ビズショカ(ビジネスの書架)

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『美しい日本の掲示板』鈴木淳史 インターネット掲示板の文化論

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2ちゃんねる全盛時代に書かれたネット文化論

2003年刊行。筆者の鈴木淳史(すずきあつふみ)は1970年生まれの売文業(ってこの本には書いてある)。主として、文芸評論家、クラシック音楽評論家として活躍。著作にはクラシック音楽に関しての辛口評論が多い模様。まるで違う分野のインターネット文化論を、何故ぶちあげようと思ったのかは謎である。

ネット関連の著作としては他に、2005年に上梓された『「電車男」は誰なのか―“ネタ化”するコミュニケーション』がある。

内容はこんな感じ

最早身近な存在となった電子掲示板システム。パソコン通信時代から、現在に至るまでの成り立ちを俯瞰。個人レベルの小規模なものから、ポータルサイト系、2ちゃんねる級の巨大掲示板まで、それぞれの特徴を解説。とかく新しいメディアと思われがちな電子掲示板が、実は日本人古来の感覚に根ざしたコミュニケーションシステムであることを説く。

想定しているユーザがわからない

この手の、ネット文化本にありがちなのが、ターゲットの絞り込みが不明確なこと。ネット初心者向けに書いているのか、ある程度詳しい人間向けに書いているのかがどうも判然としない。意図して書いていると思われる砕けた文体も、あまり効果を発揮していないように思える。2ちゃんねるユーザ向けに書いたと考えても、空回りしている印象。もう少し普通の文体で書けばよかったのに。

ネット古参組には懐かしい

筆者とはほぼ同世代なのでニフティのパソコン通信時代や、草の根BBS(もう完全に死語だなこれ)についての記載は懐かしく追体験。パソコン通信って、もう30年以上前の話になるのか……。

2ちゃんねるが作り出したかに見える、「名無しの文化」が、遙か以前の落首、連句の発展進化であると見なす考え方は面白い。海外にはこれほどまでに匿名を当たり前とする掲示板文化はないらしいからね(当時)。

ネットの匿名文化は未だ健在

本書が書かれてから既に15年以上が経過した。そ2ちゃんねるは、現在でもいちおう存続はしているものの、運営側でゴタゴタしていたり、ユーザも高齢化。各種SNSの台頭もあって、往時の勢いは無い。

ただ、匿名で言いたい放題書き散らす文化そのものは、いまでも健在である。というか、ネット利用者の裾野が広がった分だけ、より普遍化したように思える。かつての2ちゃんねる的な役割は、現在ではTwitterが担っている印象である。Twitterは特に日本人とは相性がいいみたいだしね。匿名でワイワイ言いたい国民性に合うのかもしれない。