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『老後の年表』横手彰太 老後に起きるトラブルと、その解決法をズバリ指南!

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人生を「安全に生き抜く」ために

2021年刊行。筆者の横手彰太(よこてしょうた)は1972年生まれの老後問題解決コンサルタント。不動産会社の日本財託所属。NHKの『クローズアップ現代+』やテレビ朝日の『ワイド!スクランブル』など、メディアへの出演経験も持っている人物。

老後の年表 人生後半50年でいつ、何が起きるの…? で、私はどうすればいいの??

この本で得られること

  • 年齢ごとの老後のトラブルの実態がわかる
  • 老後のトラブルをどうやって解決すればいいかがわかる

内容はこんな感じ

人生100年時代。50代からが人生の後半ステージ。折り返し地点である。これからは、若いころには想像もできなかった様々なトラブルがやってくる。親の介護。役職定年。更年期障害。遺産相続。熟年離婚。再雇用。これらの諸問題はいつ発生するのか。そして、どんな対処をすればいいのか。すべてに「解決策」を提示した、人生を「安全に生き抜く」ための処方箋。

目次

本書の構成は以下の通り

第1部 老後の年表
【50歳】親の介護で「介護うつ」と「介護離職」が忍び寄る
【51歳】更年期障害で、妻の長年の怒りが爆発
【53歳】親が亡くなり、遺産相続の争い勃発
【55歳】役職定年。働き盛りに給与もやりがいもカット
【56歳】熟年離婚予備群に仲間入り
【60歳】年収は半分、仕事は新人レベルに逆戻り
【61歳】「親の死」より「定年退職」のショックからのうつ病
【62歳】銀行の勧めで財産が「半凍結」状態に
【63歳】初孫誕生で心の資産拡大
【65歳】長生きしたけりゃ、年金はまだもらうな!?
【66歳】がんの発症率急増
【70歳】平均的な資産保有額だと10年で枯渇
【72歳】わが子がニートに。娘は離婚出戻り
【75歳】病気、要介護、認知症になる割合が倍増
【77歳】資金作りのために自宅を安く売却。子ども夫婦との暮らしもうまくいかず…
【79歳】介護施設入所が突然やってくる。施設選びで想像以上の出費
【80歳】「私は騙されない」が一番騙される
【82歳】認知症でまさかの財産凍結
【90歳】入院してそのまま寝たきりに
【100歳】長寿の秘訣は生活習慣が9割

第2部 老後の生活が豊かになる3つの視点

第一部では、人生の後半戦の50年間で起こりそうなトラブルを時系列で紹介してくれる。解決策とあわせて説明してくれるので、気になるところだけつまみぐいするのもオッケー。

第二部は第一部を踏まえて、「老後の生活を豊かに」するにはどんな視点、考え方を持てばよいのかを指南してくれている。

いつ、何が起こるのかを知っておこう

本書の最大の特徴はタイトルの『老後の年表』からわかる通り、老後に発生するであろうトラブルの数々が「年表」形式で示されていることにある。

いずれは定年になって、給料は減るだろう。親も年々衰えてきている。相続のこともそろそろ考えたい。漠然としたトラブルの予感は持っているものの、具体的にそれがいつ訪れるのかまでは理解していない場合が多いのではないだろうか。

本書では〇〇歳では▽▽!と、具体的な年齢と紐づけてトラブルを紹介していくので、非常にイメージがしやすくなっている。問題点を列挙していくだけでなく、すべての事例に対して、「ではどうすればいいのか」という視点で解決策が示されているのもありがたい。

もちろん、親の介護や相続の発生などは、人それぞれであり、トラブルの発生タイミングには個人差も大きい。それでもおおまかな目安として、〇〇歳頃から考えて始めておくべきだと知っておくことは意義のある事である。

認知症に備えたい

本書で、特に参考になったのは親や、自身が認知症になった場合の、財産面での備えである。

認知症の有病率は80~84歳で21.8%、85~90歳で41.4%(本書中には24.4%、55.5%と書かれているが出典のグラフからはそうは読み取れなかった、なんでだろう?)とされている。

認知症年齢別有病率の推移等について[PDF]

日本人の平均寿命は男性で81.6歳、女性で87.7歳なので、多くの人間にとって認知症のリスクは無視しえないものがある。誰もが認知症になる可能性がある。

任意後見と家族信託のすすめ

認知症になった際の財産面のリスクとして、本書では以下を挙げている。

  1. 預貯金がおろせない
  2. 不動産が売却できない
  3. 贈与、遺言などの相続対策ができない
  4. 意外な敵は家族だった

4は見出しだけでは意図が伝わりにくいが、配偶者や子どもらに預貯金を勝手に使われてしまうケースを想定している。

これらの問題点に対する備えとして、法定後見人制度がよく知られているが、本書ではそれをお勧めしていない。理由は以下の通り。

  1. 専門職の後見人は家族の意見を聞いてくれない
  2. 専門職の後見人には月額の支払いが発生する(毎月1万円~)
  3. 家族が後見人になっても家庭裁判所の支配下におかれる

よって、本書では任意後見制度と、家族信託の利用をお勧めしている。

任意後見制度は、認知症になった際の後見人を、あらかじめ信頼できる家族に「予約」しておくことができる(ただし手続き費用、固定のコストは発生する)もの。

そして家族信託は認知症に「なる前」から、財産の管理を家族に委託できる制度である。

財産の規模や、家族の状況によって変わってくるが一つの選択肢として、これらの制度は知っておいて損はないのではないかと感じた。

突然不動産投資を勧めてくるのはちょっと……

多くの部分では参考になる本書だが、不動産業に従事している方の書籍なので、その点は留意して読む必要がありそうである。

終盤に突如として、不動産投資を勧めてくるのは、正直違和感を覚えた。老境での、不労所得のありがたみは理解できるが、不動産投資にはリスクも大きく、素人が簡単に手が出せるものではない。書かれているページ数が僅かなだけに、蛇足に感じたのはわたしだけであろうか。これ書く必要あったかな?この点はちょっと残念。

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