スマホ時代に「新しい読み方」を身につける
2022年刊行。筆者の佐々木俊尚(ささきとしなお)は1961年生まれの作家、ジャーナリスト、評論家。毎日新聞社の記者を経て、アスキーに転職。現在はフリーで活動されている方。
多数の著作を上梓しているが、比較的知られているのは2018年の『広く弱くつながって生きる』と、本書になるだろうか。
本日ご紹介する『現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全』は、各方面で活躍している筆者が、これまでに培ってきたノウハウを結集した、スマホ全盛、ネットがあたりまえの社会における「新しい読み方」について知ることが出来る一冊となっている。
この書籍から得られること
- 情報の洪水の中から役に立つものをピックアップする力が得られる
- 役立つ情報を自分の中に取り込んでいく方法がわかる
- 集中力が続かなくてもなんとかできる方法を学べる
内容はこんな感じ
日々膨大な数が出版される書籍。洪水のように押し寄せるネットニュース。良いものと悪いものが玉石混交状態となっているSNS情報。これらをいかにしてより分け、効率よく自らの「知肉」となすにはどうすればいいのか。筆者の具体的な取り組みをベースに、「読む力」「考える力」「アウトプットする力」の高め方を知る。さらに、スマホで「集中できない」時代ならではの、「新しい読み方」を学ぶ
目次
本書の構成は以下の通り
- はじめに
- 序章 まずは現代の知的生産に必須の「5つの大前提」を知る
- 第1章 まず「落とし穴」を見極め、「読むべきもの」を選別する
- 第2章 ネットは「何を」見ればいいのか
- 第3章 SNSをどう使いこなすか
- 第4章 選んだ記事をどう読み、どう整理・保存するか。情報整理の方法
- 第5章 本は「何を」「どう」読めばいいか
- 第6章 知識や情報を活用するカギは「2つの保存」を使い分けることだ
- 第7章 脳をクリアな状態にする「二刀流」のすすめ
- 第8章 散漫力を活用し「最適なインターバル」で仕事を回す!
- おわりに
現代の知的生産に必要な「5つの大前提」
冒頭の序章部分に、本書で筆者が提示したいことのポイントが示されている。項目を書き出すとこんな感じ。
- まずメディアを「4つのタイプ」に分類する
広く浅く系の水平型メディアなのか(新聞系サイトなど)、狭く深く系の垂直型メディなのか(専門誌、専門家のブログなど)を見極める。また、中立的な立場で書かれているのか、特定の思想に偏向していないかも確認。
- 「アウトライン⇒視点⇒全体像」という順番の流れを作る
いくつもの視点を得ることで、全体像が見えてくる
- 「読むこと」の大きな目的は「多様な視点」を獲得すること
世の中の多くの事象には正解がない。ただひたすらに「読むこと」で、「多様な視点」を獲得する。それによって事象の世界感が見えてくる。
- 読むことで得た「知識」「視点」を「知肉」にするのが最終目標
情報を得ることでつかんだ世界観を、自分の血肉=「知肉」として育てていく。
- 「集中力がない」のが現代人。「散漫力」を逆活用する。
スマホが必須のこの時代にあって、気が散るのは仕方がないと諦める。集中力は続かないものと割り切って対策すべき
情報の集め方と整理整頓
本書の第1章~第6章までは、世に溢れる数多の情報を、いかに取捨選択して自分の中に取り込んでいくか。そのノウハウが説明されている。情報源の選別、ネット情報への接し方、SNSにどう向き合うか、読んだ記事の整理法、本の読み方、選び方、そして知識の活用法が説明されている。
個人的に気になったポイントいくつか列記してみよう。
- RSSリーダを使う
RSSリーダはウェブサイトの更新状況を可視化出来るツール。更新情報を知りたいサイトやブログをあらかじめ登録しておくと、更新状況が把握できるようになる。
RSSリーダはいくつか種類があって、筆者のおススメは以下の二つ。ちなみにわたしは、Inoreader(イノリーダー)を試しているところ。
- 信頼できるSNS発信者の見分け方
膨大なTwitter情報の中から、思想的な偏向がなく、信頼性の高い発信者をみつけるにはどうすればいいのだろうか。筆者の考えはこちら。
- 他者からどんなコメントがついているのか
- それらのコメントは専門的見地からのものか
- それらのコメント投稿者のプロフィールはどうか
- それらのコメント投稿者は乱暴な言葉遣いをしていないか
- これらの基準をクリアした専門家をフォロー、リストに入れる
専門性の高い分野になると、わたしたち素人ではその発言の真贋を見抜くことは難しい。よって、その発言にどんなコメントが付いているのかを、判断材料にしようとする考え方だ。
「集中できない」を知力に変える
序章で示された「5つの大前提」のうち、最後の
- 「集中力がない」のが現代人。「散漫力」を逆活用する。
だけ、前の四つとは毛色が違っていたのはお気づきだろうか。本書の第7章~第8章では、これまでに鍛えてきた情報選択術、情報の取り込み方を踏まえたうえで、それではどうやって具体的な「知肉」に変えていくか。「集中力がない」現代人に向けた、アドバイスが示されている。
ポイントはこんな感じかな。
- 雑務は徹底的にツールで効率化する
スケジュール管理はグーグルカレンダー、タスク管理はマイクロソフトToDo、メモアプリならグーグルキープと言った感じで、デジタルツールを駆使することで雑務はどんどん効率化していく。原稿作成ツールのBear(残念ながらMac用だけど)など、具体的なツール名が多数登場するので、この点はとても興味深かった。
- 無理に集中しようとしない
ついついスマホを見てしまうのはもう仕方がないと割り切る。集中力は続かないものと開き直れと筆者は説く。スマホ断ちが出来ないわたしとしては、ちょっと安心した。
- マルチタスクワーキングの勧め
作業の並行対応を筆者は勧めている。
- 自分のやるべき仕事を棚卸する
- それらを「短い時間」に細かく分けられるかどうかを確認する
- 重いタスク、軽いタスクに分類
- 軽い、重いを交互に対応
集中力は続かないものなので、作業を分割して、少しづつ進めていこうという考え方だ。
- 散漫力を活用する
続かない集中力を逆手に取った考え方が「散漫力」の活用だ。いいアイデア、クリエイティブなアウトプットは、実は集中しているときよりも、ぼーっとしているとき、つまり「散漫力」を発揮しているときにこそ生まれやすい。
「スキル大全」なので使えるところをつまみ食いできればオッケー
以上、佐々木俊尚の『現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全』について、気になった部分をピックアップしてみた。
本書は最近はやりの「スキル大全」モノなので、とにかく具体的なアイデアが多数列挙されている。ただ、あくまでも「筆者が」効果があった方法なので、それが自分に合うかどうかはそれぞれだ。これはと思ったものから試していて、2つ3つ、使えるものがあればオッケーと考えるのが、この手の書籍との向き合いかと、わたしは考えている。
情報への向き合い方についてはこちらもおススメ