務めている

タイトルでは、月給100円なんて書いてあるけど、別に現代の格差社会の話じゃなくて、戦前のサラリーマンのお話。学者先生が書いた本で無いだけに、お堅い学問的な雰囲気は無し。どちらかというと雑学本といったスタイルだ。

ちくま文庫版はタイトルが変更されている

こちらは2017年刊行。文庫化にあたって、タイトルが『「月給100円サラリーマン」の時代』に改題された模様。入手しやすくなったのは喜ばしい。

「月給100円サラリーマン」の時代: 戦前日本の〈普通〉の生活 (ちくま文庫)

なお、ちくま文庫版では、日本文化史研究家のパオロ・マッツアリーノの解説が収録されている。戦前の庶民文化を知ることができる良書なので、これを機会にもっと読まれても良い一冊だと思う。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

戦前のホワイトカラーのライフスタイルを知りたい方、サラリーマンは今も昔も大変だったことを知りたい方、戦時中でも日常的な生活が存在していたことを実感したい方におススメ。

戦前の日本のサラリーマンの実態像は?

敗戦を迎えた1945年を境として、日本はまるで別の国になってしまったイメージがある。大正末期から昭和初期にかけての「戦前」と呼ばれる時代。長期に渡る対外戦争に明け暮れていたこの時代にも普通の人々の、普通の生活は存在していた。都市における俸給生活者たちの姿にスポットを当て、彼らの経済活動の実態にメスを入れていく。

庶民というと若干語弊があろうだろうか。当時としては少数派であったろう、中流クラスより上、それもホワイトカラー層を中心とした内容となっている。

戦前にもあった超格差社会

昭和一桁~十年代までの物価は、おおまかに言って、現在の1/2000くらい。従って、月給100円は現代では月給20万円。大卒初任給くらいか。これだけもらえればかなり良い方だったようだ。サラリーマン以外の、労働者階級は月100円なんて遠い夢のような状態。まあ、それでも暮らせていけたわけだから、それなりに物価も安かったのだろう。

駆け足ではあるけれども、当時の衣食住、各方面の相場から、学歴ごとの給与・昇給事情、現代を遙かに超える超格差社会の実情などについて簡便にまとめてある。戦前の社会風俗を知るための手がかりとしては格好の一冊だろう。単純に読んでいて面白かった。