サントリー出身作家が説く、現代社会の生き延び方
筆者の野村正樹(のむらまさき)は1944年生まれのミステリ作家、ビジネス評論家。2011年に他界されている。
デビュー作は1986年の『殺意のバカンス』で、こちらは懐かしの土曜ワイド劇場枠で実写ドラマ化されている。主演はとよた真帆。
もともとはサラリーマンで、出身はサントリー。上記の『殺意のバカンス』はサントリー在職中に書かれたものであるらしい。選には漏れたものの、サントリーミステリー大賞にも応募していた作品なのだとか(自社公募の賞に応募するのもどうか思うけど)。
野村正樹はミステリ作家としてデビューしながらも、サラリーマン時代の経験を生かした、ビジネス系の著作を多数上梓しており(ミステリ系作品より遥かに多い)、本書はその中の一冊である。NHKの絵師活人新書からの登場であった。
内容はこんな感じ
かつて話題になったパラサイト・シングル。同じようなパラサイト(寄生)の構図は他の場所でも見いだすことが出来る。先の見えない現代社会にあって、自立出来ない、他者の力にすがり、会社にしがみつくパラサイト社員。彼らは何故そのようになってしまったのか、いったいどうすれば良いのか。混迷の時代を生き抜く鍵がここにある。
良いパラサイト、並みのパラサイト、ダメなパラサイト
筆者はサラリーマンと自営業両面を知る人間として、現代社会にはびこる、パラサイト社員の実情について説いていく。パラサイト状態を「良いP」「並P」「ダメP」の3つに分類しそれぞれについて考察を述べていくのである。本書を読んでいると、全ての経費が自腹になってくる自営業者に比べて、会社に身分、収入、各種インフラを保障されたサラリーマンがいかに恵まれているかがよく判る。
会社への寄生をやめよう!
本書の最終目的(6章)は会社への寄生を辞めて独立しよう!というベクトルに向かっていく。しかし、これはサントリーほどの大企業を退職して、作家として独立し、なおかつ成功できた筆者だから言えることであって、これは誰にでも勧められる話ではないだろう。
「ダメP」のわたしとしては尚更会社を辞めるわけにはいかないなと、思い直した次第。独立云々の部分は、話半分に聞いておくとしても、「よいP」になるためのさまざまなアイデア(5章)は「ダメP」でも役に立つかな。