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『イスラムと仲よくなれる本』森田ルクレール優子 学校で、職場で、もし隣の席にイスラム教徒がいたら?

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小学生でも読めるイスラムの入門書

2023年刊行。筆者の森田ルクレール優子(もりた Leclerl ゆうこ)は1980年生まれ。20年程前にイスラム教に改宗。2年前(本書刊行時点)にSNSで知り合ったフランス人男性と交際ゼロ日で結婚。渡仏。夫と先妻との間に出来た子四人に加えて、自身でも四人を出産。現在は八人の子の母として多忙な日々を送りつつ、イスラム教のシンプルライフを広める専門家として活動されている方。波乱万丈すぎる。

イスラムと仲よくなれる本

内容はこんな感じ

日本人にはちょっと縁が遠い存在だったイスラム教。しかし近年、日本国内にも、イスラム教を信仰する外国人が居住するようになってきている。イスラム教はどんな宗教で、いかなる歴史があるのか。イスラム教を信じる人々には何がタブーであって、どんなことを考えているのか。日本人でありながらイスラム教に改宗した筆者が教えてくれる、イスラムの隣人たちとの付き合い方。

目次

本書の構成は以下の通り。

  • はじめに
  • 第1章 イスラムの子と、どうやれば仲よくなれるの?
  • 第2章 イスラムの子と楽しく遊べるコツって?
  • 第3章 もっと深く知りたいイスラムの秘密
  • 第4章 イスラムの大誤解、パパとママに教えてあげよう
  • 第5章 イスラムでは何を祈っているの?
  • 第6章 イスラムって「そもそも」どんな宗教なの?
  • おわりに

イスラム人口は増えている

東京に住んでいるとあまり気づかないのだが、ちょっと近郊に出かけると、日本国内でもイスラム教を信仰している外国人の方が多数居住している地域が存在する。現時点で、世界最大の信徒を誇る宗教はキリスト教だが(日経の記事では21億7000万人)、2100年になるとイスラム教が最大の勢力になるらしい。

西欧諸国がどの国も少子化に悩んでいる反面、イスラム諸国は多産の傾向があるから、いずれより差が顕著になってくるのかもしれない。

東京では電車の中でヒジャーブ(頭や身体を覆う布)をかぶっている女性を見かけることは珍しくなくなった。今後はわたしたちの身近にもイスラム教を信仰している方が現れる可能性は相応にあるのではないかと思う。そんな時にどう接すればいいのか?基本的なことを抑えておくという意味では本書は有用になってくる。

子ども向けに書かれているけど大人こそ読んで欲しい

本書冒頭で、筆者はこう書いている。

この本は、もしみなさんのとなりの席にイスラムの子が座ることになっても、すぐに話しかけられて、その日のうちに仲よくなれますように、という願いをこめて書きました。

『イスラムと仲よくなれる本』p3より

よって、基本的に本書は子どものために書かれている。どんな話をすればいいのか?どんな遊びが好きなのか?給食の時間には何をやっているのか?どうして女の人は髪を隠すのか?やってはいけないことは何なのか?などなど、イスラムの子どもたちと接するうえで、知っておいた方が良いことが多数紹介されている。

これらの質問を子どもからされたとして、きちんと答えられる日本人の大人は少ないだろう。だからこそ、大人としても本書に示されているようなイスラムの常識は知っておい損はない。差別や偏見は、相手を知らないことから始まる。まず相手を知るために、本書は大人こそ読んでおくべきなのではないかと感じた。

気を付けたいこんな点

本書を読んで知った、イスラムの方と接する際に知って起きたいポイントはこんな感じ。恥ずかしながら知らないことも多く含まれていて、とても勉強になった。

  • 昼休みは礼拝の時間(教室から消えていることが多い、礼拝の場所は学校側と会話の上で手配されていることが多い)
  • 豚肉は食べない。鶏肉や牛肉はオッケーだが、畜殺方法が限定されており「ハラールフード」である必要がある
  • 音楽、図工の授業は受けない(音楽は人の脳を酩酊させ誤らせる、図工は偶像崇拝に繋がる)
  • 暦は通常の暦を使うが、宗教関連行事についてはイスラム暦に従う
  • 男の子と女の子は一対一で遊ばない

イスラムを知るための入り口として

本書はあくまでも筆者の考えを反映したものなので、イスラムの在り方についても筆者の観測範囲にある程度は限定されるものと思われる。国や地域によって解釈の差も出てくるだろうから。その点は留意しておくべきかと考える。本書を入り口として、興味を持った方は、さらにイスラムを知るための努力を続けていけば良いかと。

一夫多妻制であったり、女性の社会進出に壁がある点など、イスラム教の考え方は、西欧や日本とは根本的に考え方が異なる点も多い。ただ、それはそれとして、異なる考え方を持つ人々が存在することを受け入れていく心構えは、これからの時代には必要なのではないかと考える。

ちなみに、わたしは昨年からアラビア語にハマっていて、放送大学の面接授業でアルファベットの読み方と、簡単なあいさつ文を学んだ。あのうねうねしたアラビア文字が、文字として認識できるようになったのは、2023年最大の収穫だったかも。人によって入り口はさまざまかと思うが、興味の赴くところから始めていけば良いと思う。

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