住宅購入で悩むアラフィフ世代に
以前にも書いたが、わが家は賃貸物件での生活が長い。しかし、今年に入ってから、遅ればせながら中古マンションを買えないものかと物色をダラダラと続けている(あまり進んでいない)。物件についての知識はそれなりに溜まってきたのだが、お金についての知識は身についていないなと痛感したので本書を求めてみた次第。
アラフィフ年代に入ると否が応でも少し先の定年退職が気になってくる。定年になれば当然収入は減るから、現役時代と同じようなローンを抱えるわけにはいかないし、組ませてももらえない。
ではどうすればいいの?と悩めるアラフィフ世代の皆さまに読んでいただきたいのが本書『50歳からの賢い住宅購入』だ。
筆者の千日太郎(せんにちたろう)は公認会計士。住宅ローンに関する造詣が深く、YouTubeでの住宅ローン相談コーナーが好評を博している方。
千日太郎の著作としては、以下の既刊が刊行されており、こちらも後日読むつもり。
おススメ度、こんな方におすすめ
- アラフィフ年代だけど家を買いたい方
- 住宅ローンの組み方がわからない方
内容はこんな感じ
アラフィフ世代になってしまったけど家を買いたい。住宅ローンでお金を借りたい。でもいくらまで貸してもらえるのかがわからない。そして定年延長を視野に入れた返済計画はどうすればいい?変動金利と固定金利はどちらを選ぶべき?不動産と金融業界に精通した現役の公認会計士が教えてくれる、アラフィフでもまだ行ける!「賢い住宅購入」の秘訣。
目次
本書の構成は以下の通り。
- まえがき
- 1章 少子高齢化社会を幸福に生きたい
- 2章 個人資本から「買える家の価格」と「老後の安全性」を判断する
- 3章 社会資本=共に住まう相手との絆を見直し年金の額を知る
- 4章 アラフィフからの住宅ローン
- 5章 アラフィフからの住宅購入実例
- あとがき
幸福に生きるために必要なお金と絆
まず1章で筆者は、年金で保障されなくなりつつある、これからの社会を生きていくために必要なものとして以下を挙げている。
・お金(個人資本)
⇒セーフティネットを頼らずに済む金がある、稼ぐ能力がある
・絆(社会資本)
⇒社会から孤立せず頼れる家族、友人、共同体がある
少子高齢化社会を生きていくうえで、まずは貧困に陥らないための「お金」。そして、貧困に陥った際に救ってくれる「絆」が、幸福に生きていくための土台となる。
住宅購入の話をしているのに、いきなり話がズレてない?そう思われる方もおられるかもしれない。だが、筆者は、生きていくための前提として、人はまず「幸福」でなければならないと考えている。住宅という生涯最大の買い物をするにあたって、この前提をしっかり踏まえておいてほしいと筆者は考えているのだろう。
あなたが購入できる住宅の価格は?
2章からはいよいよ本題「50歳からの賢い住宅購入」のお話になる。まずは覚えておきたいのはこの計算式だ。
購入できる家の価格={融資可能額+純資産}÷1.1
そして、無理なく完済できる住宅ローンの金額を計算するための四つのルールを提唱している。
- 毎月の返済は「手取り月収の4割以下でボーナス払いなし」
- 返済額が一定になる「元利均等返済方式」
- シミュレーションの金利は「固定金利」
- 定年時のローン残高は「1000万円以下」
1~3は住宅ローン返済の持続可能性を確保するためのルール。4は定年時のローン残高を大きくし過ぎないためのルールとなる。
本書内では、額面年収、手取り年収からと、現在の年齢から算出した「無理なく完済できる住宅ローンの金額」が表で示されている。これには思わず見入ってしまった。
40歳を超えると「無理なく」の幅が如実に小さくなり、若い世代に比べると、やはり条件がかなり厳しいことがよくわかる。
年金と人とのつながりについて
3章は年金と、周囲との絆(社会資本)のお話。
これからも夫婦関係を続けたいのか、同じ屋根の下で暮らすことは苦痛でないかを考えよう。って、ここでいきなり登場するのが夫婦関係の見直し(シビア―)!離婚時の年金分割についても詳しく書かれている。まあ、確かにこの年代から家を買おうするなら、夫婦間の協力は欠かせないであろうし、関係性についてもしっかり確認しておくことは必要なのかも。
また、この章で筆者が再三説いているのは、定年後の新たな社会資本は二回目の学びと働きのサイクルから獲得するということ。やはりこの年代からの「学びなおし」は重要なんだよね。
また、年金の繰り下げ受給(最大で受給額が42%も増える)については以下の三点を注意点として示している。
- 繰り下げ中は加給年金を受け取れない
- 繰り下げで増えた42%にも税金がかかる
- 繰り下げても遺族厚生年金は増えない
一方で、繰り上げ受給についての注意点はこちらの三点
- 減額された支給額が一生続く
- 障害年金が受給できなくなる
- 国民年金の任意加入が出来なくなる
アラフィフ年代で住宅ローンを組む
4章は本書のメインコーナー、分量的にももっとも多くのページを割いている。アラフィフ年代でいかにして、どのような住宅ローンを組むかを丁寧に解説していく。
固定金利か変動金利か。五年ルール、125%ルールって何?元利均等返済方式と元金均等返済方式はどう違うのか、住宅ローン控除の正しい使い方などなど、この分野にはまったく疎いわたしとしては目からウロコがボロボロ落ちる状態で、非常に参考になった。
住宅ローンを組むに際しては検討することが多くて、素人には悩ましいのだけれども、本書では最終的に以下のパターンに分類して、各人ごとの向き不向きを示している。
- 変動金利が適合する人と返済計画
- 10年固定金利が適合する人と返済計画
- 20年固定金利が適合する人と返済計画
- 全期間固定金利が適合する人と返済計画
- ミックスローンが適合する共働き夫婦と返済計画
また、筆者の注意点としてなるほどと思った点としては、定年までの返済にこだわりすぎないことを挙げておきたい。定年後に多額のローンを抱えたくない、との思いから、繰り下げ返済を出来るだけしておきたい。そう思われる方も多いと思う。だが、住宅ローンほど利息の安い借金は無いのだから、貸してもらえる金はありがたく借りておけと筆者は主張する。老後は健康面などで予期せぬ出費がかさむ時期でもある。一定額の現金は確かに手元に残しておいた方が良いのだなと感じた。
ネットを通じた社会資産の形成
最後にあとがきで、筆者はインターネットでの発信を通じて社会資産を作っていこうと呼びかけている。ネットを通じて新たなコミュニティに参加することが、二回目の学びと働きのサイクルのきっかけになる。
会社勤めの人間は定年を迎えたとたんに仕事の人間関係から切り離されるので、そこで自らの程度を思い知ることになる。であれば、いまのうちからネットを通じて自分のコンテンツを公開して新たな社会資本を獲得しておこうというわけだ。
筆者の千日太郎はネット(ブログやYouTube)での配信を通して、現在につながる成果を出している方なので、その点は強く感じるところがあるのだろう。本書はあくまでも住宅購入の本なので、あまり深掘りされなかったが、ネットを通じた社会資産の形成や、学びなおしによる知的資産の獲得についても今後書いて欲しいところ。