ビズショカ(ビジネスの書架)

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『50代 後悔しない働き方』大塚寿 「勝ち逃げできない世代」の新常識

アラフィフになったら読みたい一冊

2020年刊行。筆者の大塚寿(おおつかひさし)は1962年生まれ。リクルート出身のビジネスコンサルタント、実業家、ビジネス書作家。

著作が多数出ているが、もっとも知られているのは『40代を後悔しない50のリスト』かな。こちらの書籍はなんと28万部も売れたらしい(わたしも読んだ)。

内容はこんな感じ

50代はこれまでの会社員人生の分岐点である。これまでと同じ働き方をしていては定年以降の人生に悔いを残す。会社を離れても「年金以外で年300万円稼ぐ人」「人間関係に恵まれる人」は何をしていたのか。多くの50代が後悔していることは何なのか。1万人を超えるビジネスパーソンへの取材を行った筆者だからわかる「後悔しない50代の働き方」とは?

定年後のことをそろそろ考えたい

50代に入るとどんな方でも会社員人生の終わりを意識し始めるだろう。数年も経てば役職定年。役員として会社に残れる人間はごくごく一部。子会社への出向片道切符となる方も出てくるだろう。下がり続ける給料とモチベーション。身心共に衰え始めるころなのに、子どもにはまだまだお金がかかるし、両親の介護問題も出てくる。

そう考えると、50代は人生の中で、もっとも過酷な10年間なのかもしれない。日々の忙しさに流されてしまいがちだが、60代以降、定年となってからの人生を考えてみた時、この10年を無為に過ごすのはあまりに勿体ない。

大塚寿の『50代 後悔しない働き方』は、そんな悩める50代に送る人生指南の書である。

では、以下、本書の内容を簡単に振り返っていこう。

1章《予告編》50代を後悔している12の理由

筆者はビジネスパーソンを対象とした「1万人インタビュー」で知られている人物である。その中で「50代を後悔している理由」として、多く挙げられているのが以下の12点である。

  1. 定年後の人生設計をしておくべきだった
  2. モチベーションがどうしても湧かなくなってしまった
  3. 組織の名前ではないアイデンティティを確立できていなかった
  4. 地域デビュー、妻と旅行、学び直しや趣味は暇つぶしにしかならなかった
  5. 「働かないオジサン(オバサン)」になっていた
  6. 「ちょっと充電してから考えます」……”思考停止病”になっていた
  7. 退職金、年金があまりに少なくてシュンとしてしまった
  8. 低い条件の再雇用に甘んじてしまった
  9. 「やりたいこと」と「やりたくないこと」のバランスを考えていなかった
  10. 自分の可能性を過小評価していた
  11. 「年金は夫婦で24万円」など、一般論を信じ込んでいた
  12. 守備範囲が狭すぎた

これを読むだけで、既に思い当たることが多すぎて、ションボリしてくる方も多いのではないだろうか。このような後悔をしないで済むよう、どのような対策をしていけばいいのかが本書の肝となってくる。

2章《座学編》「12の後悔」を防げる4つの心構え

1章の「12の後悔」を踏まえ、それを防ぐにはどうすればいいのか。前提となる考え方、心構えとして以下の4つのポイントが紹介されている。

1)一般論や思い込みを捨てる

あの人はこうだった。みんなそう言っている。テレビでああ言っていた。とかく、人間は周囲の情報に振り回されがちだが、新卒での就活と異なり、学歴は参考程度。定年後の再就職は人それぞれ。その進路は人それぞれでバリエーションが非常に多く、一般論でくくることは難しい。思い込みに囚われず「自分はどうなのか」で考えることが大事だと筆者は説く。

2)「しなきゃいけないこと」と「これだけはノー」から方向性を考える

1章で後悔の第一位となっていた「定年後の人生設計をしておくべきだった」への備えとして、「しなきゃいけないこと」と「これだけはノー」をリストアップしてみようというのがこのパートの趣旨である。

趣味に生きたいのか、健康重視なのか、専門を極めたいのか、学びなおしをしたいのか。やるべきこと、これだけはやりたくないことを絞り込んでいくうちに、次第に自分の方向性が具体化されていくのである。

これは自分の能力や趣味、人生観の洗い出しにもなるので、人生の棚卸としてやってみるのは結構楽しいのではないかと思える。

3)自分の市場価値の高め方を知っておく

この先の「日本社会」でビジネスパーソンとしての自分に何が出来るのか。ビジネスパーソンとして自分に出来ることを細かくリストアップしていくのがこのパートである。

営業が出来ます。総務が出来ます。といった漠然としたものでなく、より細分化してリストアップすべしと筆者は主張する。

世の中には需要と供給がある。設備、設計、施工、電気、IT系など、専門性の高い職業は年齢が上がっても需要があるが、営業職(特に国内向け)はニーズが少ない。

自分のスキルを細部までリストアップし、相手の視点からどういう人を欲しがっているのか考える。そして自分のスキルが相手のニーズに対して、売り物になるのか。逆に言えば、自分のニーズに価値を見出してくれるのは誰なのかを絞り込んでいくのだ。

4)モチベーションが枯れない方法を知っておく

50代に入って直面するのが「気力の減少」ではないだろうか?アラフィフ年代は、体力が衰えていくだけでもやっかいなのに、モチベーションまでも下がっていくのである。

本書では、モチベーション維持のための「幸せの4因子」の要素を紹介している。

  • 「やってみよう!」因子 自己実現と成長の因子
  • 「ありがとう!」因子 つながりと感謝の因子
  • 「なんとかなる!」因子 前向きと楽観の因子
  • 「あなたらしく!」因子 独立とマイペースの因子

これは前野隆司『幸せのメカニズム』からの引用。

「人の幸福は4つの要素のバランスで決まる」とした考え方である。

その場の状況や、自分の人生観と照らし合わせて、足りないものは補うことで、モチベーション維持に繋げていこうとする発想である。これは自己分析にも繋がるので、やってみるとなかなか面白い。

3章《準備編》50代で始めておくべき9つのウォームアップ

この章から、具体的な準備に入っていく。1章、2章を経てある程度自分の将来について、方向性が見えてきた筈である。それを受け、「ウォームアップ」として始めておくべき事項として9つが挙げられている。

1)人望、人脈……まだ間に合う

今さらそんなこと言われても!という方は多いはず(わたしもそうだ)。内向的な人間、人間関係の構築に気を配ってこなかった人間、一匹狼系のタイプにとっては、耳の痛い項目である。

本書では「人物評はこれからでも変えられる」として、全方位の人脈メンテナンスを強く推奨している。疎遠になった人物との関係のアップデート、後進との人間関係の維持。急に改善するのは難しいかもしれないが、強く心がけておきたいポイントである。

2)「年金+300万円」計画に必要な準備を始める

資格、スキル、専門領域の深化、周辺ジャンルの勉強など、収入につながる具体的な学びを始めること。この際に、まったく新しい分野に飛びつくのでなく、これまで振り返ってきた自分の職務経歴や、得意分野に近しいところから深めていく。

あくまでも「収入につながる」が大切な部分なので、趣味の学びとは一線を引いておきたいところである。

3)スキルとキャリアを「高く売れる商品」にする

ここでは、自分を商品に見立てて「高く売る」ための、プレゼン資料を作っていく。手順は以下の通り。

  1. 自分ができることをリストアップする(10項目程度)
  2. 強みという基準で上位三つに絞り強み順にする
  3. なぜその三つになったのか、それぞれの理由、背景を140字程度にまとめる
  4. 3つの強みをもっとも必要としているのは誰か推測する
  5. その誰かに対して、自分を商品として売る場合のキャッチコピーを考える

パワーポイントで資料を作るのが好きな方ら、思ったよりも楽しく作業できるのではないだろうか。

4)エビデンス(職務経歴書)を作る

いよいよ就活っぽくなってきた。このパートでは、再就職に向けて、自分の職務経歴書を作る。まずはドラフト版、そして実践版とステップアップしていく。

書き出した自身の職務経歴を元に、「相手の会社」ベースでどう役に立つのかをイメージできる表現を考えるのだ。この際、枚数は多くて良く、より詳細がわかる内容の方が望ましいとしている。

あいまいな形容詞の多用は避けること。あくまでもファクト中心、数字、ロジックを優先。古すぎる実績はさほど意味が無く、ここ5年~10年程度の経歴を新しい順にまとめると良い。

5)経営者の知り合い、ツテをリストアップし「リファラル採用」に備える

「リファラル採用」とは、俗にいう「コネ採用」である。新卒以上に、中高年の再就職はコネが重要である。あらかじめ人柄や能力、実績が判っていた方が、採用しやすいのは当然のことだ。

これまでの自分の仕事を振り返って、ツテのある経営者、経営幹部は居ないか。親戚や、同期、先輩、学生時代の同級生たちに該当者は居ないか。あからさま過ぎて、少々恥ずかしい部分もあるのだが、臆せずケアしておきたい部分である。

6)リスクは小さい「一人起業」

このパートでは、起業を選択する場合の注意点が示される。自己資金の持ち出しをしない。リスクをかけない「一人起業」は十分アリ。ただし、事前に顧客を掴んでおくことが肝要としている。

7)フロー型かストック型かを決めておく

フロー型とは、定年後も働く必要がある人間。

ストック型は、十分な資産がある(羨ましい)、無理して働く必要のない人間。

「決めておく」と言っても、これはあまり選ぶ余地はなさそう……。

8)居場所と生きがいを10年でつくる

仕事とは別に「居場所」「生きがい」を50代のうちに作っておきましょうという提案。こちらは経済面よりも、メンタル的な支えも大事というお話。

9)夫婦、パートナーとの”ダブルス”を

最後に夫婦の関係性の再構築。定年後は夫婦の立ち位置にも大変動が起きる。十分な繋がりが作れていないなと感じる場合は、50代がラストチャンスになる。

4章《実践編》50歳からのキャリア戦略と最強の裏技

この章からはいよいよ実践編である。

放っておいても声がかかるような実力者、業界の顔など「転職強者」はごく一部。本書はその他の大多数であろう「転職強者以外」に向けである。65歳以降のキャリア事情を鑑み、よりよい再就職先を得るための戦略例が複数紹介されている。

1)「強者」以外のための戦略

自分の強みを生かす。といったところで「転職強者」でない人間の強みなどたかが知れている。自分の強みをどこでアピールするのか。競争優位性はどんな領域であれば生きるのか。

そう不安になりがちなのだが、本書では強みは「偏差値52.5」でオッケーとしている。相対的に少し秀でていれば良し。要は自分以外にあまり詳しい人間がいない場所を探すこと。どんな場所で戦うか。その見極めが最重要となるのである。

戦力として期待してもらえそうな「土俵」はどこにあるのか。狙うべき企業、団体の選定こそが最重要課題なのである。

2)最強の「リファラル採用戦略」

再びコネ採用の大切のお話。

いくら良いコネを持っていてもそれが活かされなければ意味がない。定年が近付いてきたら、自分に再就職の意思があること。再雇用先を探していることをアピールし続けておくことが大切。

3)攻撃型戦略

こちらは、かなり自分の能力、スペックに自信のある方向けの戦略だ。

なんと、狙った企業のオーナーあてに手紙、履歴書、職務経歴書を送り付ける手法である。既に良い人脈を持っていたり、失敗しても心が折れない方向け(わたしには無理そう……)。

ターゲット企業の選定には、業界紙、専門誌、展示会や見本市の活用。口コミや、業界通、社外人脈との情報交換が有効としている。

4)「守備型」戦略

「攻撃型」はさすがにちょっと……と思われる方向け。

シンプルに転職エージェントを活用する方法である。ただ、この手法はスキルがある方。一芸に秀でたスペシャリスト向け。ゼネラリスト系で、ウリも無い場合はあまり引きは得られないかも。

5)「オンリーワン」戦略

自分のオンリーワンを考える。自分にしかできない唯一無二の要素は無いか。

6)学生時代の「志」を活かす戦略

原点に立ち戻り、学生時代に思い描いていた「志」を再度思い出してみるケース。

7)「社内の人間関係メンテナンス」という戦略

俺が俺が的なこだわりを捨て「支援型」の上司になる。上と横中心の社内人脈に、若手を加えていく。

5章《ケーススタディ編》後悔していない諸先輩に学ぶ

こちらの章は、実際に再就職、再雇用にチャレンジして、実績をあげている方の具体事例が紹介されている。成功事例ばかりなので、そんなに上手くいくのかなと疑念も湧いてくるのだが、具体的なイメージを持てるのは大事かな。

気にしておく点としては、再就職後に、自分が任される職務の範囲をしっかり確認しておくこと(入社してから、あれもこれもと、未経験分野の仕事が増えるケースは多いらしい)。また、大手の看板や、優秀な部下が居なくても自分は結果が出せるのか。それなりに覚悟を決めておくこと。

6章《展望編》失敗を防げる「60~64歳の試行錯誤」

最後は60代に入ってからの敗者復活について。実際、定年後の再就職は失敗事例も多く。誰もが望んだ成果を得ることが出来るわけではない。

定年後の再就職は、結局のところ勤めても数年。年収300万なら、雇用側としても大きな投資ではない。個人の資質よりも需要と供給のバランスで決まる部分も大きい。

よくある事例なのだから、ダメだなと思った時にも、一度や二度の失敗でめげないこと。所詮はセカンドキャリアと割り切る。さっさと次を探す「見切り」が大事であると筆者は主張する。

ワークブックとして活用できる!

以上、『50代 後悔しない働き方』の内容をザックリとご紹介してみた。

2章、3章などは、ワークブックだと考えて、自分で何が出来るのか。ノートに書きだしてみると良いと思う。漠然とした将来が、少しだけ見えてくるはずだ。

50代のビジネスパーソンは、会社、子供関連、介護と常に忙しい時期だ。しかし、その中でも自分のために考える時間を取り、将来に備えておくことが大切なのであろう。これからの自分を考える意味で、本書は良いきっかけになるのではないかとわたしは考える。

アラフィフになったら読みたい本、こちらもおススメ